冒頭の写真は、我が愛犬”ベス”ことエリザベス。この寝顔に癒やされ、また「ご主人様一途!」な健気さに感動させられたりと、ペットとの暮らしは心を豊かにしてくれます。そんなペットライフを賃貸でも満喫できる『ペット共生賃貸住宅』が増えてきたようです。
賃貸住宅の募集案内でよく見かける『ペット可』という文言。
「犬を集合住宅で飼いたい人に気をつけてもらいたいのが『ペット可』という物件。この場合、犬嫌いな人も住んでいるのでトラブルが多いのです」と、注意を促すのは愛犬家住宅の普及を推進している株式会社ワンオンワンの中嶋宏一社長。
空室対策として、途中から『ペット可』にしたような物件もあるため、鳴き声や足音など入居者間のトラブルが起こりやすいのだという。
そこで注目されているのが、建築前からペットライフを楽しむために企画された『ペット共生賃貸住宅』だ。
「動物が苦手な方は入居しないので安心。以前の隣人に「うるさい」と言われた鳴き声も、今度は「今日も元気に鳴いていたわよ!」と、愛犬家同士のコミュニケーションとなるのです」
そんな『ペット共生賃貸住宅』の事例をワンオンワン中嶋社長に紹介してもらった。
東京都板橋区にある「Stella Maris(ステラマリス)」は駅から徒歩3分という好立地にある、3階建てのペット共生賃貸マンション。実は音楽大学が近くにあるということで、楽器演奏もOK。
犬は他の犬の鳴き声に反応して吠えたりするので、防音仕様は有り難い。犬と楽器、”音”が意外な共通テーマなのだ。
ペット向けの住宅仕様で一般的な、滑り難くキズ汚れに強い床やコンセントが高い場所にある等の内装の他、こちらで目を引いたのは屋外の共有足洗いスペース。
更に細かい配慮で、共用廊下の曲がり角やエントランス周りにコーナーミラーが取り付けられている。
もう一軒は、宮崎県にある女性専用のペット共生賃貸住宅「PAPPY Heim(パピーハイム)」。
28m2のワンルームにロフトが付いた住戸には工夫がイッパイ。
床は30cm角のタイル張り。冬は床暖房で温かく、夏はヒンヤリ涼しいタイルはワンちゃんにも人にも快適。また、腰壁までタイルを張ることでキズや汚れを防ぐことができる。
その腰壁に開けられた、ペット用くぐり戸に注目!
くぐり戸は、バルコニーにある愛犬専用ルームにつながっている(画像5)。犬は天井の低い狭い空間が安心できるという習性を考慮したもの。
ウチのベスちゃんも、不安になると20cm高ほどの家具下隙間に入りこむんだよなぁ。この専用ルームはナイス・アイデア!
今回紹介して頂いたのは、愛犬家住宅コーディネーター(「一般社団法人愛犬家住宅協会」認定資格)が企画に関わった賃貸住宅。
その普及を推進している中嶋社長は「このようなペット共生賃貸住宅に、分譲マンションを売却して転居する方もいます」と、ニーズの高まりを感じているとのこと。一方で、賃貸住宅を経営するオーナーさんや入居者を募集する管理会社への啓蒙活動が、今後物件数を増やすための鍵となっているようだ。
大手住宅メーカー各社もペット共生賃貸住宅に力を入れている。
なかでも独自の研究を重ね、既に2000戸以上(約300棟、平成27年2月時点)のペット共生型賃貸住宅を供給しているヘーベルメゾン(旭化成ホームズ株式会社)の入居者サポートはスゴい。
まず募集時に、入居者およびペットを審査するシステム。ルールを守れそうにない飼い主は許可されないのだ。
入居後には、「+わん+にゃん倶楽部」というウェブサイトで情報交換を図りながら
しつけ教室などのイベントを開催してペットライフを支援すると共に、入居者たちのコミュニケーションも高めている。
ヘーベルメゾンの場合、企画・建築から入居者募集・審査・サポートまで全て自社グループで実施しているところが他には無い徹底ぶり。「ペットを飼う」のではなく「ペットと共に生きる」というポリシーの現れだ。
転居者が、新しい地域に馴染むのは簡単でない。そんなとき、犬がいれば散歩で顔を合わせ知り合う機会が生まれるもの。入れ替わりが多い賃貸住宅の住民こそ、ペットが家の内外で心の支えに必要だと思う。
今後は一人暮らしのシニアでも、安心してペットと暮らせる社会システムになればと願っている。