「猫付きマンション」をご存じだろうか。ペット可ではなく、まして猫飼育可でもなく、住むともれなく猫がついてくるマンションのことだ。2010年に誕生してから早3年、第2弾、第3弾の「猫付きマンション」も誕生しているとか。「猫付きマンション」とは何なのか?取材した。
2010年に誕生して、一躍脚光を浴びた「猫付きマンション」。名前の通り、家具や家電のように、マンションに猫がついてくるというもので、ニュースなどで目にし、覚えている人もいるのではないだろうか。この猫付きマンションは、文京区で第1号(3戸)が誕生すると、都立大学駅近くの物件(2戸)が第2弾として登場、さらに今年3月には東向島の物件で、第3弾(11戸)の募集が行われた。いずれも相当な反響があり、入居希望者が殺到したという。
この猫付きマンション、いちばんのポイントは、ペットビギナーや転勤族でも、「猫が飼える!」ということ。というのも、猫は物件に付随しているため、将来的に部屋を退出するときに猫を連れていくことができなくても、猫を返却することも可能なのだ(もちろん譲渡してもらって、一緒に暮らすことも可能)。
そのため、「転勤があるから」「将来、結婚や転職などで飼えなくなるかも」という理由で諦めていた人でも、猫を飼うことができる。また、猫の飼育については後で説明するシェルターのスタッフに飼育相談ができるため、猫ビギナーでも安心というわけだ。
ちなみに、猫マンションといっても、猫が部屋に住んでいるのではなく、大塚にある猫カフェ兼シェルター(猫の保護施設)のなかで暮らしている大人猫のなかから、いっしょに暮らす猫を選ぶというスタイルだ。飼育するのは1頭だけでなく、相性さえよければ2頭、3頭といった「多頭飼い」をすることも可能だ。
マンションの設備や仕様だが、文京区のマンションは猫と生活しやすいようにリフォームしてあるが、そのほかの物件は、普通のマンションと変わらず、ペットドアやキャットウオークが付いている部屋ではないという。家賃も相場程度で、突出して安いわけでも、高いわけでもない。ごくごくシンプルに賃貸物件に「猫がついてくる」というもの。ただし、物件の入居審査だけでなく、猫オーナーになるための審査もあるのが特徴的だ。
それにしても、なぜ「猫付きマンション」が生まれたのだろうか。この猫付きマンションの仕掛け人である、東京キャットガーディアンの代表 山本葉子さんに話を聞いてみた。
「そもそものはじまりは、人間と同様、猫の高齢化がきっかけなんです」と山本さん。自身が代表をつとめる東京キャットガーディアンでは、行政(動物愛護センターなど)から猫を譲渡してもらい、猫を里親に譲渡する活動をしている。その数は、2008年から2013年7月現在までで3000頭を超えるなど、一定の成果をあげているが、大きな課題もあった。「大人猫」の貰い手だ。
というのも、愛くるしい子猫はすぐに引き取り手がみつかるが、すでに大人になった猫はなかなか新しい飼い主がみつからない。加えて、飼い主が高齢化して、猫を残して亡くなってしまったり、施設に入るため手放さざるを得ないなどの事情があり、シェルターが引き取る「大人猫」の数は急増している。
「このままでは、シェルターが大人猫だらけになってしまう……」。そんなときに出会ったのが、文京区のマンションオーナー。打ち合わせ時に、ぽろりと山本さんが口にした「猫付きマンション」のアイデアに食いつき、トントン拍子で話が進んでいったとか。
「住み手は猫といっしょに暮らせる、物件オーナーは部屋に付加価値をつけて空室率を解消できる、保護団体は大人猫の里親を見つけられる、みんながハッピーになる仕組みなんです」(山本さん)。実際、この猫マンションの反響を聞きつけて、マンションの空室に悩んでいるマンションオーナーからの問い合わせがあったという。
「私どもでは、猫付きマンションのためのコンサルティングはもちろん、募集や入居後のサポートを行っています。1棟丸ごとでなくとも、ペット可物件の一部屋や一戸建てなどのオーナーさんの相談にものっています」(山本さん)というため、近々、猫付きマンションならぬ、猫付き一戸建てが登場するかもしれない。