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インタビュー

GOATBED 『「」ying & yang』



GOATBED


[ interview ]

2人体制となって初のリリースとなった昨年のミニ・アルバム『HELLBLAU』から約1年――そして、フル作としては実に6年4か月ぶり。GOATBEDのニュー・アルバム『「」ying & yang』は、統制の取れたグルーヴの狭間から匂い立つようなロマンティシズムが零れ落ちる、ストイックかつエレガントな歌ものテクノ作品に仕上がった。

今年3月に発表されたシングル“DREAMON DREAMER”、6月に届けられたPCゲームのサントラ『-DMMd period.- DRAMAtical Murder re:connect soundtrack』では、メロディアスな旋律とセクシーなヴォーカルをふんだんに活かした楽曲で聴き手を魅了した彼ら。今回の新作もそこから5曲をピックアップしているが、全体の耳触りとしては『HELLBLAU』で舵を切ったミニマル路線をよりディープに更新しており、仄暗い揺らぎがもたらす立体的な音響空間と抑制されたビート、表情を隠した低音ヴォイスがたまらない陶酔感を呼び起こす逸品となっている。ソングライター・石井秀仁のクールな持ち味が大解放された本作について、本人に話を訊いた。



前作がファーストみたいなもの



——昨年のミニ・アルバム『HELLBLAU』のリリース以降もcali≠gari作品の取材などで何度かお会いしてますが、延々と制作され続けている印象で。

「そうですね。『HELLBLAU』から何曲ぐらい作りましたかね? cali≠gariのほかにサントラとかもありますし、そこにこの『「」ying & yang』も含めたらすごい数ですね。でも皆さん毎日仕事されてますしね、それを思えばたいしたことないですよ。毎日働いてますよね?」

——働いております。

「うん、俺も毎日働きます」

——ははは。それで今回の新作ですが、〈温度が低い感じだけど、大丈夫かな?〉とおっしゃっていた『HELBLAU』からさらに温度が低下した印象で。

「低下してますね(笑)。先に出たゲームのサントラのほうで歌がガッツリ入ってる曲をやってたいうのがあったし、その前に出したシングルも歌メインだったから、新しく入れる曲はまあ、その程度でいいかなと」

——ゲームのイメージソングとなったシングル“DREAMON DREAMER”とサントラから4曲。うち、ほとんどヴォイスというかポエトリーというか……な雰囲気の言葉が乗せられていた“Deeds, not words”は、タイトルが“THE ROLLING RUBBER BALL”に変わって。

「そうですね。歌を乗せ替えてるんですね」

——そうすることでロマンティシズムを増した“THE ROLLING RUBBER BALL”をはじめ、歌が立ったメロディアスな楽曲が既出のもので、ほぼ後半にまとまってますが、今回初出の前半部分はかなりミニマルで。

「『HELLBLAU』のときも言ったと思いますけど、たぶん、もともとそうなんですよ。例えばゲームのサントラだと、〈こういう曲が欲しいです〉みたいに求められるものがありますよね。でもそういうふうに求められるものがなくて、何も考えずに作るとこうなるんですかね。GOATBEDは絶対的な音楽性があるわけじゃないですからね。お客さんが〈GOATBEDってこうだよね〉って思い描いてるようなものって別にないと思うんですよ。まあ打ち込みで、変な格好してて、すっげえTシャツ売ってて、とかそれぐらいのイメージしかないですよ(笑)」

——(笑)まあ、音楽的には縛られるものがないと。

「あとは単純に人数感っていうのもありますね。昔はもっとメンバーが多かったんで、演奏っていうところに結構比重があったんですよ。それがいまはもうね、一人みたいな二人だし。だから、前回の『HELLBLAU』がファーストみたいなものですよ。ただGOATBEDっていう名前が同じなだけで、やってる人は違いますから」

——『HELLBLAU』がファースト・アルバム。鳴ってる音からするとそう言えますね。

「だからね、ネットとかで見掛けるGOATBEDのプロフィールにある〈ニューウェイヴ歌謡ポップ〉みたいなの、早く削除してほしいなと思うんですよね。ニューウェイヴ歌謡ポップ感はどこにもないので。吉川晃司の“モニカ”のカヴァーが、って言われても……じゃないですか。それを期待されても、いまは全然違いますもんね」

——ですが、編成が違っているとはいえ、過去の作品も求められるものに対してのリファレンスみたいな意識で制作していたわけではないんですよね?

「うん。そうだし、始まりは10年も前ですから、そのときおもしろかったものなんていまはまったくおもしろくなかったりとか、逆におもしろくなかったものが一回りしてまたおもしろくなってる場合もあるじゃないですか。それぐらいの時間ですよね。10年って。昔はやりたいかやりたくないかじゃなくて、おもしろいかつまんないかみたいな判断でやってたところがあったんです。いまこれやったらおもしろいな、とか、これやったら超格好悪いから逆に格好良いよな、みたいな感じで。昔はもう二人ぐらい気の合う仲間(笑)みたいなのがいたんで、そういう人たちと〈これいいよね?〉って言っておもしろおかしくやってたところがあったから」


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掲載: 2013年08月21日 18:01

更新: 2013年08月21日 18:01

インタヴュー・文/土田真弓