【書評】『北緯43度の雪 もうひとつの中国とオリンピック』(河野啓/小学館/1680円)
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1972年の札幌。アジア初の冬季五輪に、亜熱帯の国・台湾から8人のスキー選手が送り込まれた。彼らは台湾の役員にいわれ続けた。
〈どう考えてもお前たちに勝ち目はない。国は、勝利を求めてはいない。お前たちの使命は、完走して記録を残すこと。転ぶな!〉――。
「二つの中国」の争いに巻き込まれた当時の彼らの“活躍”とその後を丹念に追いながら、切っても切れない政治とスポーツの関係の現実を描いたノンフィクション。
※週刊ポスト2012年2月10日号