一人暮らし向けの賃貸のお部屋のキッチンといえば、「狭い」「火力がもの足りない」「使いにくい」などと思われがち。今回は、そんなイメージを払拭するような理想の一人暮らし向け賃貸のキッチンを追求。「料理がしたくなる!」と大絶賛された様子を紹介しよう。
今回、「一人暮らし向け賃貸の理想のキッチン」のアイデア元になったのは、日本最大の料理レシピサイト「クックパッド」とリクルート住まいカンパニー「SUUMO」が、共同で行った「理想のキッチン」アンケート調査。先日、夫婦共働きの理想のキッチンの様子をお伝えしたが(https://suumo.jp/journal/2015/02/27/78747/)その一人暮らし×賃貸版というわけだ。
調査概要の詳細は前回に譲るとして、一人暮らしで賃貸物件に住んでいる人のなかでも、特に不満が多かったのは、「作業場のスペースがない」「キッチン全体のスペースが狭い」「シンクが狭い」「コンロの口数が少ない」といった点。また「食事をするミニカウンターが隣接しているといい」といった意見が寄せられていた。
今回はこうした不満を解消すべく、35m2の1DKの部屋を思い切ってリノベーション。企画・設計を担当してくれたのは、スターツCAMの佐藤秀和さんと、スターツアメニティーの坂倉史芳さんと菅谷幸一さん。
「限られたスペースをどこまで活用できるか。たどりついたのは、”フレキシブル”、つまり用途にあわせて兼用できるものは兼用するプランでした」(坂倉さん)。まず、ダイニングカウンターは調理作業と食事用テーブルを兼ねたカウンタータイプとし、フラップ式で拡張したり、収納できるように。またシンクはフタや中段を用途にあわせて動かせるので、食器洗いや、下ごしらえ、もしくはフタをしてしまうと、3通りの使い方が可能だ。フタがあることで、テーブルが完全にデスクにもなるし、何より見た目はすっきり&広々する。
「ダイニングカウンターは、調理作業のしやすさ、お手入れのしやすさはもちろんですが、食事をしていても違和感のないような質感も重視しました」(菅谷さん)という。確かに一人暮らし用賃貸のキッチンでよくあるステンレスではなく、白の人造大理石なので清潔感とぬくもりがあり、見た目にランチョンマットセッティングしても違和感がない
キッチンはフレキシブルなだけでなく、細部でも使いやすさを追求。まず、熱源には、希望の多かったガスコンロの3口タイプを採用。しかも壁に向かっているので、居室スペースへの油はねも起こりにくい。「キッチンの使いやすさと居住性を両立するため、ガスコンロを壁付けにする”Ⅱ型”にしようというのは、スタッフ全員一致の意見でした」(坂倉さん)という。
また、キッチン脇の壁はホーロー製のパネルのため、油汚れも落ちやすく、マグネットなどで簡単にフックがくっつく。天井のライティングレールにリーラーコンセントを設置すれば作業する場所に電源が確保できるし、照明からは音楽を流せるなどと、至れり尽くせりの設計だ。
気になる今回のキッチンリノベーションの費用だが、90万円ほどだという。「一人暮らし向け賃貸の場合、オーナーさんのキッチンに対しての優先度が低く、キッチンにここまでポイントを絞ってプランニングをしたことはありませんでした。そのため、今回のリノベーションは盛り上がってやりすぎてしまった、というのもあります(笑)」と坂倉さん。賃料にどこまで反映されるかは地域性ともからむため、不明瞭な部分もあるが、個人的には相場より高かったとしても、「この部屋に住みたい!」という人はいるだろうな、と思った。
「家飲み」や「おうちパーティー」が定着した今、一人暮らしのキッチンでも「きちんと料理したい」という需要は非常に根強いように思う。また筆者は個人的に、「この部屋は彼氏ができそう…」という印象を抱いた。というのも、「男をつかむなら胃袋をつかめ」は古今の鉄板ルール(なはず)。こんなキッチンのある部屋に暮らしていれば、自然と友だちが来る機会も増えるだろうし、人の輪から自然な出会いが生まれるのではないかな……、と推測。加えて、「賃貸×一人暮らし向けキッチンでも、ココまでできるんだ!」と、その可能性を実感する取材となった。