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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#17 言葉

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なので、「でも」や「しかし」「けれど」「ていうか」なども口にしただけで、その言葉の力の影響を受けることになる。自分はそう信じているので、「でも」を使うのはよそうと数年前に決めた。
使うまい、と決めたとはいえ、長年「でも」に親しんで来た口にとって、それ無しでの会話は、まるで外国語を習っているかのようだった。改めて「でも」に頼り切った会話をしていたことに驚いた。
私は、「でも」の代わりに「そうだね」とか相手のことを肯定する言葉をまず置くことにした。相手の言葉に反論異論があったとしても、まずは相手を肯定することから始めた。
これが実に心地良かった。
否定接頭語(造語です)に慣れた身には、「そうだね」と言うたびに、なんだか嘘をついているような、偽善的なような気がして、違和感があったが、間もなく慣れてしまうと、心地良いのだった。
「でも」と言う時に閉じる心も、「そうだね」と言えば、ゆったりと開く。そのことが心地良かった。
この効果は、会話の内容さえも、豊かにしてくれる。会話の内容が豊かになるということは、相手との人間関係も豊かになり、互いに利がある。
「でも」と言っている時は、会話に勝とうとしていた。相手の知識の上に、自分の知識を被せたりすることは、そういうことに他ならない。知識、語彙、交友関係、センス、などなど、相手よりも上回った状態で会話を終えることがどんなに貧しいことか。これはそもそも会話とは言えないのではないだろうか。
それが、肯定することから始まると、毒無しのユーモアも増えるし、心の表情も緩む。相手のことを交わす言葉以上に理解できるような気にもなれる。
以上、自分の例を挙げてみたが、それぞれの口癖を、じっくり観察したり、衣替えするように、言葉替えするのも楽しいと思う。どんな言葉を選ぶにしても、肯定的な言葉を選ぶのは大切だ。
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