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インタビュー

AUTECHRE 『Exai』

 

限界を踏み越えた果てまで辿り着いた2人のネクスト・ステップは、2時間超のヴォリュームで20年超のキャリアを集大成した2枚組!

 

 

エレクトロニック・ミュージックの先鋭を切り拓いてきたショーン・ブースとロブ・ブラウンのふたり――オウテカは、これまですべての作品においてリスナーの耳に挑んできた。そんな彼らは新作『Exai』でさらにその先へ進もうとしている。キャリア11作目にして、初のCD2枚組。2時間を超える超大作である。

「前作から約3年あったわけで、その間、自分たちの興味の赴くままにいろんな曲を書き続けた。いざアルバムとしてまとめようと思ったとき、予想以上に多くの曲があることに気付いたんだ。だからこれだけ長時間の作品になった」(ショーン)と言うように、これだけのヴォリュームになったのは偶然だったそうだが、ひとつの作品へと完成させるときには2枚組としての〈体験〉を考え抜いたようだ。

「全部を通して聴くのはなかなか困難だと思う。だからアルバムの構成上、1枚目は単体でも機能させたかった。で、2枚目のほうは、さらにもっと聴きたければ続きがありますよ、というものだ。〈二番手〉という位置づけでは決してない。人々の時間にも限界はある。いまの時代に2時間にも及ぶ作品を出すことは、多くを求めていると自分たちでもわかっている。だから、1枚目は簡潔にまとまったものにしたかったんだ。明瞭に流れる作風で機能させたかった。で、2枚目はそこからさらに深く入り込んでいる――というのが、自分としてはいちばんわかりやすい説明だと思う」(ショーン)。

「ショーンが言うようにいまと昔とでは音楽を聴くことに対する人々の考え方が大きく変わった。矢継ぎ早に出てくる、次々と入れ替わる、いわゆる低ダイナミック・レンジの音楽が大量に売られて消費されているなかで、失われているものがあると思っている。だから、今作というのは、よりハードコアというのか、じっくり時間をかけて音楽を聴きたいと思っている人たちに向けて、本当の意味でより深淵な軌道を追うことができて、二つの違う形の曲線を体験してもらいたい。1枚目で飛び立ち、その世界観をじっくり堪能することができれば、1枚目が終わる前でもっと聴きたいと思う。そこに2枚目が入ってくる。途切れることなく続ければ理想的なんだけど。〈よし、パート2を聴くぞ〉という感覚ではなく、〈もっとこのまま聴いていたい〉と思う感覚だ。いまの時代、どの音楽も消費されやすい短いものばかりだ。それとは対極にあるものを作った」(ロブ)。

『Exai』では、これまでオウテカを象ってきたようなインダストリアルなランダム・ビート、繊細なメロディー、アンビエント、ノイズなどの要素が一曲一曲のなかでより複雑に交錯している。また、そこにはオウテカがずっと影響を公言してきた、初期のエレクトロやヒップホップも変わらず息づいている。それはサウンドのみならず、彼らの精神性の源泉となっている。

「どこかのシーンに属するんじゃなくて、Bボーイ精神を持ち続けるってこと。誰かが聴いたことのないループを作ったら〈すげえ!〉って。そうやって物事を進化させていったんだ」(ショーン)――それはまさに、オウテカが20年間貫いてきた姿勢である。

彼らの革新の歴史を辿るようであり、また、さらなる領域を見せてくれもする圧倒的な2時間。ふたりの情熱は決して枯れることはない。

「自分の作品に誇りを持つことは恥ずかしいことでもなんでもないと思う。俺たちの場合、まず自分たちが満足するために作っている。それに共感してくれる人がいるのもわかっている。もし彼らがいなくなったとしても音楽を作るのをやめることはない」(ロブ)。

「収入がなくなっても、音楽だけは作り続ける。やらない理由が見つからないのさ」(ショーン)。

 

▼オウテカの作品を一部紹介。

左上から、2001年作『Confield』、2003年作『Draft 7.30』、2005年作『Untilted』、2008年作『Quaristice』、2010年作『Oversteps』、同年のEP『Move Of Ten』(すべてWarp)

 

 

▼近年リイシューされたオウテカ関連の作品。

左から、レゴ・フィート名義での91年作『Lego Feet』(Skam)、91~2012年のEP音源をまとめた編集盤『EPs 1991-2002』(Warp)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年02月20日 17:59

更新: 2013年02月20日 17:59

ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)

インタヴュー・文/木津 毅