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プロレス×映画

プロレスを題材にした映画シリーズ:暗黒時代を乗り越えた今こそ観て欲しい『お父さんのバックドロップ』

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 巷では今プロレスがブームだそうですが、そこに至る"2000年代"は、プロレス界にとって暗黒時代でした。特に2004年頃は、プロレスリング・ノアやDRAGON GATEが好調だったものの、PRIDEを始めとする総合格闘技の絶頂期。さらにエンタメ性の強いWWEの人気が高まり、旧来のプロレスファンが国内プロレスに対する関心を失い始めた時期とされています。
 今日のブームを牽引する新日本プロレスに至っては、やることなすことスベり倒し、翌2005年には最初の身売りを経験し、リストラを含む選手大量離脱にも発展。盟主たる新日の凋落から堰を切ったように業界全体が暗黒時代へ......(この暗黒期を堪えた選手たちが今のブームの立役者なワケですが)。

 そんな2004年ですが、実はプロレスを題材にした映画のプチブーム期。以前ご紹介した『いかレスラー』を始め、女子プロが舞台の『ワイルド・フラワーズ』、中島らもの短編小説を原作にした『お父さんのバックドロップ』、橋本真也主演のドタバタ問題作『あゝ!一軒家プロレス』が相次いで劇場公開(一部は限定的規模)されたのでした。

 その中から今回ご紹介する作品『お父さんのバックドロップ』は、本作で劇場映画デビューした李闘士男監督(『デトロイト・メタル・シティ』ほか)による、1980年の大阪を舞台にした父子の絆再生ドラマ。

 弱小プロレス団体を率いる下田牛之助(宇梶剛士)は、息子・一雄(神木隆之介)との関係に悩む父でもあった。経営不振の団体ため、正統派からヒールに転向すると、久々の全国TV放送も実現。ところがビデオ録画(VHS)を頼まれたポンコツ祖父が、一雄にとって亡き母との思い出を遺した大事なビデオテープに上書き録画する大チョンボ! 完全にこじれてしまった息子との絆を取り戻すため、牛之助は一世一代の勝負に出る......というもの。

 ストーリー的にはヒネた展開抜きの、80年代の大阪カルチャーがほんのり味わえる浪花節コメディとなっており、そこに濃い目のキャスト陣が華を添えています。
 プロレスラーにしか見えない宇梶アニキや、ノンケの筆者もペロペロしちゃいたくなる神木少年に加え、ポンコツ祖父を演じた南方英二(チャンバラトリオ)師匠の"大阪のおっちゃん"振りは絶品。

 プロレスネタもベタ攻めで、ヒールになった牛之助は、上田馬之助風ではなく、グレート・カブキ(毒霧)meetsミスター・ポーゴ(鎖鎌)の趣。クライマックスの異種格闘技戦は、いわずもがな「猪木 vs. ウィリー・ウィリアムス」の再現(『ロッキー』風)です。

 実際の極真空手の世界ランク選手が出演したほか、劇中でライバル団体として登場する「大日本プロレス」も全面協力(※)。当時統括部長の登坂氏や伊東竜二、アブドーラ小林、関本大介など主力選手が多数出演したほか、宇梶アニキのプロレス特訓の場も提供しています。

 プロレスへの逆風が強くなり始めた頃の作品のため、市場在庫的に手軽に観られる作品ではありませんが、プロレスが持つ普遍的な感動と神木キュンの魅力が堪能出来る内容は、プロレスブーム再来で盛り上がる今こそ広く観て欲しい作品となっております。

(文/シングウヤスアキ)

※ 中盤の試合シーンは、大日本プロレスの通常の興行の合間に撮影したもので、当時筆者も観客としてたまたま観戦しており(WWEで一瞬活躍した片足のレスラー、ザック・ゴーウェンの試合がお目当て)、奇しくも撮影に参加したのは良い思い出です。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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