「新聞・テレビはデータでウソをつく」原因

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「新聞・テレビはデータでウソをつく」原因

今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
※この記事は2013年01月19日に書かれたものです。

「新聞・テレビはデータでウソをつく」原因

1月末に日本文芸社から「新聞・テレビはデータでウソをつく」という本を出版します。かなり直接的なタイトルですが、一つ一つの内容は本で見てもらうことにして、ここでは「なぜ、新聞やテレビはデータでウソをつく」のか、その原因について書いてみます。

1933年に日本は満州の占領政策を続けるために国際連盟を脱退しました。このことで日本人は憤激して「脱退すべきだ!」という考えが大半でした。しかし国際的には独自の行動になったので、ちょうど、今の北朝鮮のような印象を持たれました。

その時に、毎日新聞は国際的なニュースをほぼそのまま流し、朝日新聞と読売新聞は世界の一般的なニュースを伝えず、日本の世論に迎合して、いわゆる「キャンペーン」を貼ったのです。

その結果、毎日新聞が停滞し、朝日新聞と読売新聞が大きく部数を伸ばして、逆転しました。さらに戦後、1971年の沖縄の返還を巡る密約問題でも同じ事が起こり、毎日新聞の不買運動へと発展した。 これを最後としてある編集部員の話として「言論によるテロリズムの効果とその商業的な骨法」が確認されたのです。

難しい言い回しなのですが、「言論によるテロリズム」とは、新聞、週刊誌、テレビが「あること無いこと、何でも報道すれば、社会はそれに反応して怒り狂い、特定の個人や団体を徹底的に痛めつける事ができる」ということです。

そして「その商業的な骨法」というのは、「テロをすれば、儲かる具体的な方法も身につけた」という意味です。骨法というのはいろいろな意味に使われますが、普通は「奥義」ということですから、確実なコツを身につけたというような感じです。

テレビ、週刊誌、新聞がその気になれば、日本人の劣情に訴えるキャンペーンを張り、それに異議を唱える人や団体を徹底的に叩けば何でもできるし、それが視聴率や販売部数を増やすことになる、その記事の書き方、報道の仕方、タイミングなどをすべて、国際連盟脱退事件や沖縄密約事件で会得したというワケです。

そしてこの2つの事件で「儲かった側」はつねに「政府に有利な報道」という特徴があります。脱退事件では松岡外相を支持し、沖縄密約では佐藤首相を擁護したのです。

日本という国は四面を海に囲まれ、ほぼ単一民族で、天皇陛下を頂いていたと言うことから、日本には奴隷制度も無く、殿様は民のことを考えておおむね良い政治をしてきました。だから日本人の心の中は「お上は悪いことはしない。お上にたてついたらろくな事はない」という信念で固まっています。

だから「言論テロリズム」を実現するには、第一にお上側につくこと、第二に日本人の劣情か感性に寄り添うこと、そして第三に不当に被害を受ける個人や団体に対して愛情を持ってはいけない(切り捨てる)、という方法を採るようになりました。

それ以後、つまり沖縄密約事件がおおよそのケリがついた1980年代から、日本のマスコミ(テレビ、新聞、週刊誌など)は「言論テロリズム」に統一され、「事実を伝える」ことは、それがあたりあさりが無い場合に限るという制限が加わったのです。

すでに、日本のマスコミは、会社組織で編集が経営から独立していないこと、記者クラブが閉鎖性を持っていること、一人一人が旧来の記者魂を持つことができないこと、それに加えて予算が厳しくなり、記者が満足できる取材ができないなどの状態にあり、なかなか「言論テロリズム」から回復することができないのです。

最近では、地球温暖化や被曝限度などがその代表的なもので、「政府より、科学的データ無視、テロ的手法」を駆使しています。また「タバコの副流煙」のように「データを調べずに、みんなが危険と思えば、その方向で報道を続ける」というのもあります。

このような言論テロは、日本人が事実や真理を大切にするようにならないと無くならないのですが、それには時間がかかるのでとりあえず、現在の状態で「ウソの報道」と思われることを整理したのが、今回の本という事になります。

今の所、出版社というのはなかなか立派で、広告無しで頑張っていますし、言論テロにならないように「政府よりではなく、科学的で、冷静」という内容のものを出版してくれます。 私たちが真実をしるための最後の砦である出版社がダメになるとネットしか残らず、ネットに言論統制が始まると、私たちは再び暗黒の時代に突入するでしょう。

マスコミの人たちに呼び掛けるとすれば、大きな二つの事件で始まった「言論テロと儲ける骨法」を放棄することを勧めます。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

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