国内

オウム「はぐれ残党」再武装化と「麻原奪還計画」を当局警戒

オウム真理教の教祖・麻原彰晃(松本智津夫)死刑囚の刑執行へ向けたカウントダウンが始まった。法務省関係者がいう。

「すでに執行に向けての政治的障害のひとつだった超党派組織『死刑廃止を推進する議員連盟』の重鎮代議士にも、今後の死刑制度の見直し議論を条件に、麻原死刑囚の刑執行に反対しないという内諾を得た。年内にも、というのが法務官僚の考え方だ」

そんななか、教団内でいま、不穏な動きが広がっているという。

教団は2007年、主流派「アレフ」と上祐史浩・教団元幹部が設立した「ひかりの輪」に分裂した。公安関係者によると信者数は合わせて約1500人にのぼる。

「出家信者が約400人で、残りは在家の信者。しかし、全国に散らばる在家信者すべては捕捉できていない。今年に入ってからもアレフには100人を超す新たな信者が入信するなど、いまになって勢力が拡大している」(公安関係者)

最近では教団施設内に麻原の写真を掲げ、麻原帰依の傾向を強めているという。警視庁捜査関係者が明かす。

「埼玉県八潮市にあるアレフの教団施設では、12月上旬に出家信徒が集まるサマナ祭が開かれ、同時に麻原の“延命祈願”が執り行なわれる予定だ。同様の集会はそれ以降も各施設で続けられると見ている」

延命祈願――つまりは死刑執行を遅らせる、または行なわせない、という狙いにほかならない。麻原回帰やサマナ祭について、アレフは本稿締め切りまでに取材に答えなかった。 前出の捜査員はこう不安を口にした。

「オウムには信者にカウントされていない『はぐれ残党』が存在しており、その動向がほとんど掴めていない。しかも、その残党がいまだに解明されないオウムの大量の武器の密輸・入手ルートを持っているとされ、それを明らかにするのが喫緊の懸案事項だ」

一連の裁判の終結で明らかになったのは、オウムが70トンのサリン製造とともに1000丁の自動小銃の収集を目指し、壮大な「武装化」計画を進めていた事実だ。押収された自動小銃の製造部品は約4万3000点をかぞえた。

「最近、死刑間近の麻原の“奪還”を口にする元オウム信者の存在も確認している。彼らが武器入手ルートへアクセスできる『はぐれ残党』と接点を持つことで、オウムが再武装化することを恐れている」(同前)

公安調査庁は11月28日、2つの団体が「依然として危険」として、団体規制法に基づく観察処分の更新を申請した。当局とオウムの「最後の攻防」が不気味に進行しつつある。

※週刊ポスト2011年12月16日号

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