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(第7回)まぼろしと呼ぶにはあまりにも鮮烈すぎる夏の過客たち

連載
BO NINGENの人生一度きり
公開
2013/08/30   13:00
更新
2013/08/30   13:00
テキスト
文/Akihide Monna(BO NINGEN)


ロンドン在住のバンド・BO NINGENが、現地の音楽やアートにまつわるあれこれを紹介する連載! 第7回は、ドラムのモンちゃんが初の夏フェス出演を含む来日ツアーを中心に、夏の思い出を語ってくれます!



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本日のロンドンの最高気温21℃、東京の最高気温34℃。
現在朝の8時、東京夕方4時。
距離の差にして約9000km。

改めて数字にしてみると、結構な相違があるんだなとしみじみ思いつつ、お互いの共通点を見い出すにはあまりに遠すぎるこの2都市間を、約1か月に渡って高速で駆け抜けた今回のツアー。

期間的にはいままででいちばん短いものではありましたが、その密度、彩度たるや日本の夏に猛威を振るう灼熱の太陽、湿気すらも霞むほど。
実際そのサウナ的空間に何度も心が折れかかりましたが、不思議とステージに立つ時はそれらを一掃するという確固たる意志のもとライヴに臨めていました(代償として次の日は身体も心も溶けてほぼ液化してました、悪しからず!)。

演奏するという行為が自分たちにとっては解毒的な作用を含んでおり(前にインタヴューで〈音楽をやっていなかったら?〉という問いに〈犯罪者か酔っぱらい〉と答えたことが……)、綺麗事ではなく、観に来てくれた人たちからもらう何かしらの力がある。
それをまた発散して、音としてライヴとして感情を揺さぶる何かにしていく。
恐らく自分たちのライヴの根本的な部分ではその作業がずっと繰り返されているのだと思います。
だから日常のなかにある非日常としてのライヴという空間で、特別な意志のもとに演奏し続けられるかなと。

そんなこんなでどう書こうかいろいろな思惑に思いを巡らせていると、部屋の窓辺に急な来訪者が……。



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リスです。

主に目にするのは外来種のようですが、数がとても増えているようで、公園に行けば必ずと言っていいほどお目にかかれる存在。
今日も元気なようです、よしよし。
でも彼らは食用として狩猟されてもいるらしいです……あぁ。

話が逸れました。

イギリスでの〈トラック・フェスティヴァル〉〈ラティテュード・フェスティヴァル〉を終え、その余韻も冷めやらぬうちに無秩序に荷物を詰め込み、大食漢の欧米人がオーダーしたハンバーガーのようになったスーツケースを無理矢理閉口させて、いざ日本へ。

まず最初に足を運んだのは、われわれがお世話になってるSTYLE BAND TOKYO主宰の菅友和氏が新しくスタートしたイヴェント〈NEW VIBRATION #8〉。
Taigenのソロ、前回も書かせてもらったコウイチ・ヤマノハと共にスクリーミング・ティー・パーティーでギターを担当していたニーヤンと、元ノー・カーズ(昔よくドラムで参加しました)のベーシストであるサチコ・フクダによるユニット=UMEZ、そして毎回進化を遂げ、観るたびに感化されるZZZ'sと、何ともたまらないラインナップ。
時差ボケやうだる暑さはどこへやら。



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UMEZ



そしていよいよ念願の〈FUJI ROCK FESTIVAL〉。
前乗りしてビョークのライヴへ。
個人的に、最後に観たのは2007年の〈グラストンベリー・フェスティヴァル〉だと記憶していますが、今回観た彼女はその記憶を覆す新しさに溢れていました。
カタチに囚われず、攻撃的とも言えるほど研ぎ澄まされた音とヴィジュアル、それを作り続ける姿勢に驚嘆。翌日への充電は満タン。

そして7月28日、本番当日。
10時20分からというのはBO NINGEN史上もっとも早い時間の演奏。
走るには燃料が必要とばかりに朝8時からビールを〈プシュッ〉。
〈Beer O'clock!!!〉の鐘が鳴ります。



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リハーサル風景。もう鐘は鳴ってます



その日誰よりも早い時間のステージではありましたが、大勢のお客さんが詰めかけてくれました。
僕ら(自分?)は雨を呼びやすいので、今日はひたすら雨なのではと懸念していましたが、その不安は嘘のように晴れました。
清々しい天気のもと、朝の苗場に向かって轟音を鳴り響かせて束の間、
やはり
降りました……。

でもその雨も手伝ってか〈RED MARQUEE〉にはお客さんも増え、満員に。
そしてサヴェージズのジェニー・ベスの登場と共に、彼女とコラボレーションした“Nichijou”を披露。
日本で同じフェス、同じ日に出演するというこの偶然に感謝です。

その後、〈WHITE STAGE〉のサヴェージズの演奏を観に行ったわけですが、始まって少し経つと凄まじい豪雨。本当は身体を動かしてノリたいところでしたが、動くと濡れると思い、終始微動だにせず鑑賞終了。



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いま、彼女は雨を呼んでます



マネージャーとフジロック回想録的な話になり、「自分は〈WHITE STEGE〉で昔ゆらゆら帝国を観てすごく感動したんですよね」的なことを告げたところ、彼は「えっ、俺もそこにいたよ」と。
「あの時実はすごく近くにいたんだねー」と、何だか過去と現在が繋がったような感じがしてしみじみ。
そして頭の中でTHA BLUE HERBの〈フジロック〉出演時の映像が流れて、
〈サイケデリック・エベレスト ト ト  ト   ト    〉
そんな白昼夢的な〈フジロック2013〉でした。



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