増え続ける「空き家」と、高齢化し減少していく「人口」。特に地方は今、厳しい状況に直面している。地元の課題、特に住まいの問題について、地方銀行はどのように取り組んでいるのか。今回は秋田銀行と足利銀行の取り組みを紹介しよう。
長年、過疎化に悩まされてきた秋田県。その秋田県を地盤とする秋田銀行が、2014年6月に扱いはじめたのが、「空き家解体ローン」だ。空き家を解体するためのローンは、日本初の商品だという。
「秋田県は少子高齢化が進んでいるということに加え、日本有数の豪雪地帯を抱えており、老朽化した空き家を放置すると積雪で倒壊して危険、という事情があります。そのため、地元自治体から空き家解体のためになんとか有効な対策を打てないかという話があり、ネックとなっている解体時費用をローン商品とすることとなりました」と話すのはリテール営業部の石塚智之さん。
この「空き家解体ローン」の特徴は低利(年2.00% ※自治体の補助金を受ける場合はさらに0.3%引き下げ)であることに加えて、利用対象年齢を拡大(完済時満80歳以下なら可)、年金受給者でも利用できることだ。「今、現在、50代60代の世帯主が自分たちの世代で、家の先行きを決めておきたい、という意向が強い」(石塚さん)というユーザーの思いを汲み取った商品になっている。
この「空き家解体ローン」に加え、各自治体の「空き家解体事業補助金制度」をあわせて利用すれば、おおよそ100〜200万円程度と言われている解体費用も捻出しやすくなり、空き家撤去もしやすくなる。それだけに取り扱い開始後の反響は大きく、当初想定していた“首都圏や仙台エリア在住、秋田の実家が空き家になっている人”というターゲットだけでなく、秋田県内外、まったく関係のないエリアの人からも問い合わせがあったという。
「秋田だけでなく、今、日本全国の地方で起きている問題だと捉えています」と石塚さんは分析している。ただ、秋田銀行としては、積極的に「空き家解体ローン」だけを展開する予定ではないという。「この商品を利用する方には、建物を解体する前に必ず、解体後の土地活用プランをお聞きするようにしています。土地を売却するのか、収益物件を建てるのかなど、あくまでも不動産活用のサイクルを補う、または手助けする商品という位置づけです」と話す。
なるほど、あくまでも空き家解体ローンは「サブツール」であり、メインは「不動産の取引や活用のサイクルにのせる」というところなのかもしれない。
「当行は秋田移住定住総合支援センターなどとも連携していますが、最近では秋田へ移住し、古民家をリフォームして住みたいという人もいらっしゃいます。市街地中心部への住み替えの資金相談も承っていますし、こうした秋田の街のニーズに合わせた展開をしていきたいですね」という。
一方、栃木県を中心とした自治体と連携し、「定住応援住宅ローン」を打ち出しているのが、足利銀行だ。宇都宮市など現在、栃木県を中心とした10の市町と連携し、同行の住宅ローンを利用して定住する場合は、店頭金利より1.75%を優遇している。
「当行定住応援ローンは、地方自治体の取り組みを知ってもらう、という意味合いが強いのです。そもそも地方自治体では個別に補助金などを出していらっしゃいますが、こうした情報はなかなかユーザーに届いていません。そこで当行を情報発信源として利用していただき、少しでも自治体の取り組みにふれ、栃木に住む人が増えてくれたらうれしい」足利銀行の地域振興部の田中徹さん。また、2014年度は10自治体だったが、15年度から加わる自治体も増える見込みだとのこと。
今回は紹介しきれなかったが、ほかにも地域の課題やニーズに即して、独自の展開をしている地方銀行や信用組合はたくさんある。地方を取り組まく環境は厳しいが、それでも独自の施策を模索している段階なのだろう。これからも、地方自治体や地方銀行の独自の取り組みに期待したい。