伝従来のリフォームとは一味違う改装のかたちが登場し、それをリノベーションと呼ぶようになったのは、ここ5年くらいのことではないだろうか。
建築躯体だけを残し、間取りも設備もすべて刷新し、新たなデザインコンセプトで新しい住まいへと大変身させる、それがリノベーションである。
インテリア雑誌を開くと、素敵なデザインの居住空間に蘇った中古マンション事例が誌面を飾り、リノベーションへの関心の高さがよく分かる。実際、リノベーションされた都心の中古マンションは人気上昇中だという。
そこで、中古マンションを一棟まるごとリノベーションして分譲している「リヴィラ等々力」を訪れてみた。
まず驚かされたのは、そのモデルルームのデザインの斬新さである。それは、ここまで自由にデザインできることを来場者に実感してもらうためだという。内装や設備機器の標準仕様は決められているが、部屋の色調や間取りは基本的に住み手の自由、いわゆる自由設計なのである。
自分の価値観やライフスタイルに合わせた住まいを実現するために、中古マンションを購入し、建築家に設計依頼し改装するというケースはよくある。ここでは、それがすべて販売価格にパッケージ化されていると考えていい。
そこで気になるのは、その販売価格。販売担当者によれば、このエリアの新築マンションより約25%安く、簡単にリフォームした中古マンションより約25%高い、それがおおよその値ごろ感だという。ただ、それは都心立地に限られるようではある。
リノベーションマンションは都心の新しい住まいのかたちになる、モデルルームはそんな予感に満ちていた。
新築の家に住みたい、そう想う日本人は多い。それは、清々しい白木に神聖さを感じる日本人特有の精神風土から生まれた新築信仰が、いまも私たちの心の奥底にあるからだろう。
新築の清々しさは、確かに何にも替えがたい。その想いが、日本人の美意識や住文化を育んできた。戦後日本の住宅は、新築が新築であるために進化し続けてきたといっていい。
実際、住まいの安全と快適性を求めて建設技術やデザインは日々革新し続け、その最先端技術は常に新築の商品化住宅、特に分譲マンションに搭載されてきた。それが、現代における新築の魅力ともなっている。
でも、新築は住み始めた瞬間から中古になる。サスティナブルな環境形成が求められる現代、増え続ける中古マンションを素敵な住まいへと再生させるリノベーションの意義は大きい。
そして、新築や中古という概念を超えるべく都心に登場したのが、リノベーションマンションである。自由設計で安価をその魅力とするこの住まいのかたちは、住まい選びの選択肢を広げ、多様化する現代日本人のライフスタイルに応えてくれることだろう。