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小学館本社ビルの豪華すぎる落書き 口火切ったのは浦沢直樹

 老朽化のため取り壊しが決まった東京・神保町の小学館本社ビル。まだ真夏日が続く8月下旬、名だたる漫画家たちがフェルトペンを片手に、冷房も入らない猛暑のなか、1階応接ロビー壁面の落書きに夢中になっていた。

 第2回となったこの日の落書き大会に集まった漫画家は、総勢84人。漫画に焦がれ、漫画を愛し、そしてプロの漫画家として作品に魂を込める当代一流の作家たちだ。

『うる星やつら』や『犬夜叉』など数々の名作を世に送り出した高橋留美子さんは、タオルで汗をぬぐいながら、次々とその主人公を描いていた。

 そのすぐそばでは、『うしおととら』や『からくりサーカス』を作った藤田和日郎さんが、地べたに座りながら、「本当に楽しいなあ」と、『花もて語れ』で知られる元アシスタントの片山ユキヲさんと落書きを楽しんでいた。

 窓際のほうでは、連載35年を迎える『あさりちゃん』の作者で、姉妹漫画家の室山まゆみさん(室山眞弓、眞里子さん)が、柱にヒロイン・浜野あさりを描き出した。

 あっという間に女性の人垣ができて、“ギャラリー”は、「すごい! すごい!」と叫んで、皆興奮しながら写真メールで記念撮影、ロビーにシャッター音が響きわたる。なかには食い入るように動画で一部始終を撮影する人も。そんな彼女らも、室山さんと同じく第一線で活躍する現役の漫画家たちだ。

 落書き終了の予定時刻を過ぎても、誰も帰ろうとしない。ビルの中は、外の暑さとはまた別の熱気に溢れていた。室山さん姉妹は、落書き大会を振り返って、こう話す。

「子供のころは、ノートや紙の裏にいつも落書きをしていました。それが、小学館のビルの壁や窓に堂々と落書きをしていいなんて言われたら、もうたまりません」

 2回にわたって開かれた落書き大会。第1回は、8月上旬に開かれ、藤子不二雄Aさんや浦沢直樹さんをはじめ25人の漫画家が集まった。

「豪華すぎる落書き」と呼ばれたこの作品群の口火を切ったのは、実写映画化もされた『20世紀少年』の作者・浦沢さんだった。

「その2日前くらいに編集部から“落書きしない?”ってラフな感じで誘われました。藤子A先生もいらっしゃるって聞いて、トキワ荘の落書きを思い出しました。だからこそ、藤子A先生にいちばんに描いてほしかったんだけど、インタビューがあってなかなか現場にいらっしゃらなかった。それで側にいた知り合いに“浦沢くん、描いちゃいなよ”って言われて。ちまちま描いていても面白くないから、このくらいの大きさにしようって」

 大人の身長大に描いた『20世紀少年』の“ともだち”には、「あーそーびーましょー」と作中でもよく話してた言葉をしゃべらせた。それが落書きスタートの合図となり、ともだちの周りには、オバQやR・田中一郎(『究極超人あ~る』、ゆうきまさみさん)といった人気キャラたちが次々と描かれた。

「ただの落書きなので、人に見せるつもりはなかったんです。冗談で“一般公開すればいいじゃない、みんなに見てもらえば”って言っていたんですよ」(浦沢さん)

※女性セブン2013年9月19日号

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