2014-12-18

内部留保についての誤解

企業内部留保についての話題が、はてブホッテントリに入った。

   日本共産党が信じて疑わない「大企業の内部留保」というトンデモ埋蔵金理論について

しかし、これはトンデモとも言えるような、勘違い理屈なので、指摘しておく。

 

どこがおかしいかというと、「ストックフローの違いを理解できていない」ということだ。

ストックとは、手持ちの金の残高。

フローとは、新たに入ってくる収入

この両者は、別のものだ。ところが、上記の記事では、両者が混同されている。

 

企業内部留保をどうこうする」という形で、「内部留保賃金に回す」というのは、ストックの話だ。しかし、ストック賃金に回すというのは、暴論であり、理屈になっていない。それはタコが自分の足を食いつぶすようなものだ。仮に「ストック賃金に回せ」という主張があるのならば、そのような主張は暴論であり、批判されるべきだろう。

そして、上記の批判記事は、この線に沿って主張している。

しかしながら、この批判記事は、「藁人形論法であるにすぎない。なぜなら、「ストック賃金に回せ」というような主張は、誰も述べていないからだ。(そう誤解されやすい主張を共産党は述べているが、そこにこだわるべきではない。妙に揚げ足取りをする必要はない。)

 

肝心なのは企業内部留保を積み立てている」というのは、「ストックではなくてフロー問題だ」ということだ。

これは次のことと同義だ。

企業労働分配率は、ここ数年、下がりっぱなしである

このことは、グラフでもすぐにわかる。たくさんのグラフがあるので、自分で見るといいだろう。

  労働分配率のグラフ(Google 画像一覧)

 

これを見ればわかるように、労働分配率は下がりっぱなしである

これをモデル的に言えば、こう言える。

「1年目には月給が 20万円だったのに、2年目は 19万円、3年目は18万円、4年目は17万円、5年目は16万円というふうに下がり続ける」

で、賃金が減った分だけ、企業の取り分は増える。しかも、企業は、それを設備投資に回さないで、自分で貯め込んでいる。

 

ここでは、企業内部留保が増えているが、内部留保が増えたこと(ストックが増えたこと)が問題なのではない。

本来労働者の分である金が、企業労働者の配分比率の変更によって、企業の側にまわっている」

ということが問題なのだ。つまり

労働者 → 企業

というフローが発生していることが問題なのだ

なぜなら、これは、一種の泥棒からだ。(賃金泥棒雇用者の強権によって賃金強奪する。)

 

結局、「企業内部留保が増えたことが問題だ」というのは、「企業ストックが増えたことが問題だ」ということではないし、「企業ストックを減らせ」ということでもない。

では何かというと、「労働者から企業へ」というフローが発生していることが問題なのだ。つまり泥棒行為が発生していることが問題なのだ。(企業にとっては内部留保の拡大だが、労働者にとっては賃下げ。)

 

この問題を、ストック問題として理解するのは、本質を見失っている。この問題あくまで、フロー問題なのだ。そして、フローの量を認識するためには、労働分配率という数字に着目するべきなのだ

 

  • そうそう。共産党も「内部留保○○円!」なんて絶対額で煽るんじゃなくて、増分をもとにきちんと議論してほしいんだよなあ。いやちゃんと赤旗の記事では説明してるのかもしれない...

  • 「企業の労働分配率は、ここ数年、下がりっぱなしである」 このことは、グラフでもすぐにわかる。たくさんのグラフがあるので、自分で見るといいだろう。 どれを見てもここ数年...

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