“リプロダクト家具”や“ジェネリック家具”という言葉を聞いたことがあるだろうか。かつて有名デザイナーがつくった家具を、現代版として復刻したものなのだが、こういった家具をネットで購入する人が増えているそう。
今回は、このリプロダクト家具について、All Aboutインテリア・建築デザインガイドの喜入(きいれ)時生さんに詳しい話を伺った。
まず、リプロダクト家具とは、どのような家具のことでしょうか。
「一般に意匠権の切れた家具を、できるだけ忠実に再現(リプロダクト)した製品です。日本ではいわゆる家具デザイナーや、建築家がデザインした有名な“デザイナーズ家具”を復刻したもののことを言います。ちなみに日本では意匠権は20年とされています。」
意匠権は、デザイナーの個性が表現されているデザインに適応され、大量生産が可能な工業製品のデザインを保護するためのもの。どんなものが有名なのでしょうか?
「日本の“デザイナーズ家具”の代表的なところでは、『チャールズ&レイ・イームズ』のシェルチェアや成型合板の椅子、建築家『ル・コルビュジエ』のソファーや椅子・テーブルなどです。特に20世紀中盤の、“ミッド・センチュリー”と呼ばれる時代のものや、北欧系のものなどが人気のようですね」
では、リプロダクト家具をネット通販などで購入する際の注意点は?
「あまりにも安いものには注意が必要です。例えば、コルビュジエのLC2というソファはオリジナルでは50万円以上。それが中国製で1万円台などでも販売されていますが、本皮ではなく合成皮革なので座り心地はまったく違います」
このソファは、リプロダクトでもイタリア製などは20万円前後で、ヨーロッパ製はほぼオリジナルに近い仕上がりのものもあるそうだ。素材はオリジナルとリプロダクト家具では異なることもあるのでチェックが必要だ。
「例えば、イームズの20世紀半ばに発表されたシェルチェアのオリジナルは繊維強化プラスチック製(FRP)のものですが、リプロダクトではさまざまな素材の樹脂製のものが多いようです」
ほかにも、ウェブサイトで購入する際の確認ポイントも教えていただいた。
「ウェブサイトでは、商品の各細部のアップ写真やサイズが掲載されているものなどが信頼できます。そして、ウェブサイトで販売されているリプロダクト椅子などは”完成品どうか”についても確認してください。組み立てに自信のない人は、組み立て済みのものを購入した方が安心です」
喜入さん曰く、リプロダクト家具の良さは“安価で手軽に購入できること”に尽きるという。しかし、意匠権の切れていない比較的最近の家具が売られている場合もあるそうなので注意も必要。オリジナルの良さを知ったうえで購入し、リプロダクト家具を楽しみたい。