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榎並 紀行(やじろべえ)
2015年3月6日 (金)

「2013年最も売れたマンション」 入居者4000人のコミュニティづくり

「2013年最も売れたマンション」 入居者4000人のコミュニティづくり(撮影:榎並紀行)
撮影:榎並紀行

昨年、東武野田線・新船橋駅前に街びらきしたニュータウン「ふなばし森のシティ」。その中核をなす大型分譲マンション「プラウド船橋」は、2007年から2013年までの5年間で”首都圏で最も多くの戸数が売れたマンション(※)”なのだとか。2012年7月から2013年8月末にかけて発売された1497の住戸は、そのすべてが即日完売。申し込み登録者数に対する購入倍率は平均で2倍という人気ぶりだったそう。

(※)2007年1月~2013年8月に首都圏で(東京・神奈川・千葉・埼玉)で供給された分譲マンションの中で、販売戸数が最多(MRC調べ)

なにゆえ、そこまで売れたのか? 立地や価格、大規模開発といった部分の優位性のみならず、「住民同士のコミュニティづくり・街づくりのサポート」という、近年ニーズが高まる”コミュニティ形成”に対する取り組みがアピールされていたことも、購入者の期待を高めた理由のひとつだったのではないかと思われます。

街びらきから早や1年…。新しく越してきた住民同士、コミュニティは育まれているのか? 現状を取材してみました。

住民間のコミュニティづくりを事業主がサポート

マンションができる前のこの一帯は、ガラス工場の広大な跡地。そこに新しい街が生まれ、約1500世帯・約4000人が移り住むことになりました。当然、周囲は見知らぬ人ばかり。そんななかで活発なコミュニティを形成するためには、ある程度の仕組みづくりが必要不可欠となります。
事業主である三菱商事・野村不動産は、住民間の交流を促す仕組みづくりを、計画時から行ってきたとのこと。

例えば、住民同士のサークル活動を促すべく、共用のクラブハウスにサポートスタッフが常駐。サークルの立ち上げ方から運用にまつわるアドバイス、共通の趣味をもつ住民同士をつなげるなど、人と人が知り合う手助けを行ってきました。

結果、今ではギターやダンス、ヨガ、麻雀、さらには吹き矢(!)まで、数十種類のサークルが発足。クラブハウスでは色々な活動が行われているとか。また、ママ友同士の集まりも盛んで、日々、子育てについての情報交換がされているそうです。

【画像1】(左)新入生交流会の様子 (右)ガーデナーグループによるプランターの植え替え(画像提供:野村不動産)

【画像1】(左)新入生交流会の様子 (右)ガーデナーグループによるプランターの植え替え(画像提供:野村不動産)

また、新しくできた森のシティを、よりよい街にするために、森のシティ内の住民と企業が参加する「森のシティ街づくり協議会」を設立したそうです。事業主は、その活動を3年間サポート。
住みよい街にするために、そして街で楽しいイベントを企画するために、住民と企業が話し合いの場を定期的に設けているとか。その議題は、緑化清掃活動や防災から、夏祭りやイベントの企画まで多岐にわたり、テーマごとにワーキンググループを立ち上げて活動しているそうです。

住民主体の防災訓練も実施

2014年9月にはプラウド船橋の住民が主体となり、「防災ワーキンググループ」が設立、大規模な防災訓練も企画されました。同マンションには、棟ごとに一街区~五街区に分かれているのですが、今回はその先陣を切って五街区200人の住民の方が参加。当日は筆者も見学させてもらいましたが、多くの住民が参加しました。

【画像2】地元の消防団の協力のもと、本格的なAED講習を実施(写真撮影:榎並紀行)

【画像2】地元の消防団の協力のもと、本格的なAED講習を実施(写真撮影:榎並紀行)

【画像3】そのほか消火器体験や(写真撮影:榎並紀行)

【画像3】そのほか消火器体験や(写真撮影:榎並紀行)

【画像4】起震車まで登場する本格的な防災イベントでした(写真撮影:榎並紀行)

【画像4】起震車まで登場する本格的な防災イベントでした(写真撮影:榎並紀行)

マンションの防災訓練というと意識の高い一部を除き、一部の理事が参加するといった状況も見受けられますが、避難ルートのポイントを確認しながら階ごとに避難するなど、実地に即した訓練だということもあり、多くの人が当事者意識をもって訓練に参加している様子でした。誘導も、同じマンションの住民が行うと、参加者の意識も高まるのかもしれません。

それにしても、これだけ大がかりな防災イベントを住民主体で仕掛けるってけっこう大変だったのではないでしょうか? 今回の防災訓練を担当した小林防災理事にお話をうかがってみましょう。

「以前住んでいたマンションでも防災の担当理事を7年間務めていたので、防災に関する知識はありました。でも、入居して初めての防災訓練で、実際の避難ルートにあわせた訓練ができたのは、当日の計画づくりや、訓練の案内といった面での野村不動産グループのサポートがあったからだと思っています。また、防災ワーキンググループの立ち上げをはじめ、運営もサポートしてくれたのが大きかったですね」

また、五街区に住む小林理事は、森のシティ街づくり協議会の会長も務めている。

「私はたまたま防災に関しての経験がありましたが、これだけの人数が住む街ですから私のほかにもさまざまな分野のスペシャリストがいます。そうした人たちがそれぞれの得意分野を持ち寄り、協力し合うことで、この森のシティはより快適な暮らしにつながっていくのではないかと思います。街づくり協議会設立から2年目をむかえ、緑化や、防災、イベントなどのワーキンググループの活動も進めています」

と、このように事業主による「森のシティ街づくり協議会」や、管理会社である野村不動産パートナーズによる「防災ワーキング」など、活動への支援があったからこそ、組織が立ち上がったのも事実。でも、その活動に賛同し、参加する住民が、しっかりとそのバトンを受け止めて組織が運営され始めているのも、事実でした。

コミュニティの土台ができるまでのサポート、そしてバトンは住民に

街づくり協議会ですが、事業主による運営への協議会のサポートは設立から3年間と決められており、以降は住民による自主運営をめざすとか。事業主としてはあらかじめサポートする期間を設けることで、住民のまちづくりへの参加を促し、持続的に発展するコミュニティへとつなげていきたい思惑もあるようです。

コミュニティの土台ができるまでは事業主がサポートし、二人三脚からスタートし、スピードがついてきたら、バトンを住民に託す。このような取り組みがうまく発展すれば、新しくできる街におけるコミュニティづくりのモデルケースになるかもしれません。

ともあれサポート期間は残り1年。その後の動向にも、引き続き注目していきたいと思います。

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