「従業員がお客さまを連れてくる世界へ」変革する送客の仕掛け人はネイリスト | 株式会社スピカ

「従業員がお客さまを連れてくる世界へ」変革する送客の仕掛け人はネイリスト | 株式会社スピカ

小田直美

小田直美

(編集部注*2015年6月26日に公開されたインタビュー記事を再編集したものです。)

ネイル写真の紐付け情報でネイリストも見つけることができる、ユーザー投稿型のWebサービス、『ネイルブック』。2015年6月現在のネイルブックのダウンロード数は100万回を超え、多数の女性向けファッション雑誌に取り上げられるほどの人気を誇ります。

しかし、サービスを立ち上げ当初の予算は人件費込みで80万円という、スモールビジネスからのスタートだったそうです。そこで今回は、ネイルブックの軸となった“B to E to C”というビジネスモデルと今後の展望について、スピカの代表取締役であり、エンジニアでもある國府田氏と、ディレクターの川端氏のお二人にお話を伺いました。

e1ac659002a624cb679944dc50679a7d 人物紹介:國府田 勲氏
横浜国立大学・大学院工学研究科を修了し、NTTに入社。NTTでは企業向けの商品企画およびSEを担当。その後、NTTレゾナントに移りポータルサイト「goo」で開発に従事。モバイル開発の株式会社ゆめみに入り、数千万人が利用する大規模システムのプロジェクトマネージャーや開発部門長などを経て2010年に取締役。担当していた新規事業部門を2014年4月にゆめみからスピンアウトして株式会社スピカを設立した。好きな言葉は「為せば成る」。
213a6154d08493b2556a8ee026abe80d 人物紹介:川端 綾子氏
ネイルブック起案者。株式会社ゆめみに在籍中、國府田と共に2011年新規事業開発室を立ち上げネイルブックをリリース。新会社設立後はディレクションだけでなく、営業や広報も担当する一児の母。好きな言葉「ピンチは最大のチャンス」。

4つ作った中で、一番よかったサービスを1つを残そう。社内の新規事業にちょっとチャレンジしようって、はじまった

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スピカは、もともとモバイルサービスの制作を手掛ける株式会社ゆめみから独立する形で設立された企業です。2010年12月にゆめみはB to Cサービスを作る新規事業の1つとして、ネイルブックというサービスの企画を立ち上げました。

國府田
ゆめみは、B to Bのシステム開発をずっとやってきました。なので、B to Cをいつかやりたいなって想いが長らく経営陣にあって。そろそろ機も熟したし「ちょっとチャレンジしてみるか」というのが、生まれたきっかけです。
それで「社内から1人、ディレクターにしたい人を選んでいいよ」と言われて、以前からセンスがあるなと思っていた川端とチームを組みました。それで、スピカの母体となる新規事業の開発チームができたんです。

「B to Cであれば、サービスの種類は問わなかった」という環境の中、自由にビジネスアイデアを膨らませていった國府田氏と川端氏。スマートフォン時代ならではの送客モデルを作りたいと考えた結果、“B to E to C”という領域を生み出し、ネイルブックの本格的なサービス化を決意します。

國府田
B to E to CのEは、エンプロイー(従業員)のEなんです。つまり、従業員が自分でスマートフォンを使って情報発信して、集客するようなサービスを作りたいと思いました。
このビジネスモデルが適応できそうな業界を調べてみると、一番チャンスがありそうだったのが美容業界。さらにリソースが少ない僕たちでもサービスを生み出せそうだったのが、ネイル業界でした。

こうして、ネイリストとユーザーの間に送客関係を作ることを目的としたネイルブックの開発がスタートします。しかし、このとき新規事業開発チームでは、他にも3つのサービスの開発がはじまっていました。

國府田
成功するサービスを作るには、やっぱりサービスを出し続けないといけない。とりあえず4つ作ってみて、その中でよかった1つを残そうと決めたんです。その1つ目のタイトルがネイルブックだったんですよね。
あまりの忙しさに、初年度はブーストさせる余地もなくて。だから、最初はそんなにダウンロードもされていませんでした。でも、あえて数値的な目標は設けなかったんです。代わりにもっていたKPIは、何回試行錯誤をしたか、PDCAサイクルを何回まわせたか。試行錯誤をすればしただけ、成功に近づくっていうのが僕たちのコンセプトでした。

80万円でサービスを作るって聞いて「できるわけないじゃん!」って。あるべき論とかはもう全部捨てた

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“試行錯誤をすればしただけ、成功に近づく”ことをコンセプトにしたサービス開発は、早いスピードでネイルブックというサービスを成長させました。しかし、新規サービスの立ち上げで社内から割り当てられた予算は、人件費込みで80万円だったそうです。

川端
衝撃的でした。そんなの聞いたことなかったですし。本当にお金が全然なくて、みんな「80万で、できるわけないじゃん!」って怒っていて(笑)そのときは他の部署でも新規事業の立ち上げをしていて、それ相応の予算をもらっていたのに「何で私たちだけ?」みたいな。

この他にも、収益源である本業の傍らでやっていたことから、開発の人員リソースにも影響があったそうです。

國府田
システム開発なんで、開発案件が行き詰まると「エンジニアを貸せ」みたいな話がくるんですよ。そうやって自分の開発メンバーを取られるたびに、スケジュールが遅れてリスケする事態が起こって。ネイルブックに集中してほしかったので、リソース要求されたら僕が行ったり、絶賛開発中のエンジニアには「何時から何時までだったらいいよ」ってお願いしたり。
最初に集まったメンバーって、僕以外は本格的なサービス開発をしたことがない。未経験者と新卒社員だけなんです。だから、あるべき論とかはもう全部捨てました。
代わりに、PDCAを小さく早く回すっていうテーマをチームで掲げていて。僕、ディレクター、エンジニアの3人で毎週ミーティングして、その中で優先するタスクを決めて、1週間に1回アプリ申請出すのをマストでやっていました。

最小限の予算とリソースに対して、國府田氏は「必要なものを見出すために、知恵を使って、余計なものは削ぎ落とすように」と考えたそうです。

川端
できることに制限があると、逆に動きは無駄がなくなっていったので、一歩ずつ着実に階段を上っている感覚はありました。あと、予算が少ないので國府田レベルで承認が下りちゃうんですよね。なので、逆に動きやすかったです。
サービスを作るために何が一番重要なのか、その過程で全て洗い出すことができたんだと思います。80万円だけの状況で、すごく大変な思いはしましたけど、結果的にはよかったのかな。

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「エンジニアに萌えるお姉さん」として年間3,000人が訪れるテック系イベントスペースを運営し、企業のファンづくりを務めた。2015年からフリーランス編集者。IT・Web系企業のPR・採用事情を取材している。

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