マネーと制度
連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年10月16日 (水)

想定外の消費税増税に注意 住宅の建築工事の変更や遅延がトラブルの元

写真: iStock / thinkstock
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【今週の住活トピック】
「消費税率引上げに伴うトラブル防止のポイント」を掲載/住宅リフォーム推進協議会

http://www.j-reform.com/info/info_zei.html

2014年4月1日から消費税率が8%に引き上げられることになった。そこで注意したいのが、住宅の場合の税率の適用のタイミングだ。一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が、リフォーム事業者に向けてトラブル防止のポイントをまとめた。想定していた税率が適用されない、というトラブルを避けるためには、消費者も知っておきたいポイントだ。

消費税率5%のままとなる経過措置が適用される場合の注意点

住宅の消費税が課税されるのは、購入した住宅や建築工事を終えた住宅を引き渡される時点。2014年3月中までの引き渡しなら5%、4月以降なら8%で課税される(消費税の課税対象外となる「個人が売り主の中古住宅」を除く)。

ただし、注文住宅やリフォームなどの建築請負工事については、経過措置が用意されている。半年前、つまり2013年9月末日までに契約を締結すれば、たとえ引き渡しが2014年4月以降であっても旧税率の5%が適用されることになっている。

新築住宅は売買契約なので経過措置の対象とはならないが、購入者からの内装や建具、設備などのオーダー(いわゆるオプションやメニューなどの選択)による建築工事を行って売買する契約の場合は、経過措置の対象となる。

ここで注意したいのが、9月末までに契約を締結したので経過措置が適用されて、消費税率が5%となる場合でも、10月以降に追加工事や工事内容の変更を行った場合、その分については経過措置の対象外となる点。

国税庁消費税室の資料によると、100万円の金額で建築請負契約をした場合、追加工事により増額となる工事(+50万円)、減額となる工事(-30万円)があった場合、もともとの100万円については経過措置の対象となるが、結果として増額となった20万円については引き上げ後の税率が適用される。また、工事の変更があったとしても、もともとの100万円より最終的な請負金額が少ない場合(70万円)は、70万円全額が経過措置の対象となる。

工期の遅延はトラブルにつながる

よほどの大掛かりなリフォーム工事でなければ、工事期間が数週間~数カ月で終わる場合も多い。つまり、10月以降に建築請負契約を締結しても、3月中に工事が完了する可能性が高い。消費税率が引き上げられる前に引き渡しが受けられるので、5%が適用されると思っていると思わぬ落とし穴に陥ることもある。

追加工事や工事内容の変更によって予定されていた工期が長引いた、あるいは天候などの理由によって工期が遅れたという場合、理由を問わず、引き渡しが2014年4月以降になれば消費税率は8%が適用されるからだ。こうした場合、増税分の負担については、発注側と請負側のどちらが負担するかトラブルになる可能性が高い。

さらに消費税増税前に引き渡しをしようと、住宅関連の工事が3月までに集中することが予測される。通常であれば十分に余裕がある工期であっても、人手不足で工期が遅れる危険性も考えられるだろう。したがって、
あらかじめ契約条件に、工期が遅延した場合の負担について、具体的に盛り込んでおくことが大切だ。

住宅リフォーム推進協議会のまとめた「消費税率引上げに伴うトラブル防止のポイント」では、リフォーム事業者に以下の点を呼び掛けている。

●トラブル回避のための方策
(1)少額のリフォーム工事であっても書面により請負契約を締結しましょう。
参考:(一社)住宅リフォーム推進協議会標準契約書式:http://www.j-reform.com/publish/shosiki.html
(2)工期遅延時や追加工事発生時における増税分の支払いルールを書面で定め、発注者の方と合意しておきましょう。
(3)工期が遅延しないよう余裕を持った工期の設定を心がけましょう。

リフォーム事業者のトラブル回避の方策は、工事を発注する消費者によってもトラブル回避の方策になる。つまり、工事内容や費用が細かく記載された見積書によって契約を締結すること、工事の遅延の場合の支払いルールを決めておくこと、追加工事を依頼する際には工期についても確認をすること、工程表に基づいて工事が進んでいるかなどのチェックを工事中に行うこと、などに注意を払うことをお勧めする。

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