縣神社の縣祭りへ行って来ました。もちろん、ひとりで。

2012年6月5日(火)


宇治の縣祭りへ行って来ました。もちろん、ひとりで。

「暗闇の中で、見知らぬ男女が乱交を繰り広げる、奇祭」 。
「日本の奇祭」 的な企画が雑誌やネットである度、こんなアオリで名が挙がるのが、
茶処・宇治にて新茶の季節に開かれる、縣 (あがた) 祭り、通称 「くらやみ祭り」 であります。
平等院の鎮守だった縣神社の例祭が、江戸中期の信徒圏拡大と共に膨大な客を集めるようになり、
宇治神社御旅所から行われる男根ライクな梵天渡御、祭神・木花開耶姫の安産&良縁の霊験、
そしてその両神が 「逢引」 してるかのように見えることなどもあって、祭は、何というか、無法地帯化。
無料開放された真夜中の周辺民家で、男女が文字通りの何でもありとなるこの至福の祝祭は、
「暗闇の奇祭」 「くらやみ祭り」 の名で愛され、明治維新以降も、さらには昭和以降も、継続しました。
しかし、戦後社会でそんな祭が許されるわけもなく、高度成長期あたりから乱交は、後景化。
現在では、近隣DQNこそ多く集結するものの、路上で見境無く交尾るということも特になく、
威勢の良い梵天渡御&大量の屋台がメインの、健康優良&地元密着路線の祭りとなってます。
が、縣祭りが 「奇祭」 の名に全く相応しくなくなったかといえば、案外そうでもありません。
21世紀に入り、それまで梵天渡御を担ってきた奉賛会側と、縣神社側が、決裂。
昔から両者の関係は 「神」 をめぐって裁判さえ発生するほどややこしいものだったようですが、
2003年に奉賛会が梵天を縣神社へ還す神事をすっ飛ばしたことで、対立が一気に悪化。
「神の拉致だ」 とブチ切れた縣神社側が、独自に梵天を製作&渡御を始めたため、
現在の縣祭りは、まるで 「本家」 と 「元祖」 のように、二つの梵天が存在することとなりました。
信仰が根強く息づくゆえの事態とも言えますが、根強過ぎるとも言える、ややこしき事態。
かつてとは別の意味で 「奇祭」 化しつつある、そんな縣祭りの今の姿を、
近隣ゆえ終電お構いなし、DQNまみれの中で見てきました。


18時、京阪宇治駅を出て、交通整理の始まってる宇治橋を渡り、
橋西詰の紫式部像が、群集からフェンスでがっちりガードされてるのを眺めるの図。
京阪宇治駅は、それなりの数のそれ風の客が降りたものの、祭で混雑してる感じは、特になし。
しかし、橋を渡ったこの像付近は既に、ものを食ったりおもちゃを振り回す子供、多数。


で、振り返って、新町通を眺めてみたの図。人間だらけです。
宇治橋西詰から縣神社までを結ぶ縣通、縣神社から宇治神社御旅所へ至る本町通、
そして御旅所から橋西詰までの新町通、この三本の通でできたトライアングルが、縣祭りの舞台。
いずれの通も、両端には屋台が並び、御覧の様に人間が隅々までひしめいてます。


焼き鳥などの匂いを嗅ぎながら、時計回り一方通行の道を歩くの図。
かろうじて歩けるためか、「今年はたいしたことないな」 などの声が聞かれました。恐ろしい。
屋台のラインナップはオーソドックスなものですが、茶屋による新茶の販売も当然ながら、あります。
グリーンティーの露店がたくさんあって、その辺が宇治らしいといえば宇治らしいでしょうか。


縣神社へ着くと、なにやら音曲舞踊の奉納の真っ最中。
奉納は、神事から子供のお遊戯テイストのものまで色々あり、21時頃まで延々と続きます。
あ、どうでもいいことですが、地べたへ座る人、多し。境内も多いですが、路上でも非常に、多し。
子供、大人、可愛い女の子までが地べたへ座り、タコ焼の皿を道に置き、パクつきまくり。


下の敷石をあぶる勢いで燃え上がる、神火。夕御饌の儀でしょうか。
本殿前には、たくさんの参拝する人が行列を作り、この火も沢山の人が熱心に見守ってます。
加えて、至る所で人々が座り込んで何ものかを食いまくり、何か知りませんが白い犬もウロウロ。
この時間帯の縣神社、奇祭感はないけどネイティブ祭テイストが濃厚で、実にいいです。


奉納のクライマックスは、音曲ケロケロ座 『音曲語り物 この花咲くや姫』
縣神社の祭神・この花咲くや姫と、その夫で彼女の早過ぎる懐妊に疑念を抱くニニギノミコト。
何となく 「くらやみ祭り」 的な状況が、 この花咲くや姫の火中出産で解決されるまでを、演じます。
いわゆる伝統芸能ではなく、劇団テイスト、全開。小さい神楽殿も、照明ガンガンでビッカビカ。


