住まいの雑学
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冨成 マサキ
2013年1月15日 (火)

住宅に結露は大敵。健康面でもマイナスが。ほんとはコワイ結露

住宅に結露は大敵。健康面でもマイナスが。ほんとはコワイ結露
Photo: Anthony Harvie / thinkstock

外気温が大幅に下がる冬は一年中でもっとも結露が発生しやすい時期だ。結露を放っておくと人間の健康にも害があるし、建物自体を傷める原因となる。結露は住まいにどんな悪影響があるのか。また結露を最小限に抑えるにはどうすればいいのか。建築士の資格を持ち、ホームインスペクションで床下から天井裏まで多くの家を診断している、さくら事務所の大久保新さんに聞いた。

急に温度が下がると空気中の水蒸気が水になる。これが結露

空気が冷たいものに触れて急に温度が下がると、それまで空気に含まれていた水蒸気が水となってその表面あらわれる。これが結露だ。
では、なぜ空気の温度が下がると結露が発生するのか。
「空気は温度が高いほど多くの水蒸気を含むことができます。空気を器に例えると、そこにためられる水の量は器が大きい(温度が高い)ほど多く、器が小さい(温度が低い)ほど少ない。ですから温度が下がって器が小さくなると、今まで入っていた水が溢れてしまうことがある。結露ができるのも、これと同じ仕組みです」(大久保新さん)

冬に結露が多いのは外気温の低さや換気が足りないことが原因

ではなぜ冬に結露がおきやすいのか。

その原因は外が寒く外壁や窓ガラスが冷たくなっている一方で、室内は暖かく空気中の水蒸気量が多いことだ。例えば冬は室内で水蒸気を発生するタイプの暖房器具を使う機会が多かったり、外気が乾燥するため加湿器を使う機会も多い。その結果、冬は室内の湿度が意外に高くなりやすいのだ。さらに冬は窓を閉め切っている時間が長く、換気の回数が少ないため室内に湿気がたまりやすい。これも結露しやすい原因といえる。

「平成15年以降に建てられた住宅は、24時間換気が一般的に採用されているので結露しにくいと言えます。もちろんこれ以前に建てられたものでも、換気を十分に考慮したものもありますが、結露のできやすさを判断するひとつの目安になりますね」(大久保さん)
一般的にマンションのほうが一戸建てより気密性が高く、その分結露が生じやすいそうだ。

放置するとカビが生え、ぜん息など健康面でもリスクが高まる

では人間の健康への影響はどうか。

結露でぬれた壁や床などを放置しておくと、カビが生える。カビはさまざまな病気の原因になり健康面で住んでいる人に害をおよぼす。
例えばぜん息の主要な原因物質のひとつがこのカビだと言われている。そしてぜん息のもうひとつの主要な原因物質であるダニがこのカビをエサとしている。そのため、カビが増えればそれをエサとするダニも増えるという悪循環がおこる。つまり小さな子どもやお年寄りのいる家庭では、結露がぜん息のリスクをどんどん高くしていくわけだ。

また最近ではカビの一種・トリコスポロンが引き起こす『夏型過敏性肺炎』や、カビをえさとして大量発生したコナヒョウヒダニが原因で起こる『パンケーキ症候群』など、あたらしい病気も報告されており(※1)、結露対策は健康面からもますます重要になってきている。

薄い合板はもちろん構造材も長いあいだ結露にさらされると強度が低下する

次は結露が建物に及ぼす影響だ。

結露によって長期間水分にさらされる状態は、木でできている部分の多い住宅にとっては大敵。
とくに薄い合板でできている押入の床などは、恒常的に結露にさらされると、紙のようにもろくなることがある。またRC造の住宅でもひび割れから水分が浸入すると同様の心配があるという。
「結露がおきること自体にあまり神経質になる必要はありませんが、目に見えない部分に長期間にわたって結露がおきると、やはり問題があります」(大久保さん)

また結露の起きやすい壁際には、100Vの家庭用電源ケーブルやインターネット用の通信ケーブルが走っていることがある。これらのケーブルは、被覆が傷つくなど小さなトラブルが発生しているところに結露があると漏電や火災などの大きな事故につながりかねない。

