2015年3月28日@広島 CLUB QUATTRO

2015年3月28日@広島 CLUB QUATTRO

黒夢、ついに“最後のロング・ツアー
”が終幕に

黒夢が広島での振替公演終了をもって“最後のロング・ツアー”を完全遂行! そして、“終わりの終わり”の先にあるものとは?
去る2月9日、Zepp Nagoyaにて、昨年7月19日から継続されてきた“最後のロング・ツアー”の幕を閉じた黒夢。そのステージが実は悲壮感ではなく希望に満ちたものだったことについては、以前にもお伝えした通りだ。ただ、その時点で通算50本にも及ぶライヴを終えていた彼らではあるが、そこでツアー自体が完全に終了したわけではなかった。そう、当初、9月26日に組まれていた広島・BLUE LIVEでの公演は、清春の声帯炎症が回復に至らず、大事をとって延期措置となっていた。そして3月28日、会場を広島・CLUB QUATTROに変更して、その振替公演がついに実施されたのだ。

これが本当のツアー・ファイナル? そういった解釈も可能ではあるだろう。が、僕自身はどちらかというと、たくさんの印象深い名場面を生んだこのツアーにおいての“忘れ物”を取りに行くかのような感覚で広島へと向かった。これを観ずにいたら、必要なパズルのピースが足りないまま。まさにそんな気分だった。

そうした感覚には、この日の演奏メンバーの顔ぶれも少なからず影響していたかもしれない。この夜、清春と人時の脇を固めていたのは、前述の名古屋公演の時点で清春から「もはや3人目の黒夢!」と紹介されていたK-A-Z(g)、そして、今回のツアーにはずっと不参加だったGO(ds)である。かどしゅんたろう、katsuma(coldrain)、YOUTH-K!!!といったドラマーたちの献身的熱演によって支えられてきた今回のツアーではあるが、やはりGOが叩く黒夢を体感せずには終われない。そうした気持ちはオーディエンスのみならず、清春と人時、K-A-Zにも共通するものだったのではないだろうか。

この夜のライヴは「FAKE STAR」で幕を開け、そのまま「I HATE YOUR POP STAR LIFE」へと雪崩れ込むという、まるで《夢は鞭》と銘打たれていたツアー前半と、《毒と華》という言葉が掲げられていたツアー後半のライヴが合体したかのような展開で始まった。それから最後の最後、アンコールに次ぐアンコールの末の「Like@Angel」をもってすべての演奏が終わるまでの経過について、この場で詳しく記述するには無理があると言わざるを得ない。とにかく一瞬一瞬が印象的だった。惜しみなく全力のプレイをする4人には、向こう見ずな勢いというよりも、ひとつひとつの瞬間を慈しむような表情が浮かんでいた。フロアを埋め尽くした熱意に溢れたオーディエンスも、きっとそれを感じ取っていたことだろう。実際、そこに渦巻いていたのは、「今夜が暴れおさめだ!」というような凶暴な空気でも、「明日からしばらく黒夢が見られなくて寂しい」という絶望感でもなく、むしろ“愛に満ちた熱狂”だったように僕には感じられた。

そしてステージ上、清春の口から洩れた言葉に、僕はハッとさせられた。彼は、「《THE END》と同じ顔ぶれでこの場を迎えられて良かった」という意味合いのことを語ったのだ。改めて説明するまでもないはずだが、《THE END》とは、2009年1月29日に日本武道館で一夜限りのものとして行なわれた黒夢の復活公演のこと。正確には『黒夢“the end”~CORKSCREW A GO GO! FINAL~』であり、清春と人時は、黒夢ではなくkuroyumeとしてその日のステージに立っている。その時に彼らの援護射撃をしていたのが、他ならぬK-A-ZとGOだったのだ。

《THE END》は、前述の正式公演タイトルからも察しがつくように、かつて明快な幕切れの場面を持たずに終わった黒夢の歴史に、いわばケリをつけるためのもの。言い換えれば、“終わるための復活”だった。しかし結果、その先には、彼ら自身にも予測不能だった未来が続いていたわけである。そして、それから丸6年と2ヵ月を経て、彼らはこの広島での夜を迎えた。それは単純に『TOUR 2014-2015 BEFORE THE NEXT SLEEP VOL.1&2』の最終場面だっただけではなく、“終わり”から始まった時間経過の着地点でもあったということなのだ。

すべての演奏終了後、ステージ上の4人も、客席のオーディエンスも手を繋いで高く掲げ、笑顔でその着地点を迎えた。その瞬間は、悲しい結末へと向かう序章である“終わりの始まり”ではなく、いわば“終わりの終わり”だった。“次なる眠りの前に”という意味合いのツアー・タイトルがあらかじめ示唆していたように、これから黒夢はしばらく眠りにつくことになる。しかし“終わりの終わり”を経たうえでの眠りの先には、きっと彼ら自身がこれまでに味わったことのない、清々しい目ざめが待っているはずなのである。

TEXT:増田勇一
PHOTO:今井 俊彦

【セットリスト】

M1. FAKE STAR
M2. I HATE YOUR POPSTAR LIFE
M3. CLARITY
M4. A LULL IN THE RAIN
M5. heavenly
M6. LOVE ME DO
M7. Let’s Dance
M8. SOLITUDE
M9. 黒と影
M10. ゲルニカ
~BASS Solo~
M11. BARTER
M12. Starlet
M13. MAD FLAVOR
M14. MIND BREAKER
M15. C.Y.HEAD
M16. SICK
<ENCORE 1>
M17. ミザリー
M18. 優しい悲劇
M19. アロン
<ENCORE 2>
M20. ROCK’N’ROLL
M21. CANDY
M22. 後遺症
M23. KINGDOM
<ENCORE 3>
M24. FOR DEAR
M25. Miss Moonlight
M26. BEAMS

M27. Like@Angel
2015年3月28日@広島 CLUB QUATTRO
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OKMusic編集部

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