11月10日は「トイレの日」。誰もが毎日お世話になるトイレですが、その機能は年々進化しています。今回は、特に介護の現場で役立っている画期的なトイレがあるというので、どんなものか実物を見てきました。
「介護なんてまだまだ先の話……」。そう感じている読者の方も多いでしょう。でも、今や日本人の4人に1人が65歳以上となり、今後も高齢化が進むと予想される超高齢社会となった現代。今は介護が身近でなくても、いずれ親や自分たちに必要となる可能性もあります。そんな今、介護の知識としてとらえておきたいことのひとつに、トイレの問題があります。
実は、在宅介護の現場ではトイレの介護が一番苦労するそう(下記調査参照)。入浴や食事は、介護する人が時間と回数をコントロールできますが、排泄に関しては、「時間が不規則」「回数が多い」「臭いや処理などが不快」という苦労がどうしても生じてしまいます。
介護保険制度における要介護認定では、「要支援1・2」「要介護1〜5」の7段階に分かれていますが、在宅介護は要介護3までの高齢者が中心となります。在宅で過ごす要介護者は自分で既存のトイレに行くか、部屋に置いたポータブルトイレを使うことになりますが、要介護2や3となると、家族などの介助が必要となってきます。
高齢者や要介護者の排泄回数は成人男性の2〜3倍になるというTOTOのモニター調査結果もあり、本人にも家族にも負担が大きいことがうかがえます。
既存のトイレを使う場合、移動時の転倒や冬場のヒートショック(空間の温度差による血圧の急激な変化)といった危険や、間に合わなくて失禁といった事態が起こる可能性もあります。
ポータブルトイレ(洋式便器型の移動簡易トイレ)を使う場合は、臭いが残ったり、後始末が1日何度も必要だったりするため、要介護者が「家族に申し訳ない」「見られたくない」と感じるなど、両者に精神的な負担も生じています。
そんな介護の現場に昨年(2013年9月)登場した画期的なトイレが、TOTOの『ベッドサイド水洗トイレ』です。
商品名からも分かる通り、ベッドのすぐ横で使える『ベッドサイド水洗トイレ』。その大きな特徴は次の通りです。
(1)水洗トイレなので、使用後は流すだけ
(2)床に固定しないため、「フレキシブルホース」の長さ2mの範囲内で移動できる
(3)ウォシュレット・暖房便座・脱臭機能付きで快適
一見すると通常のトイレが居室に設置されているという印象なので、「寝室に水洗トイレを設置するのって給排水工事がかなり大変なのでは?」という疑問を持つ人も多いかもしれませんが、施工は半日から1日で完了します。
施工をそれほど容易にしたのは、TOTOが10年以上を掛けて研究開発したという新技術「粉砕圧送ユニット」(下図参照)のおかげ。汚物を細かく砕き、圧力を掛けて排水管に送る仕組みによって、内径19mmという細い配管(フレキシブルホース)での排水が可能になりました。一般的なトイレの増設工事に3〜5日ほど掛かるのと比べると工事が短期なので、何日も部屋が使えないといった負担も少なくてすみます。
気になる費用は、メーカー希望小売価格52万8000円(税込57万240円)。別途かかる工事費は家の構造や設置場所によって開きがあります(木造軸組構造の家でおよそ10万〜15万円など)。マンションの場合でも、条件(共有部分の工事許可など)が合えば、設置は可能です。
手入れは一般のトイレと同じ。さらに、水に流せないものを落としてしまっても、異物を簡単に取り出せる仕組みになっているのも要注目。安心して使えます。
ベッドの横に水洗トイレがあると、要介護者や家族の暮らしはどう変わるのでしょうか。主なポイントは次の通り。要介護者や家族にとって、生活の質を高めることに繋がっています。
●要介護者
(1)いつでも自分でトイレに行けるので、家族に気兼ねする必要がなくなる
(2)「自力でトイレに」「頑張ろう」という前向きな気持ちになり、
生活動作の維持・向上に繋がりやすい
(3)トイレの回数を減らすために水分を控えなくても良くなる
(4)ポータブルトイレに比べて、臭いが籠らず部屋で快適に過ごせる
●家族・介助者
(1)トイレ介助の負担が減る
(2)ポータブルトイレの後始末の負担がなくなる
(3)要介護者の転倒やヒートショックなど健康被害に対しての不安が減る
超高齢社会となった現代の日本において革新的な設備である『ベッドサイド水洗トイレ』。その実物に触れてみて、「費用は掛かるものの、家族や自分が要介護者になったら必須の設備になる」と私は強く感じました。皆さんも、いずれ来るかもしれない介護生活に備えて、この快適な設備をぜひ知っておいてください。