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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年7月17日 (水)

金利見通しは「上昇する」が過半数。では、住宅ローンは何を選べばよい?

写真: iStockphoto / thinkstock
写真: iStockphoto / thinkstock
【今週の住活トピック】
平成24年度「民間住宅ローン利用者の実態調査(第3回)」を公表/住宅金融支援機構

http://www.jhf.go.jp/about/research/loan_user.html

住宅金融支援機構が発表した平成24年度「民間住宅ローン利用者の実態調査(第3回)」※によると、今後1年間で住宅ローンの金利は上昇すると予測した人が倍増している。金利が上昇すると予測した場合は、どういった住宅ローンを選べばよいのだろうか?

※「民間住宅ローン利用者の実態調査【民間住宅ローン利用予定者編】」は、今後5年以内に住宅取得で民間の住宅ローンを利用する予定の1022人を対象に、住宅金融支援機構が年3回実施しているもので、今回は平成24年度の第3回目。調査時期は2013年2月7日。

アベノミクス効果で、金利見通しは「上昇する」が倍増

前回(2012年10月)の調査結果と比べると、今回(2013年2月)大きな違いが表れたのは「金利見通し」についてだ。前回は50.2%が今後1年間の住宅ローンの金利は「ほとんど変わらない」と回答していた。それが今回は、52.1%が「現状よりも上昇する」と回答し、金利見通しが激変した。

今後1年間の住宅ローン金利見通し(金利タイプ別)

【図1】今後1年間の住宅ローン金利見通し(金利タイプ別) (※住宅金融支援機構 平成24年度「民間住宅ローン利用者の実態調査(第3回)」より抜粋)

この間に何があっただろう? もちろんアベノミクスだ。
3本の矢のうち「機動的な財政政策」の矢として、政府は1月15日に、過去2番目の規模となる13兆1千億円の補正予算案を閣議決定。続く1月29日には平成25年予算案を閣議決定した。

「大胆な金融政策」の矢が放たれたのは、1月22日。政府と日本銀行は、2%の物価上昇率目標を盛り込んだ「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」の共同声明を公表した。こうしたアベノミクス効果で円安や株高が進行したのが、ちょうど今回の調査時期に当たる。

また、住宅ローンの金利については、景気回復への期待から市場の長期金利が上昇に転じたことを受けて、10年や35年金利を固定するタイプのローン金利が1~2月に上昇した。長期金利に連動する住宅ローンの金利は、それまでダウントレンドにあったが、それが上昇に転じたことで「金利見通し」も上昇すると見る回答が急増したのだろう。

調査結果ではさらに、今の低水準の住宅ローン金利や消費税引き上げ前を理由に、「今後1年程度は住宅取得のチャンス(買い時)だと思う」という回答が、前回に引き続き上昇し、55.5%にまで達している。

金利上昇と予想するなら、やっぱり固定金利?

住宅ローンの金利タイプとしては、35年などの返済期間を通して金利が固定される「全期間固定型」、当初の3年や5年、10年などの選択した一定期間だけ金利が固定される「固定期間選択型」、半年ごとに金利が見直される「変動型」の3タイプがある。

一般的に金利上昇局面では、長期間金利を固定するローンのほうが、借り入れ時の金利を長く維持できるので有利と言われている。したがって、「全期間固定型」を希望する人では、金利見通しで上昇するという回答が最も多く、58.6%と6割近くに達している。しかし一方で、「変動型」を希望する人でも、金利見通しで上昇するという回答は43.3%と極めて高くなっている。

「変動型」の金利は、都市銀行で店頭金利が2.475%だが、最大で1.6%の金利引き下げにより、0.875%の金利が適用される現状にある。これだけの低金利であれば、支払う利息も少なく、元金が早く減るメリットが大きい。問題は、金利が上昇したら支払う利息が増えてしまうことだ。

したがって、利息増加に対する防衛策を考慮したうえで、変動型で借りるという選択肢もあるだろう。例えば、低金利を活用して元金を早く減らしてしまい、金利が上昇したときには、手持ち資金で繰り上げ返済をして、さらに元金を減らすことで金利上昇による利息増大を軽減させるといった防衛策。あるいは、変動型と長期間金利を固定するローンを組み合わせることで、金利増大リスクを軽減させるといった防衛策などだ。

今後、住宅ローンの金利どうなるの?

今後の金利を予測するのは、経済の専門家でも難しいものだ。しかし、金利の動向には2種類あることを覚えておこう。変動型は、市場の短期金利に連動している。短期金利は日本銀行がコントロールしているので、物価上昇率2%を達成するまで今の低金利が続くと考えられている。したがって、住宅ローンの変動型の金利が1年以内に上がることは考えにくい。

一方、市場の長期金利は日本銀行の思惑に反して、乱高下している。長期間金利を固定する住宅ローンほど、市場の長期金利の影響を受けるので、全期間固定型の代表格である「フラット35」の最低金利(住宅金融支援機構と提携する窓口となる金融機関によって金利が異なるため、最低~最高の幅がある)の動きを見てみよう。1~3月で金利が上昇したが、4月には史上最低金利を更新して1.8%まで下がり、6月には上昇に転じて2.03%まで上がるなど、上がり下がりを繰り返しており、今後も予測が難しいところだ。

ただし、変動型で借りておいて、金利が本格的に上がったら長期間固定するタイプに借り換えるという考え方は持たないほうがよいだろう。この数カ月の動向で分かるように、市場の長期金利のほうが景気の変化に早く反応するので、気づいたときには手遅れという可能性が高い。まったく防衛策を持たずに、目先の超低金利だけで変動型を選ぶということだけは避けたほうがよいだろう。

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