そうこうしてるうちに、時間は21時。また露店をうろつきます。
腹が減ったので、食い物屋もあれこれとチラ見。善法寺駐車場のおでん屋、美味そう。
喉も渇いたので、グリーンティーをはしご。写真は左から、辻利一丸宗大茶万。全部、100円。
辻利→大茶万→丸宗と、縣通を神社へ進むほど砂糖の量が減っていったのは、何故。


ウロウロと屋台のチラ見をしながら、祭の雰囲気もチラ見してるの図。
簡易トイレはどこもとんでもなく長蛇の列だったり、誰もが平気で道端へゴミを捨てたり、
巻き舌で舌戦を行うDQNカップルがいたり、金魚すくいの水を飲む子をしばき倒す母親がいたり。
激ネイティブ。実に正しい祭の姿と、実に正しい人たちの姿を、多く見たような気がします。


で、22時の宇治神社御旅所。奉賛会側巡行の、拠点です。
奉賛会側の梵天は、23時にここを出発。約1時間半ほど、独自ルートの巡行を行います。
露店は、まだ営業してるところもありますが、規制でもかかってるのか、ボチボチと帰り支度を開始。
それに連れ、家族連れなどの健全な客が減少、ディープな奴等の姿が目立つようになりました。


御旅所の本殿には神輿が安置され、その前には梵天が既にセッティング。
奉書を直径1.5mの球形に束ね、竹の先へ挟んだ、梵天。実に、何とも、チコであります。
奉賛会を構成するのは、近畿一円に拡がる講の人たち。神輿庫には、それら講の名前が、ズラリ。
「姫路もあるのか」 とか思ってると、その神輿庫から先触れの獅子神輿が登場、巡行開始です。


何かの会長などの挨拶、宇治警察婦警さんからの時間遵守のお願い、
やはり何かの会長の挨拶を経て、ジャスト23時、出発した梵天がいきなり暴れてるの図。
法被姿の若衆に担がれ、獅子神輿と共に御旅所の門を出てすぐ、御覧の通りの荒れっぷりです。
初手から転倒しそうなくらい揺らされ、回され、一番まともに撮れたものでも、この有様。


梵天と神輿は都計道路を巡行、至るところでコンボ (?) を行います。
前後左右に激しく揺らし、高速回転+逆回転で、1セット。これを獅子と梵天が順番にやる、と。
現地での呼び名でいうところの、「横ぶり」 「縦ぶり」 「さし上げ」 そして 「ぶんまわし」 でしょうか。
あ、ちなみに獅子は 「よいや、よいや」 、梵天は 「わっしょい」 と、掛声が違いました。何故。


終電がなくなりそうなJR宇治駅前も、梵天は巡行&ぶんまわしコンボ。
駅前では、DQNな若者たちが大量集結してますが、特に梵天を待ってるというわけでもなし。
ぶんまわしも 「何やってるのん」 とか言いながらチラ見する程度で、梵天へ寄り集まることもなし。
ただただ群れるのみ。そんな若者たちに、やはり大量の警察官たちが積極的に絡んでます。


宇治橋西詰へ到達した獅子&梵天は、交差点でダイナミックにぶんまわし。
全然見えんでしょうが、獅子の首には鈴が付いてて、これが鳴カンみたいなサウンドを放出。
一番の見せ場であり、この盛り上がりと共に縣通を通って縣神社へ向かうのが本来の流れですが、
神社側との決裂のためそれがNG、奉賛会側はこのまま、御旅所へ帰ります。うーむ。


とかいってる間に、神社側の梵天渡御の始まる24時が近づいたので、
宇治橋西詰での見物を中座、本来の巡行ルートである縣通を小走りで、縣神社へ向うの図。
数時間前まで屋台と群集でいっぱいだった縣通は、至る所にゴミが散乱してて、まるで戦場のよう。
写真では伝わり難いですが、単に量が多いのみならず、何かゴミのオーラが、濃いというか。


で、縣神社へ着いたら、あたりは真っ暗でした。
暗い道なので場所間違えたのかなと思ったら、梵天への遷霊中ゆえ、照明、完全オフ。
梵天が鳥居を出るまでは、撮影も厳重禁止。 「まだやぞ」 「撮るなよ」 という声が飛び交ってます。
「神事」 を大切にし、奉賛会側との分裂も辞さない、神社らしい処置とは言えるでしょう。


で、梵天が鳥居を出た途端、ビッカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカ、
バッシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ、
ビッカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカ、
バッシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ。


ビッカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカビカ、
バッシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャと、
異常なほどフラッシュが焚かれ、 「暗闇の奇祭」 どころか昼より明るい光の中での、ぶんまわし。
神社側の梵天、移動が少ないためか、しつこいくらい強烈に回され、振られます。


坂の下側へスライドして見物人の群れへ突っ込みかけたり、
担ぎ手が吹っ飛んだりしながら、梵天は約20分の激しい渡御を終え、帰って行きました。
そういえば、法被の色は違ってたけど、回し方は奉賛会側と同じ感じだったなとか思いながら、
やはり戦場化している本町通を歩き、その奉賛会側の巡行が続いている御旅所へ。


