銚子電鉄 銚子電鉄は、JR総武本線の終点銚子から、外川(とがわ)までの6.4kmの小鉄道。幾度かの経営危機を乗り越えてきた鉄道です。車輌の修理費が無いことを「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」とネットで伝え、副業である「ぬれ煎餅を買ってください」と訴えたのも記憶に新しいところです。
その後も施設面の改善などで何度かの危機を乗り越えてきました。

 しかし、3.11以後の観光客激減などから乗客が減少、2013年2月、自主再建を断念することを発表しました。そんな背景を経て、11月21日のダイヤ改正では列車の本数を33往復から21往復へ減便します。そうした銚子電鉄の現状を取材しました。

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銚子電鉄


 銚子に着いて銚子電鉄のホームへ向かうと、週末でもあるせいか思っていたより盛況です。2両編成の電車は、立ち客も出るくらいの乗客がありました。多くの方は一日乗車券「弧廻手形」を購入していました。

銚子

 まずは終点の外川まで向かいます。電車は大きく揺れながら、ゆっくりと走ります。途中、笠上黒生(かさがみくろはえ)駅で、上下列車の交換があります。通票を交換して上下列車が交換します。乗客の多くは、犬吠埼に近い犬吠駅で下車して行きました。犬吠駅についてはまた後ほど。

 犬吠から2分で終点の外川に到着します。駅舎は開業当時のままのようで、時代ががった出札(乗車券の販売)窓口が現役です。この小規模鉄道で切符売り場が現役なのは、がんばっているな、と感じます。運賃表も時代がかっていて印象的です。

時代ががった出札(乗車券の販売)窓口

 外川駅の終端には、旧型電車、デハ801型が止まっています。かなり錆がでており、このままではすぐにも朽ちてしまいそう。デハ801は1950年に伊予鉄道の車輌として誕生、その後1985年に銚子電鉄に譲渡されてきたものです。かつての銚子電鉄の姿を偲べる貴重な車輌。鉄道に興味のない方にも、生誕60年を超えるこの電車を見に来てほしいと思います。

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 外川駅の出札では、いわゆる硬券が現役です。また、トミーテックの鉄道むすめシリーズの「外川つくし」のキャラクターシートをおまけとしてもらえる入場券を販売しています。この入場券を含めて、何枚か切符を購入しました。

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 外川駅から犬吠駅までは徒歩で移動することにしました。線路はキャベツ畑に囲まれており、周囲に障害物が全くありません。撮影に適したポイントがいくつかあり、ここで列車を撮影することにしました。キャベツ畑の向こうに、小さくですが犬吠埼の灯台も一緒に撮影できるポイントです。

キャベツ畑からの撮影

 キャベツ畑での撮影を終えて、犬吠駅へ向かいます。全線でも6.4㎞の鉄道ですから、ひと駅歩くいてもそうたいしたことはありません。
犬吠駅は、洋風の駅舎で、他の古い駅とは全く異なる新しい駅舎が建っています。銚子電鉄を利用する観光客の多くはここから犬吠埼へ向かいますので、駅には大きな売店があり、名物ぬれ煎餅のほか、いろいろな物産、グッズを販売しています。

 また、駅前広場でたまたまイベントに遭遇しました。鉄道模型メーカー、鉄道グッズ、千葉県の私鉄、第三セクター鉄道などと共同した即売会、地元銚子の店などが出品していました。ここで思わぬ買い物をしてしまいましたが……。昼食もここに出ていた地元の弁当を購入し、駅のベンチでいただきました。
さてこのイベントでは銚子電鉄の運輸課の方と少しお話をすることができました。ここで聞いたお話は、また最後に。

 犬吠駅でちょっと時間を使ってしまいました。もう少し撮影をしたいところ。銚子行きの電車に乗り、西海鹿島(にしあしかじま)駅へ行きました。銚子電鉄は駅の数が少ない割に難読駅が多いです。
西海鹿島駅は、笠上黒生駅と海鹿島駅の中間にある、狭いホーム一面、小さな待合室があるだけの、質素な駅。そしてホームに立つと、両側の駅が見えています。ここで2列車を撮影しました。

西海鹿島(にしあしかじま)駅にて

 最後の撮影は仲ノ町。ここには車庫があり、駅で入場券を購入すると指定された範囲内で見学することが出来ます。車庫の外では1001型車輌、元東京メトロ銀座線の車輌が台車を外して置かれており、検査中のようでした。
そしてここに置かれている小型の電気機関車、銚子電鉄といえばこの機関車というくらいの象徴、デキ3がわざわざ撮影しやすい位置に止められています。
また、休んでいる車輌も撮影しましたが、陽がだいぶ傾いており、これを最後に帰路につきました。

デキ3 デキ3
仲ノ町

 さて、最後に、削減ダイヤについてと、犬吠駅でお話することができた運輸課の方との会話について触れておきたいと思います。

 削減ダイヤの主な点は、朝以外は笠上黒生駅での交換がなくなる、というのが主な内容です。つまり、今は2本の列車が交互に走っているのを、1本の列車でピストン輸送する、というのがダイヤ改正の趣旨なのです。日中の本数が半分になってしまいます。これは地元の方、観光客、どちらにも不便になってしまうことが予想できます。

 報道では「車輌の検査で運転本数を減らさざるをえない」となっています。では検査が終了したら元に戻るのでしょうか?
これについて運輸課の方に尋ねると、「何とも言えないが、まずは『本数を戻すだけのお客様』が何よりも必要なんです」とのお話を伺いました。

 一度減らしてしまった本数をもとに戻すには、ただ検査の終了を待つだけでなく、「本数に見合ったお客様が来てくださること」こそが大切なのだと。これは、鉄道ファンだけでなんとかなることではありませんが、「不便になったので乗らない」ではなく、「不便になったからこそ乗る」ということが、銚子や犬吠埼を観光する人々にして欲しいことで、銚子電鉄を残していくことに必要なことです。

 一方、人員、予算等苦しいところでしょうが鉄道側の集客作戦です。
例えば、「鉄道むすめ」のキャラクター『外川つくし』について。他の鉄道に比べてあまり目立っていません。外川駅の入場券でカードが頂ける程度です。しかし、過去に実施した外川つくしの関連イベントでは多数の来客があったとのこと。
キャラクター活用には色々と制限があるところですが、キャラクター化したトミーテックにも応援を求めたいところです。ところでこの制限の主因は、「キャラクターの無断使用」。二次創作のガイドライン等をきちんと守ることが、遠回しですが銚子電鉄への協力にもなるのです。

 また取材日のイベントの告知がサイトのトップには大きくは掲載されていませんでした。そのため、この日の犬吠駅でのイベントは知らずに訪問。「たまたま遭遇した」状態になってしまいました。対応する人員が限られ苦しい中ですが、「集客のための発信」は、Twitter、facebookなどを活用し、今後徐々にでも対応されていく予定とのことです。

 何度も危機にさらされ、それでも90年もの歴史を刻んできた銚子電鉄。まだまだ長い活躍をしてほしいです。

線路をあるく猫

参考・取材協力:
銚子電鉄「犬吠駅」Twitter @choden_inubou
銚子電鉄公式サイト

(取材:エドガー)