内閣府が行った「人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査」によると、20代~40代の比較的若い層が、地方への移住に肯定的という結果が出た。地方創生が叫ばれるなか、消費者の意識はどうなっているのだろう。
第2次安倍改造内閣の目玉として、地方創生担当大臣が置かれた。
アベノミクス効果で景気は上向いているものの、地方にその効果が及んでいるかは疑問視されている。896の自治体が2040年までに消失する可能性があるといった試算が公表されるなど、地方の活性化は深刻な問題となっている。
内閣府が行った「人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査」では、人口減少や少子高齢化、経済成長などと合わせて、「今後の地域社会のあり方について」も調査している。
まず、自分が住んでいる「地域の将来に不安を感じるか」という問いには、不安を感じるが46.8%(どちらかといえば不安を感じるを含む)、不安を感じないが51.9%(どちらかといえば不安を感じないを含む)とほぼイーブンに。不安を感じる人に、「どのような不安を感じるか」聞いたところ、「地域を支える担い手の不足」(55.7%)、「商店街などのまちの中心部のにぎわいの喪失」(48.0%)が上位に挙がった。
また、東京一極集中に対する考え方では、「地方から東京への集中は望ましくない」が48.3%と最多で、次いで「居住地は人びとが自ら決めるべきであり、いずれでもよい」が31.2%と続いた。
自分が住んでいる地域が「都市」と「地方」のどちらと思うかを聞いたうえで、「都市」(どちらかといえば都市を含む)と回答した478人に対して、「地方に移住してもよいと思うか」を聞いたところ、思うが39.7%(どちらかといえば思うを含む)、思わないが59.4%(どちらかといえば思わないを含む)となり、地方移住肯定派は約4割を占めた。
特に、地方移住肯定派が過半数に達しているのが、20代(52.3%)、30代(57.6%)、40代(51.2%)と若い世代に多いのが注目したい点だ。
地方移住肯定派に「どのような条件があれば地方に移住してもよいと思うか」(複数回答)を聞いたところ、「教育、医療・福祉などの利便性が高いこと」(51.1%)、「居住に必要な家屋や土地が安く得られること」(48.9%)、「買い物などの生活の場や文化イベント、趣味の場などが充実していること」(42.6%)が上位に挙がった。
地方で急速に進む人口減少・高齢化に対して、地域を維持・活性化させるための方策として、政府が掲げるのが「コンパクトシティ」だ。地域の中心部に行政や商業施設、住宅などのさまざまな都市機能を集中させて、高齢者などが徒歩で生活できるようなコンパクトな街づくりが必要だとされている。
こうした考え方に賛成か反対かを聞いたところ、賛成が29.8%(どちらかといえば賛成を含む)、反対が64.0%(どちらかといえば反対を含む)と反対派が多数を占めた。その理由については調査項目にないので定かでないが、「居住地の中心部への集約が進められた結果、自宅周辺に病院などの必要な施設や機能が不足した場合、あなたは中心部への移住を考えますか」という問いには、考えるが48.8%(どちらかといえば考えるを含む)、考えないが48.0%(どちらかといえば考えないを含む)とほぼイーブン。コンパクトシティ化が進んで病院などが近くになくなっても、中心部への移住は考えないという人が半数近くいることが分かった。
地方創生については、石破大臣の手腕に期待したいところだが、コンパクトシティ構想への支持は少ないなどの課題も浮き彫りになった。ただし、若い世代で地方への移住肯定派が多いという明るい材料もあり、「教育、医療・福祉」「住まい」「生活利便」などをそろえて、移住に前向きの若い世代を地方に取り込めるかが重要なカギになりそうだ。