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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年6月19日 (水)

持ち家志向が低下、相続しても土地は利用せず。土地白書に見る住宅事情

写真: iStockphoto / thinkstock
写真: iStockphoto / thinkstock
【今週の住活トピック】
平成25年版「土地白書」を公表/国土交通省

http://www.mlit.go.jp/statistics/file000006.html

国土交通省の平成25年版「土地白書」(「平成24年度土地に関する動向」及び「平成25年度土地に関する基本的施策」)が閣議決定され、国会に報告された。平成24年度の地価・土地取引の動向や土地に関する基本的な施策をまとめたものだが、土地白書において同省が参照した調査結果のなかに、興味深い結果があったので、紹介しておこう。

持ち家志向が12年ぶりに8割を切った

土地白書で参照された「土地問題に関する国民の意識調査」は、全国の20歳以上の3000人に対し、平成25年1月17日~2月3日に実施し、1718件の有効回答を得たもの。

住宅の所有についてどう思うか聞いたところ、「土地・建物については、両方とも所有したい」という回答が79.8%だった。平成12年度の79.2%を除いて8割台で推移していたが、12年ぶりに8割を切った。

一方、「借家(賃貸住宅)で構わない」という回答は12.5%だった。過去の調査では1割前後で推移しているが、今回最も高い割合となった。また、「建物を所有していれば、土地は借地でも構わない」という回答は4.9%だった。

また、今後望ましい住宅の形態を聞いたところ、「一戸建て」という回答が71.3%と最も高く、続いて「戸建て・マンションどちらでもよい」(16.7%)、「マンション」(10.4%)となっている。

「一戸建て」を望む傾向は、前年度とは大きな変化がないものの、平成7~8年度には9割を超えていたものが徐々に低下してきている。一方、「どちらでもよい」は、平成7~9年度で5%未満であったが、「マンション」の伸びと比べるとより大きく増加している。

これは年齢によって違いが見られ、年齢の高い人ほど「一戸建て」を望み、年齢の低い人ほど「どちらでもよい」と回答する傾向がある。20代では「一戸建て」が52.1%であるのに対し、「どちらでもよい」は32.2%、「マンション」は15.1%という割合になっている。

さて、「土地・建物については、両方とも所有したい」という持ち家志向は、「一戸建て」を望む人で特に高く、91.3%に上がる。「どちらでもよい」は53.7%、「マンション」は50.6%だ。

持ち家志向が低下していることには、一戸建て志向の薄い若い層が、土地や建物の所有にこだわらないことが背景にあると考えられる。

持ち家志向か借家志向か

【図】住宅の所有に関する意識(出典:平成24年度「土地問題に関する国民の意識調査」より抜粋)

住宅を相続や譲渡で取得しても、2割は未利用

次に、土地白書で参照された、同省の「人口減少・高齢化社会における土地利用の実態に関する調査」の結果を紹介しよう。

60歳以上の高齢者が宅地資産の6割に当たる約530兆円を保有しており、そのうち現住居の土地が390兆円と見られている。しかし、30代~40代の子育て世代が新たに住宅を購入すれば、将来親などの住宅を相続しても活用できない懸念が生じる。

この調査結果によると、住宅を今後、親や祖父母などから相続したり、譲り受けたりする可能性があると回答したのは、6割に及ぶ。その人たちに、相続可能性のある住宅の居住意向を聞いたところ、自分が利用するのは50.3%(「自分が住む」39.3%、「別荘やセカンドハウスなど第二の住宅として利用する」7.3%、「それ以外の用途で自分が利用する」3.7%)にとどまった。売却や貸与、物納は、23.6%だった。

一方、未利用は21.9%(「居住や利用する予定はないが、自分が維持管理(清掃・修繕など)をする」8.1%、「居住や利用する予定はないが、親族が維持管理(清掃・修繕など)をする」2.2%、「居住や利用する予定はないが、自分や親族以外に維持管理(清掃・修繕など)を依頼する」0.9%、「何もする予定はない」10.7%)だった。

未利用の理由については、「既に自ら別の住宅を取得しているから」という回答が63.5%を占め、最多となった。さらに、「仕事や家庭の事情とあわないから」(28.8%)、「既に老朽化が進んでおり、自ら居住していくのが不安だから」(19.8%)、「利便性が低いなど立地条件が悪い住宅であるから」(11.1%)といった回答も多かった。相続した住宅の立地や老朽化も、大きな理由になっている。

さて、土地白書は、住宅政策のためにまとめているものなので、日本が抱えている土地の問題がうかがえるものになっている。一般の家庭で土地の利用を考えるときに、住宅の敷地としての側面と資産という側面があるが、土地が有利な資産であるという考え方が薄くなっている。住宅の敷地であれば、利便性が重視されることになり、必ずしも所有にはこだわらないという意識に変わっていく。

また、通勤や通学などで利便な場所に住宅を取得していれば、利便性の悪い相続による住宅や土地は利用されなくなり、空き家や空き地が増えることになる。人口減少や少子高齢化により、空き家や空き地の問題は、さらに拍車がかかることになるため、こうした土地を有効に活用できる仕組みづくりに取り組むべきと、政府は考えている。

●土地問題に関する国民の意識調査/土地総合情報ライブラリー
HP:http://tochi.mlit.go.jp/shoyuu-riyou/kokumin-ishiki
https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2015/05/97a3e7d658abcc014cf75ce60ff9c1b1.jpg
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