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「就活アウトロー採用」今年は41人に内定! 「コミュ障」も受け入れるカオスな場を提供

没個性的なリクルートスーツや盛りまくった自己PRなど、従来の就職活動に違和感を持ちドロップアウトした若者を対象にした就職サービス、「就活アウトロー採用」の結果報告会が3月24日、東京・目黒で開催された。

アウトロー採用は、「NEET株式会社」などを手がけてきた慶応義塾大学特任助教の若新雄純氏が企画。NPO法人のキャリア解放区が運営している。同法人では同時期に、自意識過剰な若者を対象にした姉妹サービス「ナルシスト採用」も実施。昨年5月からワークショップや企業とのマッチングイベントを開催してきた。

参加者と企業の「フラットなコミュニケーション」心がける

NPO法人キャリア解放区の納富順一代表。

NPO法人キャリア解放区の納富順一代表。

報告会ではキャリア解放区の納富順一代表が、従来の就職活動の問題点を指摘した。対等であるべき企業と採用者が強い上下関係になっているうえ、リクナビなどのナビサイトの登場で、大量の情報が一方通行で就活生の側に流れて込んでいる状態だという。

「しかし学生は大量の情報を消化しきれず、結果として就活のテンプレ化やマニュアル化が進んでかえって息苦しくなっているのが現状です」

アウトロー採用ではそうした点を踏まえ、参加者と企業の「フラットなコミュニケーション」を重視。参加者と企業の担当者は互いに大学名や企業名を出さずに交流し、そこで仲良くなれば選考に進む、というのが流れだ。

アウトロー採用とナルシスト採用には募集開始当初330人のエントリーがあり、そのうち実際に参加したのは100人だった。それでも最終的に10社から41人に内定が出たのだから、就活サービスとしてはかなり高い割合ではないだろうか。

「アウトロー採用では、就活の指導をする人もいません。企業名も出さないので『ブラック企業に連れて行かれるのでは』と不安になる人もいる。正解のないカオスなコミュニティは人によっては苦痛なようで、最終的に3分の1になりました」

納富代表は参加者の印象について「『アウトロー』と銘打っていたけど、実際は真面目で不器用な人が多い」と語る。平均年齢は24.5歳。就職活動で自分のESを盛ったりすることに抵抗を感じながらも、自分と社会の距離感を冷静に把握している人が少なくなかった。一方で、「働きたい」という意欲は強い傾向があり、それが高い内定率につながったようだ。

参加者「面白い人が多くて楽しかった」

プロデューサーの若新雄順氏。

プロデューサーの若新雄順氏。

プロデューサーの若新氏は、アウトロー採用の思想的背景を説明する。現在の就職のコミュニケーションは無機質で不自然なものになっているが、「どんなに時代が変わっても、社会は人との関わり合いということは変わらない。仕事もキャリアも人との関わり合いを取り戻すことが重要」と話す。

「ただ、真っ向から大きな勢力に挑むのは難しいので、正規な戦い方はしません。ゲリラ戦の方が必要としている若者に必要なサービスを提供できる。ゲリラ戦を極めて、安心して自分を解放できる、やわらかいカオスな場を作っていきたい」

実際にアウトロー採用に参加した若者も登壇した。屋外広告の施工関連サービスを提供するベンチャー企業のgCストーリーに内定したAさん(男性)は、高校を中退し、現在通信制大学の4年生。「履歴書がぐちゃぐちゃ」と就職に悩んでいたところ、アウトロー採用に出会った。

若新氏と4人の参加者。

若新氏と4人の参加者。

自称「コミュニケーション障害」のBさん(女性)は、人材ベンチャーのアドヴァンテージに決まった。元々大学院の博士課程に進学予定だったが、事情があり断念。就活時期も逃してしまった。ハローワークに行くと「弱者」扱いされ、心理カウンセラーを紹介されて困惑したという。しかしアウトロー採用は「とても居心地がよかった」と語る。

「元々友達が少なかったけど、アウトロー採用では面白い人が多くて楽しかった。カオスで正解がない場だからこそ、色々考えることもできた。面接では素直に『自分に自信が欲しい』と話して、受け入れてくれる企業に決めました」

同じくアドヴァンテージ社に決まったCさん(男性)も、20代を社会運動に費やした異色の経歴の持ち主だ。Bさん同様に、「参加して友達ができたことが嬉しかった」と話していた。

アクセンチュア「新事業のチーム編成に多様性を重視」

左からgCストーリーの安部氏、アクセンチュアの坂本氏、キャリア解放区納富代表。

左からgCストーリーの安部氏、アクセンチュアの坂本氏、キャリア解放区納富代表。

一方で、冷静な参加者も。外資コンサルのアクセンチュアに決まったDさん(男性)は、大学卒業後は資格の勉強をしていたが挫折。グーグルで「就活 偏屈」というワードで検索したらアウトロー採用を見つけて応募した。内定は出たが「アウトロー採用がよかったのかどうかは、現時点ではまだわからない」と語る。

「これから働いて成果を出して、初めてアウトロー採用が方法論として正しいといえます。自分は形のある成果を出していきたい」

続いて、企業の担当者も登場。アウトロー採用から4人採用したアクセンチュアのシニア・マネジャー、坂本啓介氏はねらいをこう語る。

「インフラ・アウトソーシング事業を日本で立ち上げるにあたり、チームのパフォーマンス力を上げるために重視したのが多様性だった」

従来の新卒や第二新卒採用では同じような人を採用してしまう傾向があり、新しいタイプの人材を獲得するためアウトロー採用に参加した。人事を通さないため、雇用形態は契約社員になるが、正社員登用の道も用意されているという。

gCストーリーで人事をしている安部孝之氏は、マッチングイベントでのグループディスカッション(GD)が印象的だったという。

「あるテーマに対して包み隠さずに話すということに関しては、普通の新卒のGDよりもやりやすい。みんな『就活武装』しておらす、素直に話してくれた」

「普通の道」に疑問を持った人を社会とつなげていく

また、新卒のGDに企業の担当者が参加することはないが、アウトロー採用では意見を求められることもある。そのため「気合いを入れて参加しないといけなかった。普段の採用とは違う疲れ方をした」と振り返る。

今後もアウトロー採用を利用していく予定だといい、「既存の市場とは違うものを狙っていることを忘れずに、今回の経験は一回なしにしてまたフラットな姿勢で臨みたい」と話していた。

アウトロー採用は今春も、海外放浪や留学経験者向けの「アウトロー採用 旅人編」を実施している。報告会後、キャリア解放区の納富代表はキャリコネニュースの取材に対し、

「元々『弱者支援』ではなく、いわゆる『普通の道』に疑問を持ち、そこから外れてしまった人の方が面白い、という観点からやっています。マイナーでゲリラ的な要素を維持しながら、引き続きマニアックな人材を社会と結びつけ、新しい価値を創造していきたいと思います」

と話していた。

あわせて読みたい:ナルシスト採用、内定者第一号は「男の娘」

 

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