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〈TOWER RECORDS presents ときめき☆ハミングロック学園〉ライヴ・レポート

連載
ライヴ&イベントレポ
公開
2013/10/02   18:00
更新
2013/10/04   12:13
テキスト
文/桑原シロー

 


写真/鎌倉真希

 

9月24日、横浜BLITZにて〈TOWER RECORDS presents ときめき☆ハミングロック学園〉なる萌え萌え~なタイトルが付けられたスペシャル・ライヴが催された。出演者は、スターダスト☆レビュー、KAN、馬場俊英という3組。彼らはこのたび、大阪・靭公園センターコート特設会場で毎年開催されている野外イヴェント〈靱公園 MUSIC FESTA FM COCOLO ~風のハミング~〉のためのオリジナル・ソング“靭のハミング”を制作。これまで激しい雨がつきものだったこのイヴェントだが、この曲があったおかげか、台風が接近中だったにも関わらず今年はまったく降られず済んだことも話題に。そんな奇跡を呼び寄せた魔法の曲がシングル化されることとなり、記念して企画されたのがこの奇抜な名を持つライヴである(CD購入者のなかから抽選で800名が招待された)。

会場に鳴り響く〈キンコンカンコンとチャイム〉の音。そうか、やはり〈学園〉の設定でライヴは進んでいくのか。ならばこちらだってそのノリにしっかりと合わせていかねば、というように元気良く起立する生徒諸君(オーディエンス)。ライヴはのっけから、馬場の“ボーイズ・オン・ザ・ラン”、スタレビの“今夜だけきっと”という強力なナンバーが繰り出されていく。〈SKBオールスターズ〉と名乗ってかねてよりステージ共演を行ってきた3組だけあって、さすがの団結力。こちらの背筋をシャンとさせてくれるほどの素晴らしいハーモニーを轟かせる。今日も背中に羽根を付けたKANの“すべての悲しみにさよならするために”のときには、グランドピアノの上に立ち、真っ赤なマントをなびかせながらグイグイとギター・ソロをかましてみせた根本要。そして下には、ジェットファン(業務用扇風機)を使って先輩に風を送り、直後マイクを拾ってコーラスする馬場の姿が。その美しき後輩愛が多くの観客の胸を熱くしたことは言うまでもない。

 


写真/鎌倉真希

 

MCタイムに入ると〈ご入学おめでとうございます〉と根本要。実はこのイヴェント名の発案者はKANではなく、馬場俊英なのだという驚きの事実がここで告げられる。何とか先輩をサポートせねば!とヤル気スイッチを入れた結果、出てきたのがこれだったのかと思うと、目頭が熱くなるのを禁じ得なかった。で、馬場は命名者ということで先生役を任命される。ここからが本格的な学園ライブの幕が開く。それにしても根本、KAN、馬場のやりとりは、かみ合わなさ具合も含めて底抜けに面白い。何とも言えないユーモラスな空気が発生する絶妙な掛け合いは、いつまでも観ていたい気にさせられる。

 


写真/鎌倉真希

 

2限目は〈国語〉。〈歌詞をじっくり聴くように〉と馬場先生から注意事項が告げられ、馬場の“スタートライン~新しい風”、KANの“世界でいちばん好きな人”が披露される。ふたりの歌声の誠実な響きが会場を優しく包んでいく。その穏やかな空気をしっとりしたものへと変えたのが、スタレビの“木蘭の涙”。彼らを代表するこの名バラード聴きながら、そういえば〈モクレン〉という漢字はこの曲で教わったんだよな、なんてことを思い出していた。

 


写真/鎌倉真希

 

出演者全員で学科目とメンバーに関連した川柳を作るという頭の体操を繰り広げた〈ホームルーム〉(最優秀賞は〈根本〉に〈第二性教育〉をかけた馬場の作品、〈いちどだけ/のぞいてみたいな/のどちん○〉に決定!)を経て、お楽しみの〈給食〉の時間へ。ここでは馬場の“ラーメンの歌”、KANの“愛は勝つ(カツ)”という栄養満点なメニューが登場。スタレビのロックンロール・スピリットとカロリーがめっぽう高めな演奏が、両者の歌を熱く盛り上げていく。そこから休み時間をすっ飛ばして〈体育〉の時間へと突入、スタレビの“と・つ・ぜ・ん Fall in Love”を使って、ゴキゲンな体操タイムがスタート。楽しい振りと美麗なファルセットの応酬に、会場全体がフィーヴァーしまくった。

 


写真/鎌倉真希

 

最後の授業は、KANが担当(最後まで先生役に徹し切れなかった馬場の背中にはやはり哀愁が)。お待ちかね、会場全員参加による“靭のハミング”の時間のタイムがやってきた。そもそもライヴのために作られたこの曲だが、合唱コンクールばりに熱のこもったハミングを聴かせるオーディエンスのパワーも相まってステージのうえで大きく映えていた。大阪のイヴェントのために作られたから、歌詞のなかに〈Osaka~!〉とシャウトする箇所がある。その叫び声の主である馬場は、歌詞どおりに歌うかどうか事前まで結論が出ずに苦悶していると吐露。そこで「横浜だから〈Yokohama~!〉と叫ぶべきだ」という根本要、反して「これは歴とした〈歌詞〉であるから、それがどこであろうが〈Osaka~!〉と叫ぶべきだ」というKANとの板挟みに合ったまま曲は始まり、果たして馬場が出した結論とは、大阪と横浜の折衷したシャウト〈Ohama~!〉だったのだ。

予想外の叫びにオーディエンスは大盛り上がりに。エンディングを締め括る根本と馬場によるアコギのピッキング・ハーモニクスもバッチリいって大拍手だった。

 


写真/鎌倉真希

 

放課後(アンコール)は、メンバー全員が背中に羽根を付けてスキップしながら登場。〈さぁ、ここからは英語の時間だよ!〉という馬場の一言でふたたび授業の設定へ戻って、ビリー・ジョエルの“The Longest Time” が始まる。仲睦まじげなアカペラ・コーラスにみんながホッコリ。それからこの日はKANの誕生日だということをKAN自らが言い、“ハッピー・バースデー・トゥ・ユー”が歌われるというときめきタイムも用意されていた。

クロージングは、校歌斉唱ということで選ばれたのは、スタレビの“愛の歌”。心洗われるような素敵なハーモニーを聴きながら、短かったけどとっても楽しかった学園生活を振り返ってみる。瞼の裏側に、メンバー全員のにこやかな笑顔がスローモーションで映写されていく。またどこかで出会えたら嬉しい。