2012年末に打ち出されたアベノミクス以降、東京の都心部で、億単位で分譲される「プレミアム住宅」の売れ行きが好調だ。ただ、世界を見渡すと東京とは価格がケタ違いの豪邸が続々と売り出されている。その最前線を2回に分けて探訪してみよう。まずはNY・ロンドンから3物件紹介しよう。
※為替レート:1ドル118円 1ポンド181円で計算
ニューヨークのプレミアム不動産マーケットはリーマン・ショックからわずか半年で不動産価格が持ち直し、以降は安定して世界中から注目を浴びている。外国人もニューヨーク市民と同等の条件で購入でき、特別な税金がないことも人気の要因だ。実際、NYのトップブローカー、T・ガス氏は近年だけで120カ国以上のバイヤーと仕事をしたという。
マンハッタンの平均分譲価格は168万ドル超(約1億9800万円超。Elliman Report 3Q 2014 Manhattan Sales[LUXURY])。人気エリアはマンハッタン中心部のミッドタウン。他にハリウッド俳優や有名スポーツ選手、アーティストなどが暮らすトライベッカ、グラマシーパークなどの支持も根強い。
●The Centurion Condominium(センチュリオン・コンドミニアム)
物件DATA
2014年完成 価格:1680万ドル(約19億8240万円)
専有面積:約306.9m2 間取り:3LDK、ペントハウスほか
世界のプレミアム住戸に共通して言えるのは「ロケーション」の良さだ。具体的には、緑地や公園などが徒歩圏にありながら、地下鉄など公共交通機関が利用しやすく、商業施設までの距離も近い場所。つまり、自然に親しめる閑静な環境と生活利便性という相反する要素が共存するエリアだ。
ニューヨークにある「センチュリオン・コンドミニアム」も、セントラルパークまでわずか2ブロックの場所で、ラグジュアリーなホテルやブティックなどが連なる五番街もすぐそば。しかし1階のロビーに入ると、外の喧騒が嘘のような静けさだ。
総戸数48戸とNYのプレミアム住宅としては比較的小規模。ホテル、レストラン、スパなどの共用施設がないため基本的に建物に出入りするのは住人のみ。セキュリティ対策、プライバシー保護がしやすい点も特徴だ。
デザインはパリのルーヴル美術館のガラスピラミッド、フォーシーズンズホテルニューヨークなどを設計した建築家、I・M・ペイ。一般的に、建設コストを節約するために集合住宅の間取りの種類はある程度限定されるが、本物件は異なるタイプをふんだんに用意。しかも希望に応じて間取りをさらにカスタマイズできる。例えば上下の住戸を3つつなげてトリプルのペントハウス(最上階)とするプランなど、セレブの多様なニーズにもきっちり対応する。
ロンドンのプレミアム不動産マーケットは、海外バイヤーからの不動産投資の増加に住宅供給不足が重なり、価格は高騰。ロンドン全体では2013~2014年だけで13.2%も上昇したという。
プレミアム住宅が集まるケンジントン&チェルシー王立区の平均分譲価格は、106万ポンド超(約1億9200万円超。Land Registory 統計 2014年10月 戸建てを除く集合住宅全体の平均)。
昨今ではワンベッドルームで217万ポンド超(約4億円)の物件も登場した。2013年に商用ビルを住宅用途に変更できる特例が施行されて以来、海外から注がれる莫大な投資マネーが推進力となって、再開発プロジェクトが増加。オフィスビルや工場などがプレミアム住宅へ姿を変えるケースも見られる。
●One Hyde Park(ワン・ハイド・パーク)
物件DATA
2011年完成 価格(推定):360万~1億4000万ポンド(約6億5160万円~約253億4000万円)
専有面積:約90~2500m2 間取り:ワンベッドルーム~ペントハウス
世界のプレミアム住宅のもうひとつの共通項が「広さ」である。前述したようなロケーションの良いエリアは一般的に余裕がないことが多いが、プレミアム住宅はワンフロアの住戸数を少なくして1戸の専有面積を広く確保している。
ワン・ハイド・パークはロンドン中心部最大の緑のオアシス、ハイド・パークの真南に立つ。老舗百貨店のハロッズや有名ホテル、ブティックなども近い。
本物件は築約60年のオフィスビル数棟を取り壊し、再開発した全4棟、総戸数は86戸のプロジェクト。古い街並みを保存するため法令で建造物の建て直しを厳しく制限するロンドンでは珍しい、更地からの新築コンドミニアムだ。管理は遊歩道を挟んで隣り合うマンダリンオリエンタルホテルが担当する。
●Park Crescent(パーク・クレッセント)
物件DATA
2015年完成予定 価格(推定):315万ポンド(約5億7015万円)〜1000万ポンド(18億1000万円)
ロンドン北部の王立公園、リージェンツ・パークの緑と美しい草花、樹木に接しながら、市内有数の商業エリア、オクスフォード通りなど有名ブティックが並ぶ場所にも近い。
バッキンガム宮殿改築を手がけた建築家ジョン・ナッシュが、19世紀前半に在位した国王・ジョージ4世の命で建てた建造物「パーク・クレッセント」を内部改装するプロジェクトだ。正面のアーチ型部分とその裏の建物との3棟から構成され、15戸のみの限定分譲。政府の保存指定を受けた建物のため、外観の造作は変えずに修復作業のみを行い、内部は最先端の居住機能にリノベーションする。
驚くべき価格と、それにふさわしい品質を備えたNY、ロンドンのプレミアム住宅。しかしアジアも決して負けてはいない! 第2回ではシンガポール、そして我が国・東京の事例を紹介しよう。
取材協力
●ニューヨーク
コーディネーター/吉藤美智子
不動産エージェント/New York Residence, Inc.(www.nyr.com/) Mr. Thomas Guss
センチュリオン・コンドミニアム(www.centurioncondo.com/)
●ロンドン
コーディネーター/冨久岡ナヲ
ワン・ハイド・パーク(onehydepark.com/candyandcandy.com)
パーク・クレッセント(www.amazonproperty.com/)
※本記事は『都心に住む by SUUMO』2015年4月号に掲載した記事をSUUMOジャーナル用に再構成したものです