片側の歯だけで噛んだり、犬歯だけで奥歯が噛み合わないなどの咬合異常は、肩コリや首のコリ、頭痛など不定愁訴の原因の一つとなる。さらに口が開けられない、口を開けると痛みがでるなど顎関節症の症状が起こることもある。
咬合異常の治療は歯の表面を少し削る、詰め物をする、スプリント(マウスピース)を装着するなどの方法が一般的だ。これら従来の治療は、顎関節の位置は不変だという考えで、関節から下の部分に対してだけアプローチしていた。近年頭蓋骨・顎関節の歪みをとることで咬合異常を治療する顎関節矯正法が実施されるようになっている。
吉祥寺田中歯科(東京都武蔵野市)の田中良一院長に話を聞いた。
「顎関節の運動は咀嚼筋によって行なわれています。筋肉の動きで顎関節だけでなく頭蓋骨も動き、それが咬合に影響を与えます。骨と筋肉、咬合は密接に関係があり、ひずみを生じ緊張すると他の場所もひずみます。頭蓋骨や関節のひずみや歪みを正すことで、咬合の異常を治す考え方が顎関節矯正法です」
治療は60~90分かかり、すべて手技で行なう。骨と筋肉のひずみを解消後、咬合調整を行なう。骨と筋肉を適正に調整するため、咬合が長期的に安定するという効果も期待でき、新しい治療法として注目されている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2013年4月5日号