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連載今週の住活トピック
やまくみさん正方形
山本 久美子
2013年9月18日 (水)

注文住宅を建てた人の約40%が、200~300万円の減税を受けている

写真: iStock / thinkstock
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【今週の住活トピック】
「2012年度戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果を発表/一般社団法人住宅生産団体連合会

http://www.judanren.or.jp/activity/chosa/report03/2012chosa.html

住宅生産団体連合会は、「2012年度戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果を発表した。この調査は、三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)と地方都市圏(札幌市、仙台市、静岡市、広島市、福岡市)を対象エリアに、同連合会の会員である住宅メーカーの営業担当者が顧客実態について回答(有効回答4502件)したもの。そのなかから、住宅の優遇制度の利用状況に着目して、実態を見ていくことにしよう。

戸建ての注文住宅を建てた人は、住宅ローン減税で200~300万円未満の還付

2012年度の結果を見ると、世帯主の年齢は42.1歳、世帯人数は3.53人、世帯年収は810万円、自己資金は1443万円、建築費3054万円、住宅取得費(建築費と土地代の合計)は4188万円、住宅の延床面積は129㎡、建て替え率は32.9%というのが平均像だ。

さて、住宅を購入する際にはいくつかの減税制度がある。代表的な減税制度が「住宅ローン減税」だ。これはローンの一定額を限度に年末のローン残高の1%を10年間にわたって控除するというもの。2012年入居の場合は限度額が3000万円(最大控除額が300万円)、2013年入居の場合は限度額が2000万円(最大控除額が200万円)となる。

ただし、「長期優良住宅※」の場合は、住宅ローン減税のローン限度額が1000万円上乗せされる優遇措置があり、最大控除額は2012年入居の場合で400万円、2013年入居の場合で300万円に増える。今回調査した注文住宅の場合は、長期優良住宅の割合が高く、実に全体の63.7%が認定を受けている点が大きな特徴だ。
※長期優良住宅とは、法律に定められた、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられている優良な住宅のことで、構造躯体の劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性の性能が高いほか、居住環境や維持保全計画などへの配慮も求められる。

さらに、長期優良住宅であれば、住宅ローンを利用せずに現金で建てた場合でも減税制度があり、「投資減税型特別控除」といわれている。通常の住宅に比べて性能を強化するためにかかった費用に相当する額(限度額は500万円)の10%を、その年の所得税から控除するもの。最大控除額は50万円となる。また、1年で所得税から控除できなかった場合には、残りの額を翌年の所得税から控除できる。

注)これらの減税制度は平成29年まで利用でき、消費税率が8%または10%の場合はそれぞれ最大控除額が拡充されることになっている。

【図1】住宅減税の減税額

【図1】住宅減税の減税額(適用した住宅減税制度別)(出典:住宅生産団体連合会「2012年度戸建注文住宅の顧客実態調査」結果)

再び、調査結果に目を向けよう。適用した減税制度については、長期優良住宅の住宅ローン減税が61.6%と最も高く、次いで住宅ローン減税(一般住宅)が31.9%、投資減型税特別控除が5.9%となった。

具体的な減税額(還付予定の減税額を住宅メーカーが試算した額)は(図参照)、住宅ローン減税では、長期優良住宅の場合を含めて「200~300万円未満」の割合が最も高く、次いで「300~400万円未満」となっている。住宅ローンなどの借り入れがあった、と回答した人の平均借入額は3246万円だったので、2012年入居の最大控除額300万円(長期優良住宅は400万円)まで利用できた人が多かったということだろう。

意外に多いと感じる減税額だが、住宅減税の効果については、「住宅ローンの返済に充当」が最多の36.4%だった。

贈与では「住宅取得資金贈与非課税特例」の利用が圧倒的に多い

次に、住宅取得資金の贈与について見ていこう。
「贈与あり」の割合は、全体の17.9%。特に世帯主の年齢が若い層(20代後半~30代)では、4人に1人が贈与を受けていた。また、贈与ありと回答した人の贈与額の平均は1253万円だった。

贈与に関する特例制度の適用については、「住宅取得資金贈与非課税特例」が 81.7%で最も割合が高く、「相続時精算課税制度」は4.1%だった。また、「両方の制度併用」は7.1%、「特例適用なし」は4.3%となった。

さて、住宅取得資金の贈与では、「住宅取得資金贈与非課税特例※」が利用できる。これは、父母や祖父母から贈与を受けた場合、一定額までは非課税になる制度だ。一定額とは、贈与年と住宅によって異なる。2012年は1000万円(一定基準の省エネ・耐震住宅は1500万円)、2013年は700万円(同1200万円)。
※この制度は2014年まで利用でき、一定額は500万円(同1000万円)となる。

また、「相続時精算課税制度」は、65歳以上の父母から2500万円までの贈与を受けても贈与税がかからないもので、住宅取得資金の贈与に限っては親の年齢制限がなくなる。ただし、子どもが相続する際には、生前贈与分が相続財産と見なされるなど、利用するには注意点も多い。ちなみに、今後は相続税の課税が強化されるので、より注意が必要だ。

この2つの制度は併用することができるが、2012年度で併用した割合は7.1%で、相続時精算課税制度単独利用より多い。贈与の特例制度では、まずは「住宅取得資金贈与非課税特例」の利用を考えるというのが王道のようだ。

贈与にかかわる特例の効果については、「住宅取得が可能になった」が52.4%と最多で、次いで「ローンの返済が楽になった」35.3%、「購入時期が早まった」21.5%となっている。

調査結果を見る限りでは、戸建ての注文住宅の場合は、長期優良住宅の割合が高いことに表れているように、高い性能を持たせているため、建築費が高くなる傾向にある。したがって、自己資金や贈与額が多いとはいえ、住宅ローンの借入額が高くなり、減税効果も大きくなるという関係がある。つまり、どんな住宅でも調査結果並みの減税効果があるというわけではない。

また、住宅減税や特例制度を利用するには、住宅や利用する人に条件がある。どんな住宅でも誰でもが、恩恵を受けられるわけではない点を覚えておこう。

SUUMO注文住宅 相続税特集

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