仏エアバス製大型旅客機の購入契約が解除となり、巨額の損害賠償を迫られて経営危機に陥っているスカイマーク。その業務提携先として名前が取りざたされているJAL(日本航空)とANA(全日本空輸)の大手2社が激しい主導権争いを繰り広げている。
両社の狙いは、スカイマークが運航していた羽田発着の36便を手中に収めることにある。なにしろ羽田は1枠だけで年20~30億円は稼ぐといわれる“ドル箱路線”。仮にスカイマーク便を共同運航などの形で自社便に組み込めれば、大きな収益増につながる。
当初、スカイマークは羽田の全便をJALとの共同運航にし、座席の2割を提供するかわりに年間80~90億円の収入を得て経営難を乗り切る計画が決まりかけていた。ところが、これに待ったをかけたのがライバルのANA陣営と国交省である。
「JALは経営破たんして公的資金を注入してもらったうえ、いまだに各種税金の払いも少なく済むなど優遇されているために財務体質が改善した。2016年までは国交省の監視下に置かれて新規路線やM&Aが制限されている身なのに、スカイマークとの提携を許したら不公平極まりない」(ANA関係者)
共同運航に認可を与える国交省も、勝手に決められては困るとばかりに“おかんむり”。太田国交相は「厳しく査定する」と言及した。自民党の中には、民主党政権下のJALの破綻処理が甘すぎたと批判する議員も多く、スカイマークの再建計画の行方は選挙を前に「政争の具」にされそうな気配さえ漂う。
では、仮にJALとの提携話がなくなり、ANAがスカイマークのパートナーに躍り出たらどうなるのか。
航空経営研究所所長の赤井奉久氏は、「消費者のメリットはあまりないのでは」と話す。
「羽田の発着枠シェアはJALの39%に対してANAは37%と劣勢ですが、ANAと資本関係を持ち、共同運航もするエア・ドゥ、ソラシドエア、スターフライヤーを合わせると52%になります。ここにスカイマークの8%が加わると60%になり、ANAグループが一気に独占することになります。
JAL、ANAのどちらと組むにせよ、より市場支配力のある大きな会社と一緒にやれば、これまでスカイマークが低価格運賃で新たな需要を掘り起こしてきた“空の自由競争”はなくなり、規制緩和前に逆戻りするだけ。消費者にとってはあまり喜ばしいことではありません」(赤井氏)