国土交通省の突然のシンボルマーク公表に驚いた感もあるが、目的は「賃貸住宅管理業者登録制度」の普及にある。そもそもどんな制度なのか、どういった背景があるのか、賃貸住宅を探す消費者にはどういったメリットがあるのか、について考えてみよう。
「賃貸住宅管理業者登録制度」は平成23年12月1日に施行され、登録の受付が開始された。今年3月末時点の登録業者数は1579業者と、まだまだ少ない。では、賃貸住宅管理業者を登録する制度がなぜ必要なのか。
民間の賃貸住宅の8割以上は個人が貸主で、このうち8割近くが、全部または一部の管理業務を専門業者に委託していると言われている。家賃や敷金などの受け取りや賃貸借契約の更新、退去時の立ち合い、敷金の返還などの重要な業務を貸主から委託されているのが、賃貸住宅管理業者だ。ところが賃貸住宅については法規制が未整備であるなどの事情から、管理業務にかかわるトラブルが増えている。そのため貸主や借り主の利益を守るために、賃貸住宅管理業に関して一定のルールを設け、それを遵守する業者を登録して公開しようというのが、この制度の仕組みだ。登録の有効期間は5年間だ。
一定のルールとは、貸主に対しては、管理受託契約をする際に重要な事項を説明して、書面を交付することや管理事務の報告を行うこと、借り主に対しては、管理受託契約に関する書面を交付すること、契約更新の際には契約内容の書面を交付すること、退去時には敷金精算の算定額に関する書面を交付することなどが挙げられる。ほかにも、受託業務の一括再委託を禁止したり、帳簿の作成・保存をすることなどのルールを設けており、違反する場合は国土交通省が指導や助言、勧告、登録の抹消をすることができるようになっている。
ただし、登録するかどうかは任意の制度なので、登録をしていないからといって賃貸住宅の管理業務を行ってはいけないということではない。管理業者自らが登録を申請し、「国土交通省が定めたルールを守っているので、安心して貸したり借りたりしてください」と主張するものなのだが、賃貸住宅の貸主や借り主にとっては適切に管理を行う事業者を見分ける目安になる。
今回発表されたのは、右のようなシンボルマークだ。登録している管理業者は、このマークを事務所に掲示したり、広告物や名刺、ネームプレートなどに記載したりできる。これからは、賃貸住宅を借りる際や更新する際に、ルールを守って管理をしてくれる管理業者かどうか、マークを手掛かりに確認するとよいだろう。