24時半、御旅所へ着くと、ちょうど獅子神輿が宮入りするとこだったの図。
客は大分減りましたが、最後の見せ場ゆえ、獅子も梵天も徹底的にぶんまわしを行います。
混雑が緩和したので近くへ寄って見ると、神輿のサイズは、結構小ぶり。そりゃ、荒れるわな、と。
縦ぶり&横ぶりでは、傾け過ぎて、時々本当に倒れたりすることも、しばしばです。


回転のハードさゆえ、コンデジで撮るとバター虎状態の、梵天ぶんまわし。
こちらは狂気のフラッシュ嵐はありませんが、電気が全て消されることも特にないようです。
神社側もそうでしたが、街灯も、信号も、しっかり点灯。やはり、安全第一というところでしょうか。
民家の灯は消えてますが、もう25時近い時間なので、普通に寝てるだけかも知れません。


ぶんまわしを終えた獅子神輿と梵天は、御旅所の中へ。
さすがに御旅所は、真っ暗。 どこからか 「これが本当の縣祭りや」 という声が聞こえます。
梵天が本殿の中へ入り、遷霊開始。もちろん撮影は、NG。本当に暗いので、何も見えないけど。
フラッシュ焚くカメラ爺には 「やめえっ!!何が起こっても知らんぞ!!!」 と、怒声一発。


遷霊が終わると、電気が点き、本殿奥の梵天には白い布がかぶせられました。
その下からは、奉書の白いビラビラがむしられ、せがむ一般女性客たちへ配られます。
どうにもこうにも、子種のメタファーにしか見えません。「奇祭」 の残り香を、微かに感じた瞬間です。
波乱が続く縣祭りですが、それとは関係ない所でこうしたスピリットは生き続けるんでしょう。


帰り際、こちらもしぶとく生き続ける、DQNスピリットを見かけるの図。
JR宇治駅前は、25時を過ぎても若者たちが大量にうろつき中。DQN率、もう100%。
加えて凄いのは、DQNへマンツーマンで接客してるのかと思えるくらいの、警官の物凄い配備量。
「おれ、何もしてへんやろっ」 と怒る、本当に何もしてない若者に、警官がとりついてました。

客層は、とことん地元モードです。
屋台、神社&御旅所、駅前で、テイストがかなり異なりますが、
冷やかし気味の観光客などは、どこでもほとんど見かけることがありません。
屋台+屋台営業中の神社は、子供が多し。梵天が出る頃の神社は、子供が消え、単独男が増加。
駅前は、概ね常時、異常なまでのDQN天国。そんな感じでしょうか。
カップルはいなくはないですが、ほぼ全てが地元系で、観光ハイや恋愛ハイの輩は、少なめ。
女性グループも同様で、DQN率は半々程度。男性グループや混成グループは、DQN率、やや高し。
といっても、絡んでくるような奴はおらず、しょうもない若年観光客より、よっぽどマシです。
単独は、好き者とカメ。単独女はほとんどいませんが、いてもやはり物好き風。
梵天渡御の頃は、カメラ爺&カメラ婆が、かなり出没します。

あ、あと、渡御後は何らかの交通手段を持ってないと、家へ帰れません。
私は八幡まで歩いて帰りましたが、普通なら車かバイク、あるいは自転車が必須でしょう。
路上駐輪は楽に出来そうでしたが、その分、楽にどっかへ持ってかれる可能性が否定できません。
ネカフェとかは、なさげ。開いてる店があっても、全部DQNで埋まってるんじゃないかと。
出かける方は、何となく出向いて帰れなくなる、なんてことがないよう、ご注意下さい。

え。ああ、乱交ですか。本当はやってるんじゃないかとか、そういうのですか。
隠してるんじゃないのか、みたいな。いつまでも夢が見れて楽しいですよね、そういう考え方。
でも、そういうのが好きなら、そういう所へ行った方が絶対早いと思いますが。

そんな縣神社の縣祭り。
好きな人と行けば、より 「暗闇の奇祭」 なんでしょう。
でも、ひとりで行っても、 「暗闇の奇祭」 です。

【客層】 (客層表記について)
カップル:1
女性グループ:1
男性グループ:1
混成グループ:1
子供:2
中高年夫婦:1
中高年女性グループ:若干
中高年団体 or グループ:3
単身女性:微量
単身男性:若干
警察:1

【ひとりに向いてる度】
★★★
色気のプレッシャーは、特にない。
しかし、DQNと子供のプレッシャー、そして人圧は、強烈。
加えて、とことん地元モードであるため、アウェー感も必至。
深夜の梵天渡御の頃になればなったで、
「奇祭」 のワードに魅かれた同族が案外多く、結構、興醒め。
個人的には、夕方の雰囲気が、割とおすすめ。

【条件】
平日火曜 18:00~25:00


縣祭り
毎年6月5日 開催

縣神社
京都府宇治市宇治蓮華72
参拝終日自由

京阪電車宇治線 宇治駅下車 徒歩約8分
JR奈良線 宇治駅下車 徒歩約10分

京都・宇治 縣神社 – 公式

宇治神社御旅所
京都府宇治市宇治壱番
参拝終日自由

JR奈良線 宇治駅下車 徒歩約5分
京阪電車宇治線 宇治駅下車 徒歩約15分