(株)リクルートホールディングスは、住まい、飲食、美容などの8領域ごとに2015年のトレンド予測とトレンドを表すキーワードを発表した。住まい領域では、「リノベパーティ」をキーワードに挙げ、みんなで楽しく部屋をつくり上げる新しいスタイルが登場すると予測した。
SUUMO編集長池本洋一氏によると、Googleで検索されるワードで、「新築マンション」と「リノベーション」が今や拮抗状態になっているという。リクルート住まいカンパニーの調査(※)でも、住宅購入検討者では96%がリノベーションという言葉を知っており、言葉も内容も知っていて関心もある人はそのうち51%に達した(首都圏)。
※2014年「リノベーション・DIYに関する意識調査」
このようにリノベーションが市民権を得る一方、セルフリノベーション(DIY)も急速に普及している。先ほどの調査結果では、DIYという言葉を知っている人は90.7%、そのうち言葉も内容も知っていて関心もある人は52.4%だ。
これまでのリノベーションの潮流はプロ主導でデザイン重視のものだったが、これからは住まい手主導でプロセス重視のものがマーケットをけん引すると、池本氏は見ている。できることは自分たちで行い、友達とパーティー感覚で作業を楽しむ、いわば「リノベパーティ」を実践する事例が増えているからだという。
「SUUMO」のサイトにも、こうした事例の記事が掲載されている。
いずれの事例も、建築的な基本部分はプロがサポートしており、DIYの作業方法はワークショップを利用して学んだり、その場でプロの手ほどきを受けたりしている。だから友達が参加しても、どうしたらよいか分からないということがなく、多少失敗してもご愛嬌ということになる。
記事事例のリノベパーティに参加した知人のTさんは、自らも購入したマンションでリノベパーティを実践した。Facebookで呼びかけて集まった10人と土日の週末に壁塗りをして、その様子をFacebookで共有。パーティー参加者が次の主催者になるといった広がり方をする点も興味深い。自分が手を入れることの最大のメリットは、住まいへの愛着が増すことだと語っていた。
DIYは技術の習得や高度な道具が必要なイメージがあるが、DIY専用ショップや初心者に手ほどきする工房の登場が、セルフリノベを後押ししていると池本氏は指摘する。最近では、新築分譲住宅でも「90%引き渡し」で最後の仕上げを家族が行うといったものが出ているという。
また、借り手がDIYできる賃貸物件も増えている。賃貸の場合には退去時に、借りたときの状態に戻す「原状回復」の義務があるが、貸主が許容した範囲についてはその義務を負わなくてよいという物件だ。国土交通省も「借主負担DIY型」の賃貸借契約のガイドラインを提示するなど、その普及に努めている。
家族や友達とのつながりを大切にし、現実的な目標を立てる若者世代が、住宅市場の主役になっている。こうした世代には、リノベパーティは魅力的に映ることだろう。このムーブメントが既存の住宅の質を高めることにつながるとよいと思う。今後の広がりが楽しみだ。
その他の領域のトレンドキーワードは以下の通り。
○2015年のトレンドキーワード(その他7領域)
飲食:「部ランチ」(企業の歓送迎会・忘新年会などの開催時間が昼間に変わる)
出産・育児:「保けいこ」(フルタイム共働き世帯の「おけいこ」を可能にする新しいサービスの登場)
美容:「サバ美ーマン」(職場を生き抜くために美活を行うミドルエイジのサラリーマン)
社会人学習:「ママ喜業」 (自分のママ経験を次のママ世代に活かす、ママの開業の増加)
進学:「ロンキャリ女子」(結婚、出産後も働き続けたいロングキャリア志向の女子高生が増加)
独立・開業:「親子独立」(「家族との信頼をベースに、親子で協働する」独立が増加の兆し)
アルバイト・パート:「プチ勤務」(シニアと主婦が自分らしく働くことのできる超短時間勤務が増加傾向)
(出典:リクルートホールディングス「2015年のトレンドキーワード」)