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2012年10月18日 (木)

浅漬けが原因とみられるO157の食中毒。生野菜のリスクとその対策

浅漬けが原因とみられるO157の食中毒。生野菜のリスクとその対策
Photo: iStockphoto / thinkstock

先日、北海道の高齢者施設などで浅漬けを食べたと思われる100人以上が、腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒を発症し、ニュースや新聞などでも話題となった。O157による食中毒というと、牛肉などの生肉を食べて発症するイメージが強いが、なぜ浅漬けが原因となったのだろうか?

そこで、ここでは改めて腸管出血性大腸菌O157について、その発生原因と対策をご紹介したい。まず、この腸管出血性大腸菌O157だが、そもそもどういった菌なのか? 厚生労働省のホームページによると、

「大腸菌は、家畜や人の腸内にも存在します。ほとんどのものは無害ですが、このうちいくつかのものは、人に下痢などの消化器症状や合併症を起こすことがあり、病原大腸菌と呼ばれています。病原大腸菌の中には、毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす腸管出血性大腸菌と呼ばれるものがあります。腸管出血性大腸菌は、菌の成分(『表面抗原』や『べん毛抗原』などと呼ばれています)によりさらにいくつかに分類されています。代表的なものは『腸管出血性大腸菌O157』で、そのほかに『O26』や『O111』などが知られています」

とあり、また「腸管出血性大腸菌は、牛などの家畜や人の糞便中に時々見つかります」と続いている。

ではなぜ、牛などの家畜の糞便中にあるものが浅漬けに感染したのだろうか? その疑問を解決すべく、国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部の五十君(いぎみ)第一室室長に話を聞いてみた。

「牛からの糞便は環境を汚染しますので、野菜を栽培している農場も腸管出血性菌の汚染を受ける可能性があります。野菜や食品の管理が悪い場合は菌数を増やしてしまう可能性は否定できません。今回の浅漬けは、伝統的な醗酵食品である“漬物”ではなく乳酸菌による発酵が十分ではないため、原材料となる野菜に汚染があると、食中毒事例が発生してしまうことがあると考えられています」

なるほど、乳酸発酵による漬物は保存性の高い食べ物として、古くから日本でも愛されてきた。Wikipediaによると乳酸菌による発酵は、“腐敗や食中毒の原因になる他の微生物の繁殖を抑えて食品の長期保存を可能にしている。”とある。この乳酸菌の発酵が十分であれば、O157の繁殖を防げた可能性があったかもしれないというワケだ。

では、次にO157に汚染された浅漬け、食品などを匂いや見た目で判断できるか聞いてみた。

「腸管出血性大腸菌の発症菌数は非常に少ないため、一般的に食品に付着していたとしても、臭いや見た目では分からないと思います。菌が付着しているかは、微生物学的な検査を行わないと分からないため、家庭やお店などで汚染を判断することは難しいと思います」

ということは、食卓に上がる前の段階で防ぐしか対策はないようだ。今回の浅漬けによる被害は、もとになった野菜からの感染の可能性が高いといわれている。当然、家庭でも野菜を使うが、家庭でできる対策はあるのだろうか? これについては、先に挙げた厚生労働省のホームページに詳しく掲載されている。

1.野菜は新鮮なものを購入し、冷蔵庫で保管するなど保存に気をつける
2.ブロッコリーやカリフラワーなどの形が複雑なものは、熱湯で湯がく
3.レタスなどの葉菜類は、一枚ずつはがして流水で十分に洗う
4.きゅうりやトマト、りんごなどの果実もよく洗い、皮をむいて食べる
5.食品用の洗浄剤や次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を使ったり、加熱することにより殺菌効果はより高まります

浅漬けが原因とみられるO157の食中毒。ことさらに生野菜からの感染の恐怖を煽るつもりではないが、実際には死亡例もあるので、家庭でできうる限りの対策は是非ともとっておきたい。

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