【1月30日 AFP】心臓移植手術を受けたアルゼンチンの女性が、体外受精で赤ちゃんを出産した。医師らは29日、世界で初めての事例と語った。

 臓器移植後の妊娠はリスクが高い。移植された臓器が拒絶反応を起こさないために必要な薬剤が、妊娠を困難にするためだ。またこの薬剤が胎児に及ぼす影響についても十分に明らかになっていない。

 出産した女性、フリアナ・フィノンド(Juliana Finondo)さん(39)はアルゼンチン東部出身で、現在はブエノスアイレス(Buenos Aires)で暮らすグラフィックデザイナー。1999年に心臓移植手術を行ったが、その際、術後の妊娠はリスクが高いためできないと医師に告げられていた。

 手術から10年後、フィノンドさんは妊娠に挑戦する決意をした。だが2年間、自然妊娠はできなかった。

 移植された心臓が拒絶反応を一切示していなかったため、医師らは、妊娠を困難にしている拒絶反応抑制薬の投与を徐々に中止する一方で、体外受精に必要な薬剤を投与する特別の医療計画を立てた。

 幸運にも、フィノンドさんは1回目の体外受精で妊娠。9か月間の監視の末、娘エミリア(Emilia)ちゃんが1月15日に健康に誕生した。

 フィノンドさんの心臓医、セルヒオ・ペローネ(Sergio Perrone)氏は今回の事例について、臓器移植後の人生が制限されたものだという偏見を取り払う出来事だと語る。「現在、臓器移植手術を受けた人々の生活の質は優れたものだ。人々が想像しているよりずっと良い」

 またペローネ氏は、今回の事例が、臓器提供により「1人の命が救われ、そこから何倍もの命が生まれる」ことを示していると述べ、臓器提供を検討するようになる人々が増えるのではないかと期待を寄せた。

「(エミリアちゃんも)やがて母になるのだ」とペローネ氏は語った。(c)AFP/Sonia Avalos