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西村 祥子
2012年10月16日 (火)

今、広島が熱い!~リノベーションEXPO JAPAN 2012 開催

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「リノベーション」という言葉自体は、最近、テレビなどで耳にする機会は増えたものの、この言葉の意味を、どれだけの人が理解しているだろうか? 中古住宅に新しい価値を付加する「リノベーション」について、もっとたくさんの人に知ってもらおうと、2010年から毎年、「リノベーションEXPO JAPAN」というイベントが開催されている。今回で3回目となる同イベントだが、今年は広島での参加希望者が倍増しているという話を聞き、10月5・6日に行われたイベントに参加してみることにした。

「リノベーション、その手前にあるもの」…トークイベント

広島市の中心部、中区中町にあるビル。普段はカフェ併設の家具SHOPとして営業している1階スペースがイベント会場だ。DJブースが設けられ、セミナーなどにありがちなパイプイスではなく、ゆったり座れるソファやデザインチェアが並ぶ会場は、ちょっと不思議な雰囲気。その会場を埋めた参加者は、若い女性や学生らしき男性、ラフなシャツ姿の年配男性までさまざまで、幅広い世代の人が「リノベーション」に関心をもっていることがうかがえた。
 

トークイベント会場となったカフェ店内の様子

しかし、「『リノベーション』という言葉の認知度はいまだ3~4割」と話すのは、トークイベントゲストの内山氏(株式会社リビタ 常務取締役)。さらに、「人口・世帯数の減少で、空家化する住宅が増えており、それは首都圏より地方都市のほうが顕著」と同ゲストの島原氏(リクルート住まい総研 主任研究員)も続く。「欧米では、家を住み継ぎ、自分たちの暮らしに合わせてアレンジしていくのが主流。一方、日本では、いまだに高度成長期の大量生産的な考え方の住まいが多いのも事実です」(内山氏)。

その中で大きな意味を持つのが「リノベーション」というわけだ。中古住宅を新築のようによみがえらせるだけでなく、住み手の暮らしに合わせて、新たな価値を付加していくのが「リノベーション」の魅力。イベントでは、ファミリータイプの古い団地を、単身者向けのシェアハウスとしてリノベーションし、新たなコミュニティを生み出した「りえんと多摩平」の事例なども紹介された。

「2010年の『世界幸福度調査』では、日本は81位と低迷。しかし、この数字も、『住まい方』次第で大きく変わるはず」と島原氏。「住まいを考えることは、暮らしをデザインすること」(内山氏)というとおり、住まいに暮らしを合わせようとしているうちは、本当の幸福感は得られないのかもしれない。

「もっと自由な暮らし方を実現できる住まいの可能性を、たくさんの人がもっと気軽に体感できる場を」(島原氏)。今回のように、リノベーションについて広く認知してもらうための試みの継続を熱望しつつ、トークイベントは幕を閉じた。

「あなたにとってのReとは?」…パネルディスカッション

続いて行われたのは、リノベーションに賛同する業界外のパネラーによるトークセッションだ。アパレルSHOPや飲食店の経営者、生活文化を専門とする大学准教授など、地元広島で注目を集める「衣・食・住」の専門家が顔をそろえ、カジュアルな雰囲気でイベントは進行していく。

リノベーションを単に住宅業界の動きの一つと捉えるのではなく、もっと広く、豊かな暮らしを楽しむ時代の流れの一つと考える…。着ること、食べること、暮らすことを心から楽しんでいるパネラーたちの話を聞いていると、「衣・食・住」の柱の一つである「住」の分野も、もっともっと自由に楽しめるものであってもいいと思えてくる。ここにも、今回の参加者増加の一因があったように思う。
そして翌日には、住まいの可能性を体感できる、複数のリノベーション物件を巡るバスツアーが企画されていた。

「リノベーション課外授業 by バスツアー」

翌日、広島市街地の細い路地に、異様にも映る大型観光バスが登場。実は当初マイクロバスで実施するはずが、予想以上の参加申し込みで、急きょ変更されたのだという。バスツアーで巡ったのは、タイプの異なる3物件。バス車内ではリノベーションに関するクイズ大会、各物件では専門家によるミニ講座なども行われ、和やかな雰囲気のイベントとなった。

広島の街中に登場した、物件見学のための大型バス

まず最初に見学したのは、既存の間取りを活かしつつ、建具やキッチン周りなどのデザインにこだわった物件。玄関から奥へと続く廊下は、よくあるマンションの間取りを活かしながら、むくの木のフローリングのおかげで、無機質なイメージを一掃。外窓のない個室に設けられた小さな内窓や、タイル遣いのキッチンには、「かわいい!」と足を止める女性も多かった。

物件内では、カメラやケータイを手に、まずは各部屋をチェック

2件目は、間取りを大きく変更したフルリノベーション物件。築41年というのに、管理の良さか、外見も比較的きれいな印象で、構造もSRC(鉄骨鉄筋)造。収納室を住戸の中央に配したり、キッチンを少し下げて作業をしやすくしたり、個性的な設計にも注目が集まっていたようだ(この記事のメイン写真が該当物件)。

そして3件目は、女性の一人暮らしを想定した物件。「仕事もプライベートも充実した女性にこそ楽しんでほしい」(担当者)というとおり、自転車も置ける広い玄関土間や、フレキシブルに使える寝室、機能的な造作キッチン、一部だけ残されたむき出しのコンクリート梁など、憧れの一人暮らし生活のイメージがそこに。「物件・工事費込で1000万円内という価格が、現実的!」という女性参加者もいた。

料理が楽しくなりそうなキッチンは女性参加者の注目の的

もっと豊かな暮らしのために、住まいにもっと「自由な楽しさ」を

今回のイベントの成功の要因を聞いてみると、「バスツアーっていうのがよかったんじゃないかな?」と担当者。参加者に話を聞いてみても、「別々の会社の物件がまとめて見られるというので、物件見学は初めてでしたが、参加を決めました」という人も。ツアー形式の気軽さが、「気になる」気持ちを後押ししたのも間違いないようだ。

さらに、参加者から多く聞こえたのが、「新築も考えているけど、予算が…」、「賃貸だけど、家賃がもったいないし、どうせなら…」といった、お金にまつわる話。身の丈に合う予算で、賢く住まいを選びたい、という人も確実に増えているようだ。「このくらいの予算で、しかもこんなにオシャレな暮らしができるなら、“あり”だと思います。参考になりました」とリアルな感想を漏らす人も。

また、賃貸住宅の大家さんというご高齢の夫婦は、「これからの賃貸住宅は、ますます住まい手のニーズをいち早く反映していくことが大事だと思います」と話してくれた。「ピカピカの新品よりも、味のある古いもの」を好む若い世代が増えていることも、「リノベーション」が注目される要因の一つだろう。

しかしその一方で、「まわりには『リノベーション』を知っている人はまだまだ少ない」という声も。トークイベントの結びにもあったように、今回のこのイベントのように、「リノベーション」について気軽に体験できる場があれば、住まいの選択肢は確実に増えていくはず。

暮らしの中心になる住まいだからこそ、家づくりをもっと自由に楽しむ住まい手が増えていい!…そんなことを感じたイベントだった。

リノベーションEXPO 2012
HP:http://www.renovation.or.jp/expo2012/

リノベーション住宅推進協議会
HP:http://www.renovation.or.jp/

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