シリーズ累計190万部突破の大ベストセラーマンガ『日本人の知らない日本語』。物語の中で日本語を教える海野凪子(うみの・なぎこ)先生が、外国人生徒たちの奮闘ぶりと、日本語の特徴について語った。
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外国人の生徒が日本語を勉強する中でつまずきやすいのは、カタカナ語や、擬音語です。カタカナって外国人の方が馴染みやすいんじゃないかと思いがちですが、そんなことはありません。英語とカタカナ語では発音が全く違いますから、逆に戸惑うことが多いんです。「ビール」(飲み物)と「ビル」(建物)、「ビル」(人の名前)の区別をつけるのって、とっても難しいんですよ。
「シトシト」「ザーザー」というような擬音語や擬態語も、外国人には馴染みがなく、難しいようです。法則もあるにはありますが、暗記してもらうということしかないんです。こういうときこそ、マンガやアニメは役に立ちます。効果音として、いろいろな音が入っているので、自然と覚えられるようです。
流行語や、言葉の乱れなどが問題になることもありますが、日本語はとても柔軟性の高い言語なのだと思います。「GETする(ゲットする=自分のものにする)」など、外国の言葉をとりいれて「日本語」にしてしまうんですから。
そういう意味では、言葉の乱れや流行語もあるのが当たり前なんじゃないでしょうか。いま私たちが使っている言葉が乱れていないと思っていても、200年前の人たちには理解できないことも多いでしょう。ですので、“乱れ”というよりは“変化”と捉えています。
「見れない」「食べれる」といった「ら」抜き言葉も、今はまだ乱れといわれていますが、何年後かには教科書に載っているかもしれません。
日本語は、「いただきます」や「おかげさまで」など、普段よく使う言葉にも感謝の気持ちが表われています。これからも、日本人の真面目なところ、心遣いの部分を皆さんに伝えていけたらいいなと思っています。
※週刊ポスト2012年6月15日号