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田方 みき
2011年10月1日 (土)

築80年。解体寸前の薬局が、ワーキングステイできるカフェに変身

今、多くの地方都市が住民の高齢化や人口の減少、産業の衰退など、さまざまな悩みを抱えている。かつて「北のウォール街」と呼ばれ栄えていた北海道小樽市も例外ではない。しかし、街の空気を変え、活性化させようという取り組みも生まれ、少しずつ広がりを見せている。その拠点となっている、(旧)岡川薬局の活動を紹介しよう。

古くからの住宅街の一角に建つ「(旧)岡川薬局」。薬局として使われてきた築80年の建物を買い取り、ゲストハウスとカフェの機能を持つ場所として再生したのは、建築設計・映像制作・まちづくりコンサルティングなどを行っているN合同会社の代表・福島慶介さん。生まれ故郷の小樽と東京の二拠点を中心に活動するクリエイターだ。

築80年の建物を再生。「まちの縁側」機能を持つゲストハウス&カフェに

昭和5年に建てられた岡川薬局。平成5年には小樽市指定歴史的建造物に指定されている

「薬局だったこの建物が解体されることを知り、保存のために購入しようかどうか迷っていたころ、すぐ近くにあった別の古い建物が取り壊されたんです。そのとき、街の内臓がひきずり出されるような感覚を覚えました。古い建物はこの街の原風景のひとつでありさまざまな要素を繋ぐ媒体になり得ます。小樽のよさを残し次の時代につなげるためにも購入して、地域の活性化のために活用しようと決心しました」

「街を内側から変えていくのは難しい。活性化には外からの刺激が必要」と語る福島さんは、買い取った建物をゲストハウスとカフェに改装した。
「観光都市である小樽では宿泊は重要なビジネス要素です。でも、単に泊まるだけではつまらないし、街への刺激にもならない。そこで地元の人たちとの接点になるようカフェを併設したんです。そこでの文化醸成も視野に入れています」

通り過ぎるのではなく長く滞在してもらうために、カフェで働くかわりに宿泊費を無料にする「ワーキングステイ」という仕掛けも用意した。カフェで地元の人たちと交流することで、人と人がどんどんつながっていく。小樽の外から来た人にとっては滞在の時間がより豊かになり、地元の人にとっては外の世界の人との出会いが刺激になっていく。(旧)岡川薬局という存在が、地域と外の世界をつなぐ「縁側」の役目を果たしているのだ。オープンから約1年たち、ワーキングステイを利用した人のなかから、小樽への移住を希望する人も出てきているという。

「(旧)岡川薬局だけでできることには限界があります。でも、この仕組みは街全体を意識した『点』のひとつ。誰にでも真似ができる仕組みなんです。この仕組みをベースにしたビジネスがどんどん増えればいいと思っています。そのためにも、(旧)岡川薬局が成功例としてちゃんと稼いでいかなければ」
新たにビジネスが生まれ、そこからまた新たな交流が生まれ、街への刺激になる。そんなシーンが増えていくことが街を変えていく力になっていく。

住宅街の中の小さなゲストハウス&カフェから始まった取り組みで、街の元気がどう広がっていくか楽しみだ。

(旧)岡川薬局
北海道小樽市若松1-7-7
TEL:0134-64-1086
営業時間:カフェホワイト10:00~27:00(日曜日のみ22:00まで)
ゲストハウス チェックイン~22:00/チェックアウト~10:00
定休日:無
twitter:http://twitter.com/re_op/

■取材協力
N合同会社
北海道小樽市若松1-7-18
TEL:0134-64-1086
HP:http://www.n-llc.info/

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