12月18日、神戸市の生田神社周辺に広がる生田遺跡の一角で、弥生時代から使われた住居や農耕の痕跡が見つかった。こちらでは今年10月、遺跡の北西部に当たるマンション建設予定地で、弥生時代の土坑や古墳時代の住居跡のほか、中世以降の耕作跡などが確認されたが、もし土地を造成したら遺跡が発掘され建築中止になった場合、どうすればよいか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
購入した土地に家を建てようとしたら、遺跡が発掘されました。役所に相談すると、研究チームが確認するまで保存してくださいとのこと。しかし、建築の予定を立てて生活設計をしているので困っています。このような事態の場合、資金的なことなど国や行政は助けてくれないのでしょうか。
【回答】
文化財保護法は、学術的価値がある遺跡を埋蔵文化財とし、保護しています。埋蔵文化財を包蔵していると周知されている土地を「周知の埋蔵文化財包蔵地」(以下「包蔵地」)といい、包蔵地での造成工事には事前届け出義務があり、役所は発掘調査などを指示できます。
そのため市町村は、包蔵地を周知させるよう努めなければならず、HPなどで公表している自治体もあります。ただ、新たな埋蔵文化財が発見されると変わるので、直接確認すべきです。
事前届け出後の試掘(確認調査)で重要な文化財が発見されると、記録保存のため発掘調査が必要になり、その間、工事の中止を命じられることがあります。包蔵地でない場合も、無届けで工事しても文化財を発見すると届け出が必要になり、包蔵地の場合と同様、工事中止を命じられる場合があります。文化財保護のため、やむを得ませんが、調査費用や工事中止の負担が大変です。
調査費用は、開発事業者負担と解されています。包蔵地内の土地の事件ですが、発掘調査を包蔵地に内在する公共の福祉による制約と解し、過大にならない限り、原因者である発掘者が負担すべきとする裁判例もあります。
ただし、個人住宅などの場合は、自治体で調査費を負担する扱いをしているところもあるようです。他方、工事中止による損失は、文化財保護法により国が補償しています。そこで役所と相談することをお勧めします。包蔵地外の場合、埋蔵文化財は土地の隠れた瑕疵と解され、売主に賠償請求できる余地があります。交渉してはいかがでしょうか。
なお、埋蔵文化財は仲介業者が重要事項として説明義務を負う法令上の制約に含まれていないので、不安がある場合には、購入時に確認を求めることも大切です。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録
※週刊ポスト2015年1月1・9日号