歴史ニュースウォーカー

歴史作家の恵美嘉樹が歴史のニュースや本の世界を歩く記録です

「沼なんとかならアウト!?緑が丘は安全?!」地名と災害に相関性はどの程度あるのか

 きのう(2013年6月29日)の新聞で、くしくも産経新聞朝日新聞が「地名」と「被災」の関係についての記事を載せていました。
 産経新聞WEBで見ることができます。

 筑波大名誉教授(教育学)でノンフィクション作家の谷川彰英氏は「隠れた危険エリア」を指摘する。
 同氏は震災後、半年間をかけて東北から九州の太平洋岸約4000キロメートルを歩き、津波と地名の関係を調査。それを基に、南海トラフの連動地震による水害にさらされかねないエリアを『地名に隠された「南海津波」』(講談社)にまとめ、この度、上梓した。


 上の一覧にあるような川や津や谷や池などといった地名が災害時に危険性が高いことは言われなくとも分かると思います。記事でも、あまり踏み込んでいませんでした。

地名はウソをつくし、真実も伝える

 一方、朝日新聞は、土曜の別刷り「BE」で、もうちょっと踏み込んだ内容について書いています。かなり勉強になりました。(WEBなし)

 地盤液状化の調査をする関東学院大の若松加寿江教授の話として、緑が丘など本来は安全な「緑」や「丘」があっても、「地盤と関係なく、イメージが良い地名が造成地につけられたのではないか」と推測していますが、思い当たるところありますよね、中には別に「丘」でなくて、むしろ山と山に挟まれた谷にも「丘」とつけていたり(中心地に比べて標高は高いだけ)。

(↑この本がすごいのは、2011年3月19日に刊行したことですね。当然、地震の前に発売が準備されていたわけですが。対象となった液状化は2008年までです。2011年対応版が待たれます。)

 一方で、悪い地名と言われているのも、単純にそう受け止めていいかは疑問です。

 「沼」がつく地名でも、沼が見えるという理由で台地につけられたのなら地盤が悪い場所ではないし、名前に沼がつく有力者が開いた土地かもしれない。

 と、地図研究家の今尾恵介さんの話を載せます。「文字の解釈ばかりでなく、個々に地名のルーツを調べないと判断できない。『地名はウソつきである』場合も結構あることを知ってほしい」とのこと。ごもっともですね。

(↑今尾さんの最新文庫、7月に発売)

5割増しの危険性

 では、実際のところ地名と災害の関係はどうなの?ということで、そういうことをちゃんと調べた人がおりました。
 京都大防災研究所の田村修次准教授です。(氏のHP
 長野で1847年に起きた善光寺地震について調べたそうです。

 家屋被害が多かった地域では、82の災害地名のうち54%で家屋倒壊あったが、159の一般地名では36%だった。山崩れを示唆する14の災害地名のうち64%で山崩れがあったが、44の一般地名では45%だった。

 つまり、災害を示唆する地名は50%ほど危険性が高いと言えます。
 地名にそのまま災害危険性を頼るのもあれですが、まんざら無視はできないということですね。
 こういう研究はぜひ、PDFで世間に公開してほしいです。田村先生よろしくお願いします!

 ほかに、バス停の地名はなかなか変わらない(古い地名を維持している)ことから、地名と地盤の関係性を研究する名古屋大減災連携研究センターの福和信夫教授の研究というのも載せていました。

甲賀忍者が残した地震被害とその警告

 関連で、同じ日(と前の週に)の朝日Beに、歴史学者の磯田道史さんが書いた「甲賀忍者の古文書が語る地震でのため池崩壊の警告」という連載記事についてのまとめを、歴史・戦国時代ポータルサイト「Bushoo Japan」に寄稿しました。
 よかったら読んでください。(朝日新聞のほうも笑)
忍者が残した地震への警告とは | BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)

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地震予測検証防災情報サイト「ハザードラボ」にて、歴史地震をテーマにした「ハザード今昔」を毎週連載しています)

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