参院本会議で25日、日本銀行政策委員会審議委員・原田泰氏の同意人事に関して、民主党・新緑風会の大久保勉議員が反対討論を行い、3点にわたって反対理由を表明した。

 大久保議員は冒頭、今回の同意人事に関連して政府への苦言として、日銀審議委員の同意人事は政府から2月4日の議院運営委理事会に提示される予定だったが、理事会に先立ち日経新聞が「日銀審議委員に原田氏を起用へ」と朝刊で報じたことに言及。「政府の情報管理に大きな疑問符が付く」「政府の情報管理の不徹底は今回に限ったことではない」と批判するとともに、「安倍政権は、自分たちに都合の悪い情報は特定秘密保護法を盾にとり秘匿するが、先ずは政府内の関係者の情報管理の徹底が美しい国の政府のありようではないか」と批判した。

 そのうえで原田氏について、日銀による積極的な金融緩和の必要性を主張してきたリフレ派で、前述した岩田副総裁との共編著もあると説明したうえで、今回の同意人事に反対する理由の第1として、「日銀が国債を買えば政府債務を減らすことができる」と主張している点を問題視。「これは財政ファイナンスの容認ともとれる主張」だとした。「政府と日銀の統合バランスシートで見れば、日銀が国債を全部買えば、政府債務は日銀の資産だから、連結すれば相殺される。しかし日銀の負債、すなわち日銀券と準備預金という民間資産は相殺されない」「仮に今の日銀券を無効にしたり、準備預金を封鎖すれば、日銀の負債は消せる、それは民間銀行をはじめとする民間資産の全額毀損を意味する。そのことは『物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する』とい日銀の基本理念に反することは言うまでもない」と断じた。

 反対の理由の第2には「日銀が物価目標を達成して国債を買う量を減らせば、日銀が持っている国債価格も理論的には含み損を抱える。財務の健全性は大丈夫か」との記者の問いに、「日銀は国債を、コストをかけずにただで買っている。10兆円分の国債を購入して、仮に2割損しても、もうけは8兆円ある」との回答を本年1月に示した点も問題視。「複式簿記で日銀の会計処理を行えば、そのような打ち出の小槌的手法が不可能ことは明白だ」と述べ、こうした認識を踏まえ、日銀法第23条では「審議委員は、経済または金融に関して高い識見を有する者、その他の学識経験のある者のうちから任命されること」とされているが、安倍政権はどのような基準で候補者の選定を行っているかはなはだ疑問だと指摘した。

 第3には原田氏が著書で、国債価格の下落に関連して、「貸し出しをせず国債ばかりもっている銀行は、日本経済のためには役に立っていない銀行である。そのような銀行が破綻しても日本経済になんのマイナスにもならない。むしろ、このような銀行が破綻することこそが最大の構造改革である」と述べた点を問題視した。このような持論の持ち主が審議委員では、金融機構局の運営や金融システム安定に大きな障害をもたらすと危機感を示し、反対を表明した。

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