社会問題として注目を集めながら、なかなか解消しない待機児童問題。そんななか、2014年春、待機児童ゼロを発表したのが千葉市だ。では、どのようにして待機児童ゼロを実現したのか。その取り組みについて聞いた。
子育てしながら働きたいと考えている女性や家族にとって、我が子を保育園に入れられるかどうかは、切実な悩みのひとつ。ベッドタウンとして発展してきた千葉市でも、待機児童は問題となっており、長年対策が続けられてきたが、なかなか解消しなかった。しかし2014年、ついに待機児童ゼロを達成。これは、2つの施策が奏功した結果だという。
「ひとつは、効率的な保育施設の整備です。若い世代が多く生活し、保育ニーズのあるエリアに集中的に保育園を開設するだけでなく、既存の保育所の定員増を進めるなどしました」と解説してくれたのは、千葉市こども未来局こども未来部保育運営課の岡崎さん。昨年だけで8施設が新規開設したほか、4施設で定員を増やした結果、2013年よりも360名ほど多く子どもを受け入られる体制となった。
しかし、千葉市の資料によると、入所希望者は2013年よりも880名ほど増え、1万3588名の入所申し込みがあった。保育園の受け皿を増やせども、それを上回る勢いで入所希望者が増えているためで、これだけでも待機児童対策の難しさがよく分かる。が、そこを解消したのが、千葉市独自のソフト面での対策だ。
上の図を見ても分かる通り、保育園の入所希望者に対し定員のほうが少ないため、すべての子どもが認可保育園に入れるわけではない。つまり、希望の保育園に入所できなかった子どもが出るわけだが、千葉市はこの家庭に対して徹底してヒアリングを行い、親の通勤ルートや交通手段をともに考え、自宅からはやや遠いものの、通勤途中にある保育所などを紹介。
また、認可外の「千葉市保育ルーム」や、認可保育所と同等の基準を満たした「先取りプロジェクト認定保育施設」などとマッチングさせるなど、地道に受け入れ先を探していった結果、「待機児童ゼロ」を達成したわけだ。
「入所事務を所管する各区役所職員と本庁の保育所担当職員が一体となり、いったん入所不承諾となった児童1人1人について、家庭の状況や入所申し込み状況を詳細に把握し、3月末ぎりぎりまで徹底した入所あっせん・調整を行いました。ここまで徹底したあっせん・調整は千葉市独自だと思います」(岡崎さん)という。
こうして子どもの預入先が見つかった家庭からは、「助かった」という声が寄せられているという。
千葉市では、こうした保護者の相談&情報提供を行う「千葉市子育て支援コンシェルジュ」を今後、さらに充実させていく方向で、今年度から全区に配置する予定だという。
さらに、千葉市独自の試みとして、一般的に保育園への入所が難しいといわれる“親の求職活動が理由で保育園の入所待ち”となっている家庭に対しての補助制度をスタートさせる。これは、「先取りプロジェクト認定保育施設」や「千葉市保育ルーム」を利用する際の保育料と、認可保育園の保育料の差額相当分を補助するもので、求職活動中の家庭でも、経済的な負担が重くならないよう配慮されている。
ただ、今年は待機児童ゼロを達成した千葉市だが、来年以降については楽観視しておらず、「市としては、今後も保育需要が増えると見込んでおり、保育園の開設も予定しています。引き続き、保育の必要な方が必要なサービスを受けられるよう、ハード、ソフトの両面から取り組みを進めていきたい」(岡崎さん)という。
「待機児童ゼロ」という自治体はまだ少ないが、千葉市のように真摯に取り組んでいるところも多い。街選びの際には、ぜひ行政の取り組みについても注目してみてほしい。