国内

他界したごきぶりホイホイ開発者 数十万匹のゴキと寝起きした

「ごきぶりホイホイ」開発の中心メンバーだった、アース製薬元常務の木村碩志氏が、昨年5月、前立腺がんのため逝去した。享年82。

 口癖は「主婦の役に立ちたい」。木村氏は晩年、「ごきぶりホイホイ」の研究に明け暮れていた頃を思い出してこう語っていたという。

「ゴキブリは賢く、触角が粘着剤に触れただけで逃げる。だから箱の入り口に30~45度の傾斜角度を作って誘い込むことが、成功の鍵やったんや」

「ごきぶりホイホイ」の登場は1973年。70年に同社を買収した大塚製薬の大塚正士会長(当時)と、社長に就任した弟の正富氏が、社運をかけて、「不快さを感じることなく、捕獲、殺処分できる商品」を、開発部長だった木村氏らに命じた。当時はまだ生け捕りタイプが主流で、捕獲後の処理は消費者が行なっていた。

 木村氏らは工場内で数十万匹のゴキブリと寝起きし、誘因物質の開発などに取り組んだ。研究の甲斐あって、商品は発売3か月で当時の年商を上回る20数億円を達成。その後も商品は改良を重ね、現在で6代目となっている。

 木村氏は2003年に退社。しかし、その後も研究を続けた。木村氏の旧友が語る。

「神戸の研究所でホウ酸団子の効果を検証したり、新種のゴキブリが出たといえば、出かけては知人の米国人の昆虫学者に電話をかけて確認したり。とにかく研究熱心な人でした。ゴキブリが好きなのか嫌いなのか、最後までわかりませんでした(笑い)」

 最晩年は環境問題や健康長寿への関心が高く、講演活動も精力的にこなした。

「ゴキブリは温暖を好む。温暖化が進んでいるのは『ごきぶりホイホイ』の売れ行きからも明らかと、熱く語っておられました」(前出・旧友)

 日本の一時代を築いた優秀な研究者が、また一人、この世を去った。

※週刊ポスト2013年1月1・11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン