キャッチフレーズは、昭和の香りを色濃く残す商店街。福岡市中央区の美野島商店街は、九州の玄関口博多駅からわずか南に1キロほどのロケーションでありながら、青果店や鮮魚店が軒を並べる景色は、昔ながらの商店街の風情をそのままに残している。そんな商店街の一角に誕生したのが、このあたりで初となる一軒家ゲストハウスのコステル美野島だ。
「Co-Hostel」を略して「コステル美野島」と名付けられたこの場所は、集まって、泊まって、人と街とがつながる活性化を目指したゲストハウスだ。運営を手掛けているのは不動産に関する企画などを手掛けるコヤマコンセプトのプロデューサーである貞國秀幸さん。これまでも、福岡市南区井尻で、ミュージシャンや絵描きなどの「アーティスト」に限定したリノベーション賃貸マンション「KICHI」の企画を手掛け話題を集めてきた人物だ。
風情ある商店街として福岡市内では有名な美野島だが、最近では、空き地に新しく住宅ができることも多くなってきた。この街の良さを残したいと思っていたところ、偶然にこの土地に出会ったそう。そこで、自らが企画をたててこの地区初のゲストハウスを完成させた。
「もともと海外旅行経験も多く、ゲストハウスにもいろいろ泊まってきました。そんなときに泊まるのは、面白そうなエリアだったり、写真で見たエリアだったり。駅から近いとか利便性だけではなかったので、美野島商店街という地にもポテンシャルの高さを感じました」
と、コステルを始めるに至った経緯を振り返る。
町家風な細長いつくりの一軒家は、外から一見しただけではここに宿泊できるとは想像できないつくり。入口のカフェが、ゲストハウスの受付スペースともなっている。お部屋は、全部で3つ。キングサイズのベッドがある部屋、シングルベッドが3つ並ぶ部屋、そしてツインベッドルーム。いずれも料金は、一部屋5000円(税別)に設定されている。また、各部屋にはトイレとお風呂も付いていて、ゆるやかにプライベートも確保されている。
「価格は安く設定していますが、いわゆる2段ベッドがあるような海外の安宿という感じじゃなく、滞在も楽しめる場所にしたかったので今の間取りにしました。安いだけのホテルって、家族や女子には不向きですよね。できれば、ファミリーなどにも使って欲しいと考えています。家族で旅行するとなると、ついつい旅費がかさむ。一部屋設定の価格にすることで、どんな風にも使って楽しんで欲しいですね」
そんな思惑通り、開業して間もないが、早速女子会や誕生会などで一部屋借りするケースもあるそう。美味しい店も周囲に多い美野島で、飲んで、遊んで、泊まって、次の日は普通に出勤するといった楽しみ方をしているそうだ。
商店街とつながる入口のカフェには、既に地元の常連客も付いている。カフェのメニューには、商店街のコロッケも並ぶ。また、ご近所を巻き込んで商店街ライブをしたり、ご近所のマッサージ店か宿泊客向けの出張サービスもできたりと、宿泊する人と商店街、そしてこの場所と商店街のつながりも着実に育まれているようだ。
「全国でいろんな街づくりが行われていますが、一時的に街に人を呼び込んだり、どこかの真似をしたようなものだったりも多い。街にしっかり腰を据えて楽しんでもらうためには、こんなゲストハウスという在り方があってよいと思います」
そう語る貞國さんの言葉どおり、5年後、10年後、美野島商店街、そして福岡にとってどんな存在になっていくのか楽しみな場だ。