学生たちが提案した賃貸マンションのリフォームプランが、実際の賃貸物件として市場に供給されるというワクワクするプロジェクトが京都で進行中。最優秀作品の工事が完成したというので、早速現地を訪ねてみた。
学生が提案したリフォームアイデアが実際に賃貸物件に活かされて市場に供給される「StamP!」(Students try apartment making PROJECT)は、京都造形芸術大学と不動産管理会社・長栄とのコラボレーションによる産学協同プロジェクト。第8回目の最優秀作品である池田泰宏さんの「Accent Wall Shelf」(https://suumo.jp/journal/2014/11/12/73022/)が完成したというので、早速内覧会を訪ねてみた。
訪れたマンションは7階建ての大型物件で、施工された部屋は2LDK、約65 m2のファミリータイプ。自分の住みたい部屋のアイデアを学生が提案するコンペなので、ワンルームタイプなのだろうと思っていたが、それは勝手な思い込みだった。最優秀作品はファミリーやカップルでの暮らしにも対応できる提案内容で、リビングルームに設置するのがふさわしいという判断が行われたようだ。
部屋では提案者の池田さんがディスプレイのセッティングと、「作品」としての写真撮影を行っているところだったので話しをうかがってみた。
「Accent Wall Shelf」は、一枚の金属板を加工することで壁面に凹凸をつけ、光と影の造形美によって部屋に表情をもたらす、まさにアクセントをつけてくれるディスプレイ家具。
窓から差し込む日差しの角度によっても陰影が変化する。上部には照明が内蔵されているので、ライトのオンオフによっても表情の変化が楽しめる。またアクリル板は自由に移動させることができ、小物やアクセサリーなどを飾るシェルフとしての役割も果たしてくれる優れものだ。ただ、アイデアを実現するためには苦労もあったそう。
「鉄板をレーザーでくりぬき、曲げ加工を行って再び溶接するという非常に大変な作業なので、自分では難しく、予算内で受けていただける会社をみつけるまで苦労しました。コンペ時のサンプル制作の段階から1工程ずつ綿密に打ち合わせをしていただいたので、良い仕上がりになりました」と語る池田さん。
「卒業後は就職が決まっているのでまずは修行を積み、将来的には家具デザインの仕事をしたいと思っています。普通の家具だけではできない、トータルな空間づくりをできるようになりたい」とも語ってくれた。
こうして、プロジェクトの中から住宅やインテリアに関わる仕事に就く学生が誕生することは、学校や業界にとってもうれしいことだろう。
現在、「Stamp!」入賞作品では釣り好きのための部屋「Fishing Life」の工事も進められているほか、次回のコンペもすでにスタートしている。過去の入賞作品も人気が高かったようなので、早々に賃貸人が決まる可能性も高い。
賃貸マンションにも付加価値の高いプランが増えていく傾向にある昨今であるが、こういったリフォームコンテストなどを通じて、よりオリジナリティが高い部屋が増えていくのを期待したい。