2013/07/10 00:00

カタカナ表記の”キドリキドリ”から英語表記へと名前を変え、6曲入りのミニ・アルバムをリリースしたKidori Kidori。スペイン語で「最初の◯◯」を意味した1stアルバム『El Primero』と2ndアルバム『La Primera』の2作品を経て、今回の作品はスペイン語で「白い◯◯」を意味する『El Blanco』。名前を改め、真っ白なキャンパスに彼らはどんな音を描くのか。振り幅全開の充実した6曲を収録した意欲作だ。


Kidori Kidori / El Blanco
【価格】
mp3 単曲 200円 / まとめ購入 1,200円
wav 単曲 220円 / まとめ購入 1,320円

【Track List】
1. Watch Out!!! / 2. Silly / 3. Paperhouse / 4. Mourning In The Morning / 5. ◯◯病院 / 6. I Laid Down

バージョン・アップされたKidori Kidoriの名刺がわりとなる1枚

このミニ・アルバムが告知された6月6日、キドリキドリは名前を変えた。カタカナ表記からアルファベットのKidori Kidoriへ。一見マイナー・チェンジだが、バンド自ら「基本は同じです。ただ、内に秘めたる炎(中略)それがより増した状態にある」(注1)と綴っているように、一段上のフェーズへと向かう決意の現れでもあるようだ。間違いなく、今のKidori Kidoriは新たな創作へ飢えている。

Kidori Kidori (キドリキドリ)「Watch Out!!!」
Kidori Kidori (キドリキドリ)「Watch Out!!!」

その意味で、今作はバージョン・アップされた彼らの名刺がわりとなる1枚だろう。前半3曲にはバンドの持つサーカスティックな攻撃性や、闇の奥へ進んでいく ようなディープなサウンド志向が現れている。エキセントリックな迫力が初期On-Uやマーク・スチュアート一派を思わせるスカ「Watch Out!!!」に、勢いのあるパンク・ソング「Silly」。背筋を凍らす呪術的なダブ「Paperhouse」は新境地だ。また、鼓膜にドスンとくるインパクトは過去最大にもかかわらず、音の抜き差しでサウンドに隙間を作っているアンサンブルは、実にダンサブル。このあたりは、ミックスとマスタリングを手がけた、BOOM BOOM SATELLITESやLITEでおなじみ三浦カオルの貢献もあるのだろうか。

後半はロック・クラブのアンセムになるかもしれないポップ・チューン「Mourning In The Morning」で幕を開ける。さらに続くのは、ビーチ・ボーイズ風のコーラスもファンな日本語詞の「◯◯病院」だ。この2つは前3曲とはうってかわり、バンドの快活な魅力とポップ・センスの妙を伝えてくれる。そして、ボーカルのマッシュが愛犬を看取った聖夜をモチーフに、感情を静かに掘り進めていくミッドテンポ・ナンバー「I Laid Down」で幕を閉じる。

左から ンヌゥ(Ba)、マッシュ(Vo、Gt)、川元直樹(Dr)

前作 『La Primera』は、原発や教育など社会への疑問をパラノイアックな疾走感に託したロック・アルバムだった。それと比較して、今回のミニ・アルバムは、前作が引き起こした波紋へのアンサーを含みつつ、言葉とサウンド双方において、もっとカジュアルで余裕がある。怒りはあれど、表現には皮肉や洒落がきいており、最後にはパーソナルな心情さえさらりと紡いでしまう。キドリキドリと比較して、Kidori Kidoriの懐は深い。そのなかでリスナーは悪戯にダンスしたり一緒に歌ったりできる。あなたが飛び込める隙間も、今作のなかにきっとある。(text by 田中亮太)

注1 : バンドの6月6日付けブログより
http://blog.livedoor.jp/kidorix2/archives/53959148.html

過去作はこちら

キドリキドリ / La Primera

リバイバルでなく本物の2010年代の音を鳴らす、大阪在住スリーピース・バンド。1stアルバム『El Primero』がロングセールスを続ける中、一年という短いスパンで放つ本作は、前作以上にエッジのきいた10曲を収録。

>>特集ページはこちら

キドリキドリ / El Primero

さようなら洋楽コンプレックス。21歳達(帰国子女、オタク、好青年)が鳴らす、本物以上に本物のロック。

LIVE INFORMATION

2013年7月12日(金) @新宿 MARZ
2013年7月13日(土) @つくば市豊里ゆかりの森野外ステージ GFB'13 (つくばロックフェス)
2013年7月14日(日) @新代田 FEVER
2013年8月31日(土) @泉大津フェニックス RUSH BALL 15th
2013年9月7日(土) @川崎市 東扇島東公園 BAYCAMP 2013

Kidori Kidori "El Blanco" Release Tour

2013年8月4日(日) @京都 nano
2013年8月9日(金) @神戸 VARIT.
2013年8月18日(日) @新潟 CLUB RIVERST
2013年8月19日(月) @金沢 van van V4
2013年9月6日(金) @仙台 PARK SQUARE
2013年9月16日(月) @広島 4.14
2013年9月17日(火) @福岡 Utero
2013年9月20日(金) @渋谷 O-nest
2013年9月21日(土) @名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
2013年9月23日(月) @梅田 Shangri-La [FINAL]

Livemasters CHOICE × HighApps "QUATTRO HEAT UP TOUR 2013"

2013年8月24日(土) @渋谷 CLUB QUATTRO
2013年8月27日(火) @梅田 CLUB QUATTRO
2013年8月28日(水) @名古屋 CULB QUATTRO

PROFILE

Kidori Kidori

主に大阪で活動する、全員23歳のスリーピース・バンド。2008年3月、小学生来の幼馴染、マッシュ(Vo、Gt)とンヌゥは(Ba) 偶然同じ大学に進学し、久々に再会。キドリキドリを結成する。バンド名の由来は村上春樹の著書「ねじまき鳥クロニクル」から。その後ドラムがなかなか見つからなかったが、同じく小学生来の幼馴染で、ドラムに興味があった川元直樹(Dr)が加入。同年9月より本格的に活動を始める。マッシュがイギリスからの帰国子女ということもあり、楽曲は基本的に英詞。00年以降のUKロックや90年代のUSインディからの影響を主軸に、ジャズ、パンク、ファンク、ワールドなどの要素もとりいれながら、独自の感覚でアウトプットされた楽曲は唯一無二。

>> Kidori Kidori official website

この記事の筆者

[レヴュー] Kidori Kidori

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