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海のないアフリカ南部の「レソト王国」 日本に寿司ネタ「サーモン」を供給中

日本の回転すしで人気上位を誇る「サーモン」。もしかしたらそのネタは、海のないアフリカの内陸国から来たものかもしれません。米CNNのウェブサイトは11月21日、「African sushi(アフリカの寿司)」という見出しの記事を掲載しています。

記事で取り上げているのは、アフリカ南部にある「レソト王国」の山岳養魚場。ここで獲れたトラウト(ニジマス)が、日本の寿司職人に届けられているというのです。

世界各国の優れた技術を集結

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レソトは周囲を南アフリカ共和国に囲まれた、世界最南の内陸国。四国の1.6倍ほどの面積を持ち、高地に位置するため「天空の王国」とも呼ばれています。

漁業や養殖業とは無縁と思えるこの国で、近年トラウトの輸出業が注目を浴びています。その主な輸出先は、なんと遠く離れた日本だということです。

海に面していないレソトでは、養殖はダムで行われます。記事によれば、国家全土が標高1,500メートル以上の高地に位置するレソトのダムは、「トラウトにとって理想的な水温を年間を通して保ってくれる」のだそうです。

2012年に開始したこの養殖業は、初年度に500トンの漁獲量を記録し、今年度中にこの3倍生産をすることを目指しています。

養殖の協力機関に勤めるフォーマネク氏によると、日本へ到着するまでは船で4週間かかり輸送料は高くつきますが、輸送費用が高くついたとしても価格プレミアムがそれを埋め合わせるため、日本は依然として魅力的な出荷先なのだそうです。

養殖のノウハウは元より漁業すら縁遠かったレソトで、しかも高い山々に囲まれた高地で養殖を行うことは簡単なことではありません。実際にこの養殖業には、様々な国の進んだ技術や物資が使用されています。例えば、養殖に使われるサケの卵はデンマーク産、特別仕様の養殖籠はノルウェー製、たんぱく質を強化した餌はフランス産です。

雇用創出に貢献。増産計画も進む

これらの先進技術を駆使して生産されたトラウトは、地元レソトで消費されるのはたった5%。残りの10%が南アフリカ共和国に売られ、85%はアジア向けに出荷されます。

とはいえ、サーモンの生産が盛んなノルウェーやチリで年間100万トン以上を生産していることを考えると、レソトのトラウトの生産量は非常にわずかな量でしかありません。

しかし、国民の24%(2008年)が職についておらず、57%が貧困層(2010/11年)というレソトにとって、トラウトの養殖は大きな意味を持ちます。

ある養殖業者は「100名以上の人員を終身雇用しています。社員のほとんどがこの養殖業に就く以前に就職した経験がありませんでした」といいます。前述のフォーマネク氏は「目下の目標は年間750トンの増産。もう一つのダムでも養殖をしようと計画中です」と語っています。

CNNは「高地養殖のトラウトが、すぐさまスーパーマーケットに押し寄せることはないだろうが、レソトの天然資源と遠方の山岳地形を活かした生産は、一定の成功を収めそうだ」と記事を締めくくっています。

日本とレソトは遠く離れており、その距離を縮めることはできませんが、技術の進歩と更なる投資、そして両国の意気込みによっては、レソト産のトラウトが当たり前に日本の家庭の食卓に並ぶ日がそう遠くないかもしれません。

(参考)African sushi: Mountainous fish farm links Lesotho with Japanese chefs

あわせてよみたい:南米チリの「サーモン」「ワイン」「銅」争奪戦

 
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