サッシまわりをまずチェック。北側の部屋、暖房していない部屋も注意

マンションと一戸建てで、それぞれ結露がおきやすい場所をまとめてみた。

マンション
(1)サッシまわり
(2)北側の壁
(3)暖房していない部屋

一戸建て
(1)サッシまわり
(2)押入れの中
(3)全階の外気に接する壁
(4)1階の室内壁の床に近い部分

サッシ周辺はマンション、一戸建てともにもっとも結露ができやすい。これは先に説明した結露の仕組みを考えれば分かりやすい。窓ガラスやサッシ周辺に生じた結露は目につきやすいので、結露が生じたらこまめに拭いてやればいい。
「窓ガラスで生じた結露がサッシの隙間から壁の内部に浸入して問題がおきることがあります。あるお宅で上の階から水漏れがあると相談があって伺ってみると、上の階のサッシまわりから結露で生じた水が浸入、階下にしみだしていたというケースがありました」(大久保さん)

さきにも触れたようにマンションは一戸建てにくらべて結露しやすいが、外気に接する壁のうちとくに北側が結露しやすいので注意が必要だ。また暖房していない部屋はリビングなどで暖められ湿気を含んだ空気が流れ込むと結露を生じやすい。こうした部屋のタンスの裏側などは結露が放置されやすいのでこまめにチェックしたい。

在来工法の一戸建てでは外気が入り込みやすい1階を重点的にチェック

一戸建ては外気に直接面する部分が多いだけでなく、工法によっては床下や壁の中にも外気が流れ込むことがあるので結露が生じやすい。
「一戸建てでも築年数が比較的古い一戸建ては気密性が低く結露しにくいと言われていますが、仕様によっては結露しやすい場合もあります。結露しやすいのは軸組構造のいわゆる在来工法のものです」(大久保さん)
在来工法の場合、壁の中や床下の断熱材の入れ方によっては、外気に触れていない壁でも結露が生じやすい部分ができる可能性があるので注意が必要だという。

「築20年以上たった住宅などでは床下から1階の壁の中に外気が流れ込む構造のものがあります。この場合は壁が室内にあっても床に近い部分が冷やされて結露しやすくなります。このような部分がタンスの裏側になっていると結露が生じても見つけにくいですね」(大久保さん)
一戸建てでは、このほか外に面している壁や、押入れ、物入れの中、家具の裏などを細かくチェックしたい。

結露を予防するにはまず換気を十分に。換気機能はこうしてチェック

結露を予防する方法はあるのか。

「平成15年以降に建てられたマンションの場合、24時間換気がきちんと機能していれば、まず問題になるほどの結露はおきないと思います」(大久保さん)
換気機能をチェックするには、まず窓のサッシをすべて閉め、次に各部屋やキッチンにある給気口をすべて閉める。そして換気扇を最強にし、1分ほど待ったあと玄関ドアを開けてみる。このときいつもよりちょっと重いなと感じるもののドアが簡単に開いてしまう場合は換気機能が適切でない可能性が高い。どこかに想定外の隙間があり、そこから外気が入ってきているのだ。
逆にドアが異常に重くて、非力な女性ではドアが開けられない場合は、正常に機能している証拠だ。このチェックをすると、まれにサッシからヒューヒュー音がする場合があるが、これは問題ないそうだ。

一戸建ては暖房器具の見直しで空気中の水蒸気量をコントロール

マンションにくらべて気密性の低い一戸建てでは24時間換気が機能していても換気が計画的に実施できていない場合もある。古い住宅ではなおさらだ。やはり定期的に窓を開けて換気を十分に行うことが大切だ。
「現在の一般的な仕様の建物は普通に暮らしていても結露はするものと考えたほうがいいですね。早めに見つけてきちんと拭くという基本的な対処が大事です。結露の量を少しでも減らしたい場合は、石油ストーブやガスストーブなど、燃焼させると水蒸気がでるタイプの暖房機をやめると効果がある場合もあります」(大久保さん)
冬は空気が乾燥するからと加湿器を利用することも多いが、加湿器の使用をやめたら結露がなくなったというケースも少なくないという。

放置しておくと人間の健康に害をおよぼしたり、建物を傷める結露。雪の多い地方をのぞけば、冬の外気はたしかに湿度が低い。そのため室内の空気も乾いていると錯覚しがちだ。だが室内の空気は意外に湿度が高く結露が起きる。結露を防ぐにはまず、こまめに換気することが重要だ。それで結露が気になる場合は、暖房器具をかえるとか、加湿器をとめるなど、ちょっと暮らし方を見直してみるのもいい。

■参考資料
※1 本当は怖い!?カビの真実 NHK あさイチ
HP:http://www.nhk.or.jp/asaichi/2011/06/22/01.html
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