アメリカ・レコード協会(RIAA)が18日、2014年の音楽市場の売上データを公表しました。

2014年の市場価値は69億7000万ドル(約8432億円)。2013年から0.47%の微減でした。しかし昨年の大きな変化は、「音楽ストリーミングサービス」からの売上急成長でした。

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2014年の売上シェア別に見ると「デジタルダウンロード」は2013年の40%か37%、「フィジカル」は35%から32%にそれぞれダウン。一方で「音楽ストリーミング」は21%から27%と大きく躍進した年で、デジタル音楽の消費が徐々にダウンロードする「所有」モデルから、ストリーミング再生する「アクセス」モデルに変化しています。

音楽ストリーミングがCD売上を上回る

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ダウンロードや音楽ストリーミングを含むデジタル音楽の売上は、前年から1億4000万ドル(169億円)伸び、総額45億ドル(約5444億円)。2013年の43億7000万ドルから3.2%成長を記録しました。

CDやアナログレコードなどフィジカルの売上は5.9%減少し、21億3000万ドル(約2579億円)。

細かく見てみましょう。分野別で最も大きく成長したのは、音楽ストリーミングサービスからの売上。前年から29%成長して、18億7000万ドル(約2262億円)となりました。

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音楽ストリーミングサービスの分野では、SpotifyやBeats Musicなど月額料金を支払う「サブスクリプション」モデルのサービスにおける有料ユーザー数は150万人がプラスとなり総数770万人。売上高は2013年の6億3900万ドルから26%伸び、7億9900ドル(約969億円)まで成長しました。

またYouTubeやSpotifyのフリーバージョンなど「広告」モデルの音楽ストリーミングからの収益は34%アップ伸び、2億9500万ドル(約357億円)でした。

iTunesなどデジタルダウンロード売上は、8.7%と大きくダウンし、25億8000万ドル(約3125億円)でした。アルバムダウンロードは6.6%、トラック・ダウンロードは10.1%減少で、トラックの売上が急速に減少していることが分かります。

CD売上は12.3%の二桁減少で18億5000万ドル(約2240億円)。この結果、アメリカの音楽史上、初めて音楽ストリーミングの売上がCD売上を上回りました。

アナログレコード売上は、なんと50%増加! 3億1500万ドル(381億円)の売上高でした。アナログレコードはフィジカル音楽売上で14%の市場シェアを記録、これは1987年以降で初めて2桁のシェアを獲得した年となりました。全体の市場では4.5%のマーケットシェアでした。

約70億ドル(約8432億円)の市場価値となったアメリカの音楽市場ですが、ナップスターなどP2Pファイル共有システムが普及する以前の1999年に記録した146億ドルと比べて、約半分の規模です。

現状を見ると、音楽ストリーミングサービスからの収益が大きく、消費者の音楽の聴き方から、レコード会社など業界の収益モデルまでが、変わろうとしています。来年にはアメリカ全体でストリーミングの売上高が20億ドルが超える勢いで成長すれば、デジタルダウンロードを完全に抜き去ってしまうでしょう。

今年はメジャーなレコード会社だけでなく、インディーズレーベルやアーティストにとっても、この変化にどう対応するかが問われる年になりそうです。消費者が音楽ストリーミングを求めるようになればなる程、サービスの付加価値が問われます。価格帯やサービス形態、ロイヤリティ分配など、新しいモデルを一日でも早く作り、業界と消費者が音楽ビジネス市場を成長させられるか、アメリカのデジタル音楽が今年は大きな変革期を迎えています。

*1ドル=121円換算

ソース
RIAA(PDF)


Jay Kogami

執筆者:ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長、デジタル音楽ジャーナリスト